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願わくばすべてのブスを抱いて眠りたい   (創作 フィクション よしこ編)


    例えば、東でブスが悲しみに暮れていたら、俺はそっと寄り添い、ブスを抱いて眠りたい

    例えば、西でブスが自分の境遇に怒り心頭になっていたら、俺はそっと寄り添い、ブスを抱いて眠りたい

    例えば、南でブスが喜びにあふれていたら、俺は喜びを分かち合い、祝福し、ブスを抱いて眠りたい

    例えば、北でブスが無表情だったら、俺も一緒に無の境地になり、ブスを抱いて眠りたい

    俺の名前は 山田一郎


    人呼んで ブスコマシ だ


    えっ? ブスの定義を知りたいって?

    OK、いい質問だ

    ブスとは…

    自分で自分をブスだと思っている人間だ


    哲学ではない


    自分で自分を美人である とか 美人ではないけどブスではない とか思える人間はいずれそのポジティブなメンタルにより、恋愛、仕事、その他の人生において前向きな結果がでることが多い


    しかし

    自分をブスである

    と考えてしまう人間は、そのネガティブな思考により、恋愛、仕事、その他の人生において後ろ向きな結果がでることが多い


    だから、俺は、そんなブスを抱きたい

    ブスを救いたい  

    ブスと眠りたい

    ブスに撃たれて眠りたいぜ、OH  YEAH

    顔の作りなど関係ない

    自分で自分を認めてあげられない、そんなブス達を今日も俺は抱く


    俺に抱かれて心が晴れたブス達はもうブスじゃない

    俺は女性が好きだが

    男でもどうしても自分に自信が持てない、自分はブスだと自信を失っている人間がいたら、しょうがない、壁に手をついて歯を食いしばれ

    うしろからでよければ俺が抱いてやる


    さて今日、俺が抱くブスは

    よしこ(32才♀)だ


    よしこは30才まで、男性とデートすらしたことがなかった

    中学高校大学、一貫教育の女子校で育ったよしこは、そのおとなしい性格も相まって大学を卒業するまでほとんど男性と話をしたことがなかった

    しかし、女子校の友達も同じ境遇であり、よしこ自身も女子校とはそんなものだと思っていた

    よしこが異変を感じはじめたのは大学を卒業し、就職をしてからだった

    真面目だったよしこは、一部上場の化粧品メーカーに総合職として就職した

    同期入社の女性社員には、美容部員と呼ばれる百貨店やショッピングモールで販売を担当する一般職の社員がいた

    美容部員達は実際にメーカーの化粧品をつけ現場に立つ

    いわば生きる広告塔のような存在だ

    同じ女性のよしこでもうっとりしてしまう美貌を持つ人が多かった

    当然、男性社員達は総合職の女性より、美容部員の女性をちやほやする

    よしこもそれは当たり前の事だと受け入れていたので嫉妬の対象にはならなかった

    美容部員達は、一人、また一人と男性社員と結婚し寿退社していくのだった

    よしこが異変を感じはじめたのは20代後半だった

    同期入社の美容部員達はほとんど結婚して退職していったが、気がつくとよしこと同じ総合職の女性達も彼氏ができたり、ちらほら結婚しはじめたのだ

    よしこは処女のままなのに、だ


    真面目なよしこは一心不乱に仕事をしていたので20代後半までその事に気がつかなかった

    よしこはあせりはじめる

    あれっ? もしかして、私、ブスなのかな?

    そんな疑念が膨らんでいた30才の春、よしこは突然町で声をかけられる

    [おねーさん、そこの可愛いいおねーさん]

    よしこは当然自分の事だと思わず通りすぎようとする

    [ねえってば、そこの可愛いおねーさん]

    振り向くとこの世の物とは思えない美しい顔をした男性がよしこを見つめていた

    [あっ、やっとおねーさんの瞳に俺が写った]

    よしこは一瞬で心を奪われた

    男の名前は 翔 


    ここからは、大体読んでくれている皆さんの予想通りの展開になるので中だるみしそうな部分を箇条書きにする

    ○翔はホスト

    ○ホストにお金を貢ぐよしこ

    ○お金がなくなる頃に捨てられるよしこ

    ○お前みたいなブス、金がなければ誰が抱くかよと翔に罵倒されるよしこ

    ○絶望し、命を絶とうとするよしこ


    〜箇条書き終了〜


    ビルから飛び降りようとするよしこに俺は声をかけた

    [おい、おい、最初で最後に抱かれた男があんな最低野郎で死んじまってもいいのかい?]


    [誰、あなた?もう私はどうなってもいいからほっといてよ]


    [俺の名は山田一郎、人呼んでブスコマシ、ブスをコマシて生きてる男さ 今日は君をコマシにきた]


    [誰がブスよ! あなた、はじめてあった人に失礼すぎじゃないの?]


    [良かったじゃないか、見ず知らずの他人にバカにされて怒りが湧いてきたのは絶望を抜け始めた証拠さ]


    [ああ、そうか…そうかも知れないわね…ありがとう、ブスコマシ…]


    [さっき、もうどうなってもいいって言ってたよな?どうなってもいいなら、騙されたと思って俺と一晩、ともにしてみないか?]


    〜翌朝〜


    ブスコマシ
    [おはよう、昨日はとっても素敵だったぜ]


    よしこ
    [ねえ、また逢える?]

    ブスコマシ
    [もう、よしこは大丈夫さ、昨日あんなに素敵だったから]

    よしこ
    [そう…行ってしまうのね…]

    ブスコマシ
    [よしこの心がまたブスになったとき、そのときはまたこのブスコマシが現れるよ だけどな、よしこ、よしこにはもうブスコマシは必要ない そう俺は願っている]

    よしこ
    [そうね、この世はまだまだ心がブスな人であふれてるものね、あなたはあなたを必要としている人のもとに旅立たないとね]

    ブスコマシ
    [幸せにな…]


    よしこがブスコマシとの別れを直視できずによそ見をしている間にブスコマシは去っていった

    よしこはしばらくブスコマシを想いつづけるだろう

    しかし、よしこがブスコマシへの想いを忘れて次の一歩を踏み出したとき、よしこの人生は本当の意味ではじまるのだ


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