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Photo byalinco_life

夏の夜、不吉な予言

     パスタ屋の店長を辞めて、川崎から大阪の吹田へ引っ越した。
     吹田は大学時代の古巣である。懐かしい街に住むので、誰と誰に連絡を取って云々と考えて、ワクワクしながら引っ越した。ところが実際戻ってみると、存外みんな会う機会がない。呼べば都合を付けて出て来る者もあるけれど、それもあんまり頻繁だと敬遠される。少し残念ではあったが、いつまでも学生ではないのだからしようがないと、ここに至ってようやく得心した。
     それでもせっかく戻ったので、昔の仲間とバンドをまた始めた。その都合で、月に一二回はスタジオに集まって、練習の後は近くの店へ行って飲んだ。

     ある時、どういう弾みでそうなったかもう判然しないけれど、随分遅くまで飲んだことがある。
     もう終電も出てしまい、みんな帰るに帰れない。
     学校の近くだったから、店を出た後で学内に入って缶ビールを飲んだりしていたが、夏のことだから暑くていけない。のみならず、蚊も集たかってくる。
     どこかへ移動しようということになり、西本が「じゃぁ、研究室に行こう」と言い出した。西本は卒業後も大学で研究を続けていたのである。そんな所へ部外者が入っていいのかとは思ったが、良くなくたって怒られるのは西本だ。その西本がいいと云うのだから、深く考えたって仕方がない。
     一度外へ出て、近くのコンビニでカップ麺を買い、西本の研究室でみんなで食べた。
     当時自分は、カップ麺はいつも二つ食べないと気が済まなかったので、この時も二つ買った。すると坂口が「百さん、二つも食べるの?」と呆れた声をした。
    「食うさ」
    「太りますよ?」
    「そうかな」
    「きっと太ります」
     そう言われたってピンと来ない。太るのは太る体質の人だけであって、自分は違う。百裕が太るなんてことがあるはすがない。そんな不都合なことがあっては、何かと困る。
     坂口のやつ、随分おかしなことを云うものだと感心しながら、自分はいつものようにカップ麺を二つ食べた。どん兵衛とUFOだったように思うけれど、違ったかも知れない。

     それから三ヶ月ほどで今度は名古屋へ引っ越した。
     名古屋でもそんな食生活を続けていたら知らない間に太った。それで自分は、これは都合が悪いと思った。

     
     
    随筆家。日常をそれっぽく書いたり、気持ち悪い話を書いたりする。 著書∶『牛おばさん・他49篇』 パスタ屋店長、人材派遣屋、メーカーのEC担当など種々の職業に就く傍ら、2003年よりウェブ上で執筆活動中。

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