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Photo by2mg5jm

新しい武器

     仕事帰りに職場の人たちと飲みに行ったら、どこの飲み屋も満席だった。見ると何だかそこかしこで若者たちが騒いでいる。
    「ははぁ、どうやら卒業式の打ち上げですね」と甘木さんが言うのを聞いて、なるほどそんな時期かと腑に落ちた。
     そうして卒業という言葉から、こんなことをふっと思い出した。

     小学校六年生の終わり頃、中学校の制服一式と鞄が届いて、これでとうとう自分も中学生になるのだなと思った。
     その時に詰襟の学生服が何だか嫌な気がしたのと、学生鞄が野暮ったく感じられたのを、今でもはっきり覚えている。
     制服の内に学生帽があった。黒い帽子で、硬い目庇がついている。それが随分硬いものだから、これを縦にして打ち付けられたら痛いだろう。
     当時自分は同じクラスの関や土屋とよく殴り合い掴み合いのけんかをしており、二人とも同じ中学へ上がるから、向後もきっとけんかはするのに違いない。その際に、好い武器になるだろうと考えた。それで試しに自分の頭をコツンとやると、果たして痛い。
     もっとも、痛いには痛いが、目庇はあんまり大きくない。使った相手へ痛手を与えるには、恐らく真ん中のカーブを描いた部分を当てる要があるけれど、ピンポイントで都合よく当てるとなると存外難しそうに思われた。

     そこへ妹がやって来て何だか生意気なことを云ったので、ちょうどいいと機会とばかり、縦目庇を打ち付けてやった。最初から当てるつもりで構えていたのと、相手がまさかそんなもので攻撃されると予想しなかったのとで、上手い具合にヒットした。それで妹が泣いて、自分は母に怒られた。



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    随筆家。日常をそれっぽく書いたり、気持ち悪い話を書いたりする。 著書∶『牛おばさん・他49篇』 パスタ屋店長、人材派遣屋、メーカーのEC担当など種々の職業に就く傍ら、2003年よりウェブ上で執筆活動中。

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