
マッチョ華道【毎週ショートショートnote】
「華道部に入ろうと思う」
大森光二(おおもり・こうじ)がそう言ったので、石原規広(いしはら・のりひろ)は持っていたパンを置いた。
「お前、花に興味あったっけ?」
「ない」
「じゃあ、なんで」
「筋トレになるらしい」
規広は黙った。
華道と筋トレが結びつくまでには、少なくとも二、三本の橋が必要な気がした。
「華道部の先輩が言ってたんだよ。『華道は全身を使う』って」
「たぶん、そういう意味じゃない」
「あと、『花と向き合うには体幹が大事』って」
「それもたぶん違う」
しかし光二は、その日の放課後、本当に華道部へ行った。
一週間後。
規広が華道室を覗くと、光二はタンクトップ姿で花を生けていた。
腕には見たことのない筋肉が浮かんでいる。
「……何があった?」
「華道ってすげえぞ」
光二は額の汗を拭った。
「花を一本挿すだけでも、めちゃくちゃ集中力がいる」
「筋肉は?」
「筋トレもしてる」
「華道関係ないじゃん」
そのとき、顧問の先生が光二の作品を見て言った。
「大森くん。ずいぶん力強い作品になったわね」
「ありがとうございます!」
花器から一本のヒマワリが、天井へ向かって真っすぐ伸びていた。
光二は満足そうに、自分の上腕二頭筋を見た。
「先生。俺も、だいぶ仕上がってきました」
先生は花を見た。
規広は光二を見た。
どちらが作品なのか、もう誰にも分からない。、
田原にかさんの「毎週ショートショートnote」に、今週も参加しました!
にかさん、いつもありがとうございます。
他の方の作品を見られるのが楽しみです!
先週はこんなのを書きました…
ちなみに【毎週ショートショートnote】には、毎回同じ人物を登場させています。
その辺りもお楽しみいただければ!