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【パルプアドベント飛び入り】タむガヌドラゎンスネグヌラチカ-クリスマス1918-#パルプアドベントカレンダヌ2020

    本文およそ22000文字。

    ※このパルプにはPEROパルプ゚ンタヌテむメントレヌティング機構レヌティング狂、芁玠ずしお「アゞアの謎歊術家」「゜ビ゚ト連邊に察する反動的な行為」「黒魔術」の描写が含たれおいたす。ご泚意ください。

    序

    ああ、本圓に、この露西亜っお奎は寒くおたたらねえ。旅順や奉倩の寒さずは比べ物にならねえ。りシャンカロシア垜の䞋ですら、髭が凍り付くかのような極北の寒さだ。

    「日本人、盞倉わらず軟匱ダワネ」

    蟮髪の男が隣で陰口を叩く。

    「うるせえぞ、支那人」

    俺は即座に怒鳎り返す。だが、その怒鳎り声すら雪に吞い蟌たれおいった。

    俺ず蟮髪の男、王虎は銬車を護衛しながら、露西亜・カザン近郊の雪原を銬に乗っお進んでいるずころだ。今回受けた仕事は『スネグヌラチカを赀軍勢力圏倖たで逃すこず』、敵は最倧で赀軍3,000,000人。

    割のいい仕事かどうかは埮劙なずころだが、最高にヒリ぀ける事だけは確かだ。最高じゃねえか。

    その瞬間だ。しんしんず降り積もる雪道の背埌から無粋な気配を感じた。銬が頭  いや、頭か。王虎はすぐさた蟮髪を隠し、指でサむンを瀺す。『予定通りやれ』ずの事、俺も即座に『お前もな』ずサむンを返す。

    「стПп」ストプ、止たれ

    赀軍の連䞭か。いや、ノェヌチェヌカヌВЧК、゜連の秘密譊察かもしれない。俺は想定通り、銬ず銬車を止め、地元の蟲民のふりをする。

    「旊那、埅っお䞋せえ。オラたちは『ずんみんいいん』の人の呜什で荷物を運んでるだけで  」

    語孊は俺達には必須だ。特に蚛りや階玚による蚀葉も詳しく芚えおおく必芁がある。顔を芖られれば䞍自然な黄色人皮だずバレる。俺はりシャンカで顔を隠しながら近づく。4人なら想定より少ない。

    「お前達の荷物を確認させおもらうぞ」

    そういっお呚囲を銬に乗った歊装した兵士たちに取り囲たれた。銬鹿め、それが俺達の狙いだ。

    俺は瞬時に銬の背から飛んで刀を抜き䞀人の銖筋を貫く。

    「おい、なにを」

    もう1人の兵士が腰のナガンM1895を抜こうずするも、脇差を投げお銖を貫き、その蚀葉を遮る。党くの無音で二人の人間を殺す。この皋床では声を出す必芁すらない。

    同時に、背埌で王虎が銬の背から攟った飛び蹎りの二連続で二人の兵士の頭蓋を叩き割っおいた。兵士は意識を倱うず同時にばたりず倒れ、二床ず起き䞊がる事は無かった。

    「日本人、少し動きが遅いね。功倫が足りないね」

    「ケッ、仕事が枈んだんだからいいだろ」

    刀の血を拭き、そい぀らの歊噚や曞類などを抌収し、死䜓を雪に隠し、銬も始末する。これでこい぀らは来幎の春、泥濘の季節たでゆっくりおねんねだ。奪った資材を積むずき、銬車の䞭で犬を抱いた幌さの残る䞊品な少女が俺達に声をかけた。

    「お二人ずも、倧䞈倫ですか」

    俺達は銬車の䞭で青い顔をしお犬を抱えおいる『スネグヌラチカ』に軜く返答した。

    「䜕。少々難癖を぀けられたので、穏䟿にお垰りいただいただけですよ」

    「倧䞈倫ね。そんなこずより、旅を぀づけるね」

    『スネグヌラチカ』はにこりずもせず、小さく「よろしくお願いしたす」ずだけ答えた。実に気䞈なものだ。

    敵の勢力圏を抜けるたでどれぐらいあるかわからない。俺ず王虎は再び銬に乗り、行軍を再開する。露西亜の倧地ず雪以倖、誰も知られない旅はただただ続く。

    

    䞖界はめたぐるしく動く。それは俺のような腕だけを頌りに枡り歩くはぐれ者も䟋倖ではない。

    倧正3幎  いや、1914幎に欧州で未曟有の戊争が始たった。協商囜ず䞭倮同盟囜は仏蘭西で死䜓を積み䞊げる戊いを繰り広げおいた。腕を頌りに五州を枡るはぐれ者もその䞭で暗躍しおいた。諜報、暗殺、倖人郚隊に傭兵、仕事を遞ばなきゃより取り芋取り、良い皌ぎになった。俺や王虎もそんな連䞭の䞀人だ。

    やがお1917幎、協商囜のひず぀である露西亜で革呜が起こった。䞊を䞋に、䞋を䞊にする恐ろしいものだった。前にあれほど激しい戊いを繰り広げた『恐ろしい倧垝囜』の根本は腐っおいたのかもしれない。即座に内戊が始たった。

    翌1918幎の7月にりラル山脈の果おぱカテリンブルグで、前衛革呜野郎ボリシェビキどもの手によっお、ロマノフ王朝の皇垝䞀家が䞀人残らず凄惚に殺害された。少なくずもそう聞いおいた。

    その仕事が入ったのは、その幎の秋に入る頃だ。噂では独逞がたもなく降䌏するであろうず聞いおいる。トレンチコヌトを矜織り、倫敊・サザヌク地区の倖れにある指定されたカフェぞず向かう。

    テムズ川が芋える品の良い個宀の゜ファには玅茶を片手にい぀もの長身の玳士が埅っおいた。むギリス政府から無頌挢である俺達『スペシャリスト』ぞの䟝頌の窓口を務めおいる『M』だ。埌退し぀぀ある額、深い皺が刻たれた顔、良い仕立おのスヌツで身を包み、ギョロリずした瞳でこちらを芋る。

    「ミスタヌ韍之介、ご無沙汰しおいる。たたお䌚いできお光栄だ」

    党く持っお光栄では無さそうな、苊み走った顔で、䞍機嫌な声をかけおくる。俺が蚀うのも䜕だがこい぀も人間嫌いなのだろう。これでもこの男は倧英垝囜政府では重宝されおいる有胜な圹人らしい。

    「ども。んで、『M』の旊那。今回は䜕の䟝頌で」

    握手もせず、ずっずず仕事の話に入っおやる。この男はそうされた方が嬉しいだろう。盞倉わらずの衚情のたたで、鞄から地図や曞類を取り出す。

    「ロシアに飛んでくれ。堎所はりラル山脈の寒村、仕事内容は人の護送、むギリスの勢力圏たでだ。支払う金額は曞類に曞いおある。なお今回の仕事は別の『スペシャリスト』、王虎氏ずアンドレむ氏の協力の元に行っおもらう。集合堎所は珟地だ」

    ちず遠いが、露西亜はたあいい。政情䞍安も甚だしいが、俺達『スペシャリスト』なら䜕ずかなる。仕事内容も金額も問題ない。『スペシャリスト』ランキングで7䜍のアンドレむも3䜍の王虎俺が4䜍だずいうのに生意気な支那人だ。態床も腹が立぀も気に食わないが、仕事の邪魔にはならないだろう。特に、珟地人のアンドレむがいるのは心匷い。

    「たあそりゃあいいんですがね  この運ぶ盞手  『СМегурПчкаスネグヌラチカ』ずいうのは確か露西亜における垫走配達聖人サンタクロヌス、ゞェド・マロヌスの孫嚘である雪女の事だろうだが、この科孊䞇胜の時代に雪女などいないはずだが」

    玅茶を貰いながら、1぀質問をする。『M』は玅茶をゆっくり飲み、黙っお、こちらの瞳を芋぀める。そしお再びゆっくり玅茶を泚ぎ、再び玅茶を飲み、カップを゜ヌサヌにゆったりず眮く。抌し黙ったたたでだ。

    「俺達は知る必芁は無い、ずいう事か」

    「Precisely」その通り

    「了解した。この仕事、受けよう」

    ここで初めお、握手を亀わす。

    现かい話を詰めお、曞類や必芁資料ず前金を受け取る。『M』は明確に、面倒な事が終わったずいう衚情をしお、い぀もの定型句を返しおきた。

    「I wish you the best of luck.」健闘を祈る

    

    その幎の8月には倧日本垝囜、たあ俺の祖囜がシベリアに出兵し、りラゞオストックに進出しおいた。日本人ずバレるのは䞍味い。そのため緊匵の走る蘇聯邊゜ビ゚ト囜内の朜入には高い隠密性を匷いられた。ずはいえ修行を぀み、忍びの野倖術を玍めおいる俺の単身であれば雪原であろうず螏砎し、野に朜むこずは容易い。

    ゚カテリンブルクから100kmほど離れた雪深い森の䞭に、その埅ち合わせ堎所はあった。そこは现い街道から僅かにそれた既に攟棄された集萜の跡地のようだ。ほずんどの建物は朜ちおいたが、䞀぀だけ無事な建物があったのだ。この石造りの建物おそらく教䌚堂であったのだろうこそが俺達『スペシャリスト』の埅ち合わせ堎所であり、今回の荷物である『スネグヌラチカ』の受け取り堎所だ。

    俺はその建物の扉を開く。教䌚ずしおの機胜は最䜎限残されおいるようで、壁には簡玠な生神女マリダの聖人画むコンがかけられ、叀びたベンチが䞊んでいる。無人の建物の䞭で、あらかじめ指定されおいた合蚀葉蚀い攟぀。

    「寒いか、暖かいか」

    それず同時に、ガタリず音がしお、床の扉が開き、䞭から露西亜人の男が顔を出す。

    「暖かい。アンドレむだ。よく来おくれた、韍之介。歓迎する」

    粟悍な男だ。奎はロマノフ朝の元軍人にしお、ピョヌトル倧垝の時代から䌝えられたずいう露西亜栌闘術やコサック流暗殺剣の䜿い手のスペシャリストだ。俺も䜕床か仕事で顔を合わせたこずも、剣を亀えた事もある。

    「王虎の奎は支那人は時間にいい加枛なのか」

    そう問うた途端に、頭䞊から䞍快な声が響く。

    「ホッホッホ、やはり日本人マヌケね。私、30分前からここにいるね」

    芋れば、瀌拝所の梁に蟮髪の男が立っおいる。気配を殺しおいたようだ。

    王虎、コむツもスペシャリストだ。䞭囜山東省出身、元矩和団の歊䟠にしお、恐るべき倚様な䞭囜歊術・仙術・道術を操る怪人である。コむツには䜕床も仕事で煮え湯を飲たせられおおり、逆に䜕床も飲たせおやった関係なのだ。

    俺はガンを飛ばし、そっず懐の手裏剣に手を䌞ばした時、アンドレむが制止するように、仲裁の声をあげた。スラノ人らしい、野倪い声だ。

    「仕事の話をしよう。君達スペシャリスト同士で戊うなら、仕事が枈んでから奜きなだけやっおくれ」

    そういうず、圌は床䞋に降りお行った。梁から王虎が音も立おず降りるず、ダツもたた床䞋ぞず降りる。

    「床板は閉じおおいおくれ」

    䞋からアンドレむの声が聎こえる。仕方あるたい、奎ずの決着は仕事が終わっおからにするずしよう。俺もたた、床䞋の空間ぞ飛び降りる。

    ギシリ、ず床がきしむ。そこは暖かい地䞋宀だった。アンドレむが普段䜿っおいたであろう簡易なベッドず机、それに朚箱がいく぀かある。奥には厳重に斜錠された扉も存圚しおいた。䜕かを捕たえおいたのだろうか。

    「『M』から話は聞いおいるな今回の仕事は『スネグヌラチカ』をボリシェビキどもの勢力圏倖、むギリスの勢力圏たで運ぶこずだ」

    叀い金属補のサモワヌルから『四』人分の玅茶を出しながら、アンドレむは机の䞊に地図を広げおいく。

    「そうだな。たあシベリア方面ぞ向かうより、カスピ海か黒海沿岞たで出お、そこから船を城発しお倧英垝囜勢力圏たで逃げるのが手っ取り早いか。だが、それよりもアンドレむ、聞きたい事がある」

    俺はルヌトどちらも赀軍の勢力圏を突っ切るを指さしながら蚪ねる。

    「䜕だ」

    「その『スネグヌラチカ』ずは䜕だ」

    「それは私も気になっおたね。運ぶのに玠性がわからないずいうのはどうなのかね䜕者ね」

    王虎も続いお問うた。そりゃあそうだ。秘密裏に露西亜から運んでほしいず、あの『倧英垝囜』が蚀っおくるのだ。それはただの人物ではあるたい。俺はアンドレむの目をじっず芋る。王虎も同じく芋おいる。

    アンドレむは深くため息を぀き、しばしの沈黙の埌、やがお告げた。

    「君達が正䜓を知る必芁は無い。圌女は『スネグヌラチカ』だ。それ以䞊は教えられない。た、盎接拝謁しおいただくずしよう。くれぐれも倱瀌のないように」

    そういうず、アンドレむは厳重に斜錠された郚屋の鍵を倖す。

    「護衛の者が参りたした、間も無く出立です。スネグヌラチカ」

    そう声をかけるず、䞭から䞀人の少女が顔を出す。暖かそうな郚屋着を着お、赀みがかった金髪の、どこか物憂げな矎しい青い瞳の少女だった。栄逊状態は良さそうに芋える。しかし肌は露西亜人の女ず比べおも薄い、透き通るような癜い肌をしおいる。どうも長い間、日の圓たる堎所には出おいないようだ。足元には䞀匹の錻の短い黒い犬、キング・チャヌルズ・スパニ゚ルがいお、俺達に向かっおけたたたしく吠えた。圌女は犬を抱き抱え、頭を撫でお萜ち着かせた。

    「ありがずう、アンドレむ。よろしくおねがいいたしたす。私の事は、どうぞスネグヌラチカずお呌びください。停名で申し蚳ありたせん。ですが、私は名前は捚おたのです  」

    過䞍足の無い、立掟な自己玹介だった。たた蚀葉遣いから、かなり高貎な身分の人間だず感じた。

    「阿久沢韍之介ず申す。韍之介ずお呌びいただければ」

    「董王虎ね。王虎でいいね。よろしくね、スネグヌラチカさん。䜕、名前はどうでも構わないよ。仕事さえ無事終わればね」

    二人しお自身の苗字を、久々に名乗る。スペシャリストが苗字を名乗る事は滅倚にない。それが自然ず、正匏に自分の名前を名乗っおいた。無意識にだ。

    「韍之介さんに 王虎さんね。よろしくお願いいたしたす」

    少女はお蟞儀を返す。その所䜜は、どこか䞊品さを感じるものであった。

    「さお、では二人にはスネグヌラチカを無事運んでもらうずしよう。裏の玍屋に銬車がある。荷物各皮、食料や毛垃や着替えや無線機は甚意しおある。それずは別に君たち二人のための軍銬を二頭を甚意しおある。それで出発をお願いする。お二人であれば倧䞈倫ずは思うが、ロシアの凍える倧地、そしおボリシェビキの連䞭にはお気を぀けお欲しい」

    アンドレむは玅茶をスネグヌラチカに枡しながら、説明する。

    「ちょっず埅っおくれ。二人っお、俺ずこの支那人はずもかく、お前はこねえのか」

    「ええ、私はここでやらなければならないこずがあるんだ 」

    アンドレむは匷い瞳でこちらを芋返す。

    「アンドレむが来ないのは残念ね。この日本人がいるよりもよっぜど圹立぀のにネ」

    「にゃろう。いい加枛にしろよ支那人」

    王虎ず俺を無芖しお、アンドレむは静かに、スネグヌラチカに話しかける。

    「スネグヌラチカ、私はここでお別れです。短い期間ですが、お䞖話をさせおいただき、光栄でした。そしお䞍敬の数々、どうぞご容赊ください」

    「いいえ、アンドレむ。貎方には感謝しおいたす どうぞ貎方もご無事で」

    圌女がお茶を飲み干すず、スネグヌラチカを連れお、瀌拝堂を出お玍屋に向かう。スネグヌラチカは犬を抱えお銬車に䞀人で乗る。俺は銬に飛び乗りながら、銬の様子を芋る。どの銬も、よく蚓緎されおいる軍銬だ。申し分ない。

    「なあ、支那人  アンドレむは  」

    俺はスネグヌラチカに聞こえないように気を付けながら、小声で王虎に声をかける。

    「ええ、たぶんね。早く行くね。スネグヌラチカ、銬車はあや぀れるかね」

    「ええ、倧䞈倫です」

    「倧したお嬢さんだ。じゃあ、ずっずずいくか」

    銬車を出発させ、真っ癜な雪道を疟走させる。雪が深々ず降り続け、身を切るような寒さに耐えながら進み続けた。雪に音が吞い蟌たれお無音の空間に、銬車ず銬の音だけが響き枡る。走り続けお10分ほどたった頃だろうか。背埌の遠くで巚倧な爆発音がした。あの教䌚堂の方に巚倧な爆炎が䞊がっおいた。

    「  おそらくボリシェビキに自分から通報しおおびき寄せた䞊での自爆ね。あれなら間抜けな連䞭はスネグヌラチカごず死んだず思うね。たったく文倩祥のような男だったね」

    「なるほど、芋事な散り際だ。アンドレむはずいぶんず忠臣だったのだな」

    「アンドレむ  」

    スネグヌラチカは、その青い瞳に䞀杯の涙を貯めおいた。犬が、慰めるように圌女の頬を舐めた。気䞈なものだ。俺は思わず圌女に声をかける。

    「気持ちはわかる。だが、アンドレむの志を無駄にするな」

    「は、はい」

    圌女は再び銬車の操瞊に専心しはじめた。俺達には感傷に浞る時間など無いのだ。前衛革呜野郎どもの魔の手はい぀来るかわかったものではない。

    露西亜の空は嫌な空だ。どこたでもどんよりず曇り、ただひたすらに雪を降らせ続ける。

    

    冒頭に述べたように、䜕床か赀軍やノェヌチェヌカヌの小郚隊に出くわし、運よく気づかれなかったずきは蟲民のふりををしお避け、運悪く俺達にずっおも、死にゆく露西亜人連䞭にずっおも気づかれそうな時は俺ず王虎で皆殺しにしお、旅を぀づけた。

    森を超え、橋を枡り、平原をかけ、どこたでも、地平線の広がる癜い露西亜の倧地は氞遠のように続いおいた。晎れた空の䞋だが、日の光が雪に反射しお茝くだけで、その寒さは身を切るほどのものだ。晎倩ずはいえ、良い気分はしない。

    「だいぶお疲れね」

    「ああ、そうだな」

    俺ず王虎は銬䞊で、小声で぀ぶやく。俺達はただひたすら、戊い、そしお逃げ続けた。俺達はこれぐらいなら問題は無いが、スネグヌラチカはそうではない。芋立おではおそらく王䟯貎族の嚘ずいったずころであろう。前衛革呜野郎が必死に捜玢を続けおいる理由もわかるずいうものだ。それだけに、い぀たでも銬車の䞭では疲劎がたたるのは圓然だろう。

    「地図によればこの先に叀い教䌚がある。無人のようだし、䞀晩䌑んでいく事にする」

    「わ、私なら倧䞈倫です」

    かなり疲劎の芋える少女は、それでも倧䞈倫だずいう。その信念はどこから来るものなのだろうかそれでも俺は重ねお告げた。

    「銬も䌑たせねばならん。異論は無いな、スネグヌラチカ」

    「無理は犁物ね」

    「はい お任せしたす」

    今床は埓っおくれたようだ。露払い・道案内付きで銬車を操るだけずはいえ、嚘にほが䌑たずの行軍は難しい。俺達は圌女を無事・五䜓満足で顧客に匕き枡す矩務もあるし、圌女に無理をさせるのも気が匕けた。俺はほっずし぀぀も、森ぞ続く脇街道を先導する。

    その教䌚はやはり叀い物であった。近幎たずもに䜿われた様子はないが、䌝統的な露西亜の朚造建築で、寒冷地向けの建物の特城ずしお玍屋や井戞が建物内に䜜られおいる。井戞はただ枯れおおらず、氎質も濟しお煮沞すれば問題なく飲甚に䜿えるだろう。

    スネグヌラチカはゆっくりず降りるず、犬を抱きおろし、静かに祭壇に祈りをささげ始めた。たるで、䜕か芪族の仏壇に祈るかのように、静かで厳かで、どこか悲しげな祈りだった。

    ここからは王虎ず手分けしおするしかない。呚囲に鳎子など譊戒甚の眠を甚意する。鐘楌に芋匵りできる堎所を確保する。銬を䌑たせる堎所を䜜る。スネグヌラチカがゆっくり䌑める寝床を敎える。火を起こす。氎を調達する。

    あれでも、王虎の奎はなかなか手際が良い。祈りを終えたスネグヌラチカは、あっずいう間に敎えられたあばら家に目を䞞くする。

    「すごい、あっずいう間に」

    「た、俺達ゃスペシャリストでな。野倖生存から野戊築城たでお手の物よ」

    「すみたせん。少しもお手䌝いできず 前に埓軍看護垫をやった時も遊んでばかりでしたし 」

    「構わないね。お嬢さんは䌑んでいお欲しいね」

    倖での䜜業が終わった王虎がやっおくる。ようやく即垭の囲炉裏も甚意できた。

    早速枩たり぀぀、倕选の準備に取り掛かる。戊堎で、ゆったりず食事が取れるずきは貎重だ。たしおや、どう芋おも良家の子女ずしか思えないスネグヌラチカには暖かい食事が必芁だ。携行糧食で栄逊が取れおも、粟神的な疲劎は取れない。

    鍋に湯を沞かす。也燥した食事では味気ないずいうものだ。沞いたらに秘䌝の倉わり味噌玉を1぀攟り蟌み、溶かしおいく。味噌に也燥野菜や切り干し倧根、しらすや干し゚ビを混ぜ蟌んだ俺特補のものだ。あっずいう間に良い銙りのする味噌汁が出来䞊がる。

    「凄い。スヌプが出来䞊がっお」

    「お嬢さんの口に合うかはわからないがな」

    「やれやれ。日本人は盞倉わらず食が貧盞ね」

    憎たれ口を叩きながらも、䜕凊に隠しおいたのか、王虎は干し肉や䜕かの食材を取り出し、刃物で切り分け始めた。

    「こっちは臘肉らヌろう、干し肉ね。ベヌコンに近い味がする䞭囜の保存食よ。そしおこっちが搟菜、オリ゚ンタルマスタヌドの茎を䜿った、最近䜜られた挬物ね。党郚私特補、秘䌝のレシピね。矎味いから詊しおみるよろし」

    あっずいう間に、目の前には颚倉わりなコヌス料理が広がった。䞭華の干し肉ず挬物、味噌汁、也パン、それにハヌドチヌズやドラむフルヌツ、牛猶ずいった保存食だ。王虎はスネグラヌチカのための玅茶をいれ、俺はよく冷えたりォッカの瓶を開けた。

    「どうだお嬢ちゃん、䞊手いか」

    「ええ  倉わった味だけど、矎味しくお、暖たりたす  䜕より、久しぶりに皆で食事を囲みたしたから」

    圌女はおが぀かない手でスプヌンを持ち、味噌汁を飲み、そしおはにかむような笑顔を芋せる。肉䜓的な疲劎はこれで取れるだろう。しかし粟神的な疲劎は䟝然残ったたたのように感じられた。

    俺も王虎も超A玚のスペシャリストだ。顧客の望む事を行い、顧客の望たない事は行わない。本来であれば、盞談盞手ぐらいになっおやった方がいいのだろう。しかし、客がそれを望たないのであれば、立ち入るべきではない。圌女は俺達にずっお「芁人スネグヌラチカ」に過ぎない。

    朗らかながらも沈黙した食卓を囲み、俺が2杯目のりォッカを飲みほしたずきだ。圌女は、ふいに話しかけた。

    「あの、韍之介さんず王虎さんは なぜこの仕事を受けたのです」

    スネグヌラチカはきょずんずした衚情で、それでいおどこか憂いを垯びた声で、蚪ねおきた。

    「金」「金あるね」

    即答だった。嘘ではない。しかしその時の圌女の質問は、それで終わりではなかった。

    「貎方達ほどの腕であれば、お金などいくらでも皌ぐ方法があるでしょうそれなのに、なぜ、このような危険な仕事をされおいるのです」

    俺達も䜙蚈な事を詮玢される謂れはない。しかし、どこか思い぀めたような圌女の声を聎いお、俺は王虎ず目を合わせた。

    「支那  いや、王虎の事情は知らないが  俺の生たれは歊士、たあサムラむだ。それも実家は叀い剣術を䌝える家でな、お前さんぐらいの時は芪父にしごかれ、山に籠り、各流掟を蚪ねおは吞収する生掻を送っおいたよ」

    自然ず、自分の話を語り始めた。これは圌女を哀れんだのか、それずも圌女の芁請に答えたのか、それずも単にりォッカの酒粟が回っただけなのか。

    「15幎前の戊争に参加しおこの露西亜ずも戊った。機関銃に守られた山地を攻めるずいう無茶な䜜戊でな、䜕回か死にかけた。戊争が終わり、内地に戻った時に、俺は気に食わない䞊官を斬り殺しおお尋ね者になった。刀だけを持っお䞖界を枡り歩き、気が付けば裏皌業っおずこだよ」

    「そ、そうなんですか 韍之介さんも倧倉だったんですね」

    「いや、俺には性に合っおるよ。楜しいさ」

    「王虎さんは  」

    「私ね」

    同じく盃を傟け、煙管を吞っおいた王虎はゆっくり答え始めた。

    「生たれは貧しい蟲民ね。10になった頃にはワルになっお村を飛び出しおね、山東省の秘密結瀟に参加したよ。ありずあらゆる歊術を身に぀け、決起の日からは西掋人を襲撃する日々ね。北京にたで行っお、西掋の軍隊ず戊ったね。他の半端物ず違っお、私の矩和拳はホンモノね。鉄砲も倧砲も怖くないし、指揮官の暗殺だっお䜙裕よ。でも皇垝が裏切ったね  」

    王虎もりォッカを手酌する。

    「それからは矩和拳から離れ、䞭囜各地の秘䌝の拳法や道術を探る日々よ。十分な力が぀いたら、䞖界に腕を詊しに出た。それだけね」

    「凄い  韍之介さんも王虎さんも凄いのですね 自分の力で、䞖界を枡り歩こうず 」

    「そんな倧したこずじゃない」

    「ただそうにしかなれなかっただけね。たあ楜しいからいいね」

    パチリ、ず囲炉裏の薪が爆ぜる。露西亜の倜の垳に芆われた教䌚内を炎の光がゆらめき、照らす。

    「  少しだけ、私の身の䞊話を聞いおくださいたせんか」

    俺ず王虎は、それを聞き、僅かに間をおいお答えた。

    「奜きにするがいい。語りたければ聞こう。語りたくなければ聞かん」

    「サヌビス倖だけど、た、オマケしおおくね」

    少女はごくりず、手に取った玅茶を飲む。

    「ありがずうございたす。ええず、私の名前は蚀えないのですが  」

    圌女自身が露西亜垝囜に繋がる人間であるこず、䞡芪ず姉効に愛されお育ったこず、革呜が起こり家族ず共に監犁されたこず、凊刑される前倜に家族ず垝宀に぀ながりのあったアンドレむによっお自分ず犬だけが助けられたこず、半幎もの間アンドレむに匿われおいたこず、今埌決しお自分の名前を出さず『スネグヌラチカ』ずしお生きおいくよう蚀われたこず。

    俺はりォッカを䞀口、口に含む。アルコヌル床数以䞊に熱く感じた。

    「私は、スネグヌラチカは、これからどうしたらいいのでしょう今たで自分の呚りにあったものが党お厩れ、どうしたらいいのか。貎方達のように自由に、鳥のように飛んで生きるれるのか、そもそも私は生き残るにふさわしい人間なのか、䜕故私だけ生き残ったのか どうしおも答えが思い぀きたせんでした  」

    再び薪がパチリず音を立おる。

    難しい話だ。俺も王虎も少女の気持ちなど考えた事もない。少しの逡巡の埌に、俺はゆっくりず口を開いた。

    「そうだな その境遇に぀いお考えおみたけど、わからねえ。俺も答えは蚀えねえ。ただ、やっおみりゃ良いんじゃねえかな答えはそのうち芋぀かるかもしれんし、芋぀からないかもしれん。そんなもんじゃねえか」

    「倩から授けられた䜿呜、倩呜ずいうものがあるね。でもそれは具䜓的にはわからないずきも倚いね」

    「      」

    静かに聞いおいる。蚀うたでもないが俺や王虎など所詮は裏瀟䌚の人間、かしこたっお聞く䟡倀はない。それでも、スネグヌラチカの悩みに答えるべきだず感じたからだ。

    「それによ 俺だっお旅順じゃ沢山の戊友が死んだ。俺よりもいい奎、凄い奎もみんな死んじたっお、今こうしおダクザな商売をしおる俺が生き残っおる」

    「矩和団の兄匟も、凊刑されたね。逃げ出した私だけ、生き残ったね」

    「生き残った理由なんおのは、俺達もただ芋぀からねえさ」

    「私達も、そんなモノね」

    「ずりあえず、萜ち着いおから、ゆっくり考えおみたらどうだお届け先の『M』の旊那も、そう邪険には扱わんだろう。それでも悩みがあるなら 」

    俺はコップに、りォッカを泚いでやり、スネグヌラチカに突き出した。

    「呑め。呑んで、吐き出しお、泣いお、スッキリすればいい。疲れお眠るたで、聞いおやる」

    「酒は人類の友ね」

    「お、お酒  は  はい  」

    ゆったりずした、现く癜い手で圌女はコップを受け取った。そしおゆっくり、口に含み、僅かにむせ、そしお意を決したように飲み干した。

    「ぷはぁ  」

    可愛らしい唇からりォッカが䞀滎垂れる。頬が䞊気しおいる。そしお、堰が溢れるかのように、泣き出し始めた。膝の䞊でたどろんでいた犬が、優しく圌女の頬を舐めた。

    『МарО́яマリア』『Алексейアレクセむ』『Ольгаオリガ』『ТатьяМаタチアナ』『Папаお父さん』『ЌаЌаお母さん』ずいう単語が聎こえた。

    俺達は静かに抌し黙り、りォッカを継いでやりながら黙っお聞き続けた。やがお、スネグヌラチカは泣き぀かれたのか、床にペタリず暪たわっお眠り始めた。

    俺ず王虎は圌女ず犬を寝床に運び、それぞれの持ち堎に戻った。俺は扉の前、王虎は鐘楌の䞊で呚囲の譊戒を続ける。露西亜の倜は恐ろしいほど寒く、露西亜の倜空は果おが無いほど深い闇を湛えおいた。

    翌朝、スネグヌラチカの様子を芋るず、䜕かすっきりしたのか、今たでより衚情が明るくなっおいた。小さいながらも流石露西亜の女ずいうべきか、二日酔いも無いらしい。露西亜を脱出するたではただ遠い。い぀か、圌女なりの答えを芋぀けおくれればいいが  。

    翌日も晎れおいた。寒さもそのたただが、日の光が少し暖かく感じられた。

    

    それから幟日か進み続け、クバン河を超え、北カフカスを抜けた俺達の目の前に巚倧な海岞に出た。雲䞀぀なく晎れた空の朝日に照らされ、どこたでも続くかのような黒海だ。

    「すごい  黒海ですね。たた芋られるなんお」

    「埌は迎えの船だけだ。倧英垝囜の反応はどうだ」

    「無線によれば、堎所は特定したのでもうすぐ船が着くずの事よ」

    迎えの船がくれば、そこでようやくこのク゜広い露西亜の倧地ずはおさらばだ。俺達はサモワヌルに湯を沞かし、海を眺めながら玅茶を飲んでいた。

    やがお、氎平線の向こうから小さな小型艇が䞀隻、こちらに向かっおきおいるのを芋぀けた。動力船付きの小型ボヌトだろうか。商船旗も船銖旗も掲げおいないが、おそらく倧英垝囜のものだろう。流石、䞃぀の海を支配するずいうだけはあり、船なら䜕でも問題なく調達できるらしい。

    それず同時に、俺ず王虎は異倉に気が付いた。スネグヌラチカには、䞀応気を付けるように泚意しおおく。

    「北西方面からね。およそ4kmぐらい」

    「結構数が倚そうだな。およそ1䞇ほどかき集めおきたか。どうしおも俺達を仕留めたいらしい」

    「た、結構、掟手に関所砎りを続けたからね」

    やはり露西亜ずいうのはい぀の時代でも、兵の数を山ほど甚意しおいるらしい。

    波打ち際に小型の持船ほどの倧きさのボヌトが぀いた。なるほど、他囜領海に䟵入するにはうっお぀けの小型船だ。䞭から、あの『M』の旊那が出おきた時は驚いたものだ。

    「埡苊劎だ。ミスタヌ王虎、ミスタヌ韍之介」

    盞倉わらず、䞍機嫌そうな声ず顔だ。

    「あれ、『M』の旊那。おっきりどっかの英軍将校でもくるかず思っおたしたがね」

    「ああ、本来なら私よりも䞊䜍の人間が来るべきなのだが、流石に政情䞍安の堎所にお連れするわけにもいかん。仕方なく、この小圹人にお鉢が回ったずいうこずだ」

    実にそっけない。しかし、今は無理矢理、笑顔を䜜ろうずしおいる。あの人間嫌いの『M』にしおは珍しい。どうしたこずだろうか。

    圌はスネグヌラチカを芋぀けるず、そそくさず駆け寄り、静かに膝を぀き、恭しく頭を垂れた。『M』が英囜囜王以倖にこのような態床を芋せるのは実に珍しい事だ。

    「むギリス政府内閣府、マむクロフト・ホヌムズです。ゞョヌゞ五䞖陛䞋の代理ずしおお迎えに参りたした。本来ならばより高䜍の者が䌺うべきですが、䜕分政情䞍安な他囜領内であり事情が事情です。平にご容赊を」

    「いえ、お気になさらず。ゞョヌゞ五䞖陛䞋のお気遣いに深く感謝したす」

    スネグヌラチカは穏やかに、感情を出さずに、それでいお瀌儀を匁え感謝の意を衚し぀぀、答えた。

    「Imperial Highness殿䞋 いえ、Grand Princess倧公女ずお呌びした方がよろしいでしょうか」

    「どちらでも、お奜きに。それに、私はもうアナスタシア・ニコラ゚ノナ・ロマノノァではありたせん。ただのスネグヌラチカずいう名の女です」

    「ぞえ、スネグヌラチカ。お前、意倖ず凄いお姫ひいさんだったんだな」

    「気品があるわけね」

    「こら、倱瀌だぞ」

    俺達は『M』マむクロフトにたしなめられたが、スネグヌラチカはそれを止めた。

    「いいえ、この方達、韍之介ず王虎は私の  スネグヌラチカの倧事な  初めおの友達です。どうぞ、お気遣いなく」

    「はあ、そうおっしゃるなら」

    「なるほど、朋友パンダオね。それもたた善しね」

    「ハハハ、マブダチっお蚳か。おっず、そうだ。『M』の旊那。ここから4キロほどの䜍眮に赀軍が迫っおるぜ。数はたぶん1䞇」

    「なんだっおええい、脱出を急がねば  今回のミッションの背埌に英囜がいるず知られるのはあたりよくないな」

    噂によれば、倧英垝囜囜王ゞョヌゞ五䞖は露西亜垝宀の亡呜を考えおいたらしい。だが、それは「倧英垝囜に革呜の火皮を持ち蟌たれおは困る」ずいう理由で、やめたそうだ。奎らはスネグヌラチカの家族を芋殺しにしたずもいえる。

    「なあに、そう慌おなさんな。いい方法があるぜ」

    「私達がここで応戊しおいる間に旊那達はスネグヌラチカを連れお、逃げ出せばいいね。そうすれば、連䞭は圌女を護っお戊っおいるず勘違いするね」

    「銬鹿な。いくら君達ずはいえ、1䞇の軍隊盞手に勝おるものか」

    『M』らしい、実に垞識的な刀断だ。だが俺達はスペシャリスト、垞識など通甚しない。

    「そりゃあ、道理だ。でもよ、俺はたあ、そういう最期もいいんじゃねえかなず思うんだ。戊っお死ねるなら本望よ」

    「それに、私達も簡単には死なないね。あず少し戊い足りないね」

    「お前達 有難く借りにさせおもらうぞ。スネグヌラチカ様、どうぞ狭い船ですが、お乗りになっおください」

    「ええ、でも、少し埅っお」

    スネグヌラチカが俺達の元に駆け寄っおきた。矎しい睫に倧きく涙を貯めおいる。どうやら良いずこ育ちの圌女でも俺達が死地に赎くずいう事はわかったらしい。

    「どうか玄束しおいただきたいのです。ただ貎方達ず話したりない。英囜で、お茶をしながらお話をさせおください。玄束ですよ」

    玄束ず来たか。

    「応、承った。芪愛なる孫嚘スネグヌラチカのために、このゞェド・マロヌス、良いプレれントずなる話を甚意しおおくずしよう」

    「なあに、赀軍など私達の敵ではないね。良いカフェを甚意しお欲しいね。楜しみにしおいるよ、孫嚘スネグヌラチカ」

    それを聞いたスネグヌラチカは、にこりず、笑顔を芋せ、黒い愛犬を抱え、すぐに船に乗り蟌んでいった。゚ンゞンの音がかかる。

    「さお、俺達も行くずするか」

    「そうね。日本人に期埅はしおいないけど、3000は任せるね」

    岞を離れおいく船に背を向け、俺達は銬の背に乗り、赀軍䞀䞇に向かっお、ゆるりず進み始めた。

    今日は実に良い空だ。

    

    黒海の海岞から1kmほどたで銬を進めるず、埐々に赀軍の兵士たちが陣圢を敎えおいるのがわかる。凄い数だ。正に露西亜お埗意の人海戊術human waveずでもいうべきか。

    ずはいえ、露西亜兵䞀䞇人ず蚀えど、関ヶ原の戊いの十分の䞀皋床。内戊および干枉戊争䞭で兵を出せる数が少ないずはいえ、スペシャリスト二人を止めるにはあたりにも兵数が少ない。俺達も随分ずナメられたものだ。

    連䞭は䞀気に突っ蟌んだり撃ったりするかず思えば、陣圢を敎えたたた動かない。率いおいる将校の統率が良いのだろうか

    そう思っおいたずきだった。遠くから倧音声が聎こえた。たるで雷鳎のような、そしお冷酷な声だった。

    「垝囜䞻矩者の犬ども、貎様たちは完党に包囲されおいる。抵抗は無駄だ。貎様たちが匿っおいる女は反革呜の倧眪を犯しおおり、さらに党による思想孊習の機䌚を蹎り、逃亡したため党は綱玀粛正のために家族を銃殺するこずになった。倧人しく女を倧人しく匕き枡せば呜だけは助けよう」

    銬䞊で声を聎いた俺達はクスクスず嗀っおいた。王虎ず目を合わす。

    「なかなか笑わせおくれる挔説だな。ずころで、芋えるかあのあばた面の男、どっかで芋た芚えがあるんだが」

    俺達の芖力は修行によっお倧きく鍛えられおいる。数キロ先の看板の文字皋床を認識するこずは䜙裕だ。芖線の先には拡声噚を持った髭の男がいた。

    「圓然よ。あれは危険人物ファむルに曞いおあった男ね。ゞュガシノィリずかいう元神孊生のグルゞア人、レフ・トロツキヌず䞊ぶレヌニンのお気に入り、ロシア南郚の軍叞什官にしお責任者、冷酷無比な『鋌の男』  確かペンネヌムを  」

    「ペシフ・スタヌリン。だったかここでぶっ殺した方が䞖のため人のためになるような奎だな」

    「遺憟ながら同感ね。んじゃ知らせおやるずするね」

    同時に、俺達は倧きく息を吞い蟌む。歊術による呌吞法によっお、俺達は拡声噚などを甚いずずも数キロにわたる倧声を䞊げる事ができる。

    「かかっおこい」

    「盞手になっおやる」

    王虎ず俺は挑発的に叫ぶずずもに銬を蹎り、䞀気に露西亜兵の暪隊に突っ蟌んでいった。同時に赀軍にも号什がかかり、M1891モシン・ナガンから攟たれた7.62mm×54Rの嵐が俺達に襲い掛かっおきた。

    俺達は銬銖を少し返し、そのたた宙に飛び跳ねお回避し、さらに着地しお地を䌏せるように駆け出す。銬を必芁以䞊に殺す趣味は無い。連䞭を殺すのに銬など必芁ない。ただ刃王虎は拳だがさえあればいい。

    「урааааааааааааааааааааааааааа!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

    連䞭は倧音声で露西亜兵おきたりの声を䞊げながら着剣しお突っ蟌んできた。露西亜兵は䌝統的に近接戊闘が奜きらしい。俺達にずっおは銃匟よりも楜しめる。

    駈けながら銃匟をかわす、抜刀しお匟く、頭を䜎くしお避ける、遠方から狙っおきた散兵の狙撃手の匟を刀で匟く、倧きく巊右に螏み蟌みを行っおM1904 152mmカノン砲の砲匟をかわす。党くの無音、呌吞も乱れおいない。この皋床は朝飯前ずいうものだ。

    もう兵の列は目の前、お楜しみの時間の始たりだ。俺は刀を構える。

    スパリ、スパリ、ズブ、スパスパ、ズブリ。

    螏み蟌みず同時に、瞬時に䞀垯にいる赀軍兵士達党おの喉笛を掻き切り、心の臓に突き立おおは抜く。動揺する暇すら䞎えぬ。

    続けお数が倚いゆえ纏めお倪刀の倧振りで数人の胎䜓を切断する。ここたで無音、声を䞊げず、息すら荒立おる必芁もない。

    ここで挞く、赀軍兵士達もたった䞀人のサムラむに瞊隊を血ず肉のぶ぀切りに倉えられたこずに気が付いたらしい。だがもう遅い。俺は血に塗れた地を蹎り、駆け出すずずもに、次の䞀団に向けお斬り蟌んだ。

    兵士達も異垞に気付き、恐怖に混乱する者・逃げ出す者・激昂しお突っ蟌んでくるものなどバラバラに動き出した。指揮が取れおいない。旅順で戊った兵士達は極めお優れた統率だったが、赀軍は士官ず階玚を廃止したず聞く。それでは俺達は止められない。俺はその連䞭の銖や胎䜓をたずめお切り刻んでやった。

    しばらくするず連䞭は遠距離から兵士達を切り刻んでいる砲匟を撃ち蟌んできた。どうしおも俺を殺したいらしい。だが圓然そんなものは俺達にはお芋通しだ。玠早く兵士の死䜓を蹎り、殺傷範囲倖に逃れる。埌に残された兵士達は砲匟でバラバラにされ吹き飛んでいった。愉快痛快、手間が省けるずいうものだ。

    王虎はずいうず、最初の方は銃匟をかわしながら拳を叩き蟌んだり、銃匟を蹎りで消力シャオリヌで無効化し぀぀そのたた膝で赀軍兵士の顔を吹き飛ばしたり、空䞭で砲匟を足で蹎飛ばしお跳ね返し砲台陣地を吹き飛ばしたりしおいたが、いい加枛数が倚く面倒になっおきたらしい。

    「ちょっず時間がかかりそうね。ならたずめおいくね。廻倩金鳥脚を披露するかね」

    僅かに跳び䞊がるず同時に、瞬時に態勢を敎え、頭を䞋にしお連続で旋颚脚を繰り出す䞭囜拳法の秘奥䞭の秘奥、たたの名を『スピニング・バヌド・キック』だ。䞭囜広しず蚀えど、珟圚では䜿える者は100人を超えないず聞く。たしおや王虎のそれは回転する脚の䞀本䞀本が屠殺工堎の銖狩り機ず倉わらない。あっずいう間に兵士のいた陣地は血の海になり果おた。

    「おいおい、こりゃあちょっず匱すぎるぜ」

    「10分ほどで3000人ほどは殺したね。時間の問題ね」

    「スタヌリンの野郎、ちょっず俺達を舐めおるんじゃねえか」

    「なら舐めたオトシマ゚を぀けさせるだけね」

    その時だった。俺は脛を、王虎は䞊腕を銃で撃ち抜かれた。党くあらぬ方向、無譊戒だった堎所、先ほど俺達が皆殺しにした血塗れになった雪䞊の方向からだ。俺ず王虎はそちらを振り向くず、有り埗ぬもの達がいた。

    それは血塗れの赀軍兵士達だ。あるものは頭が぀ぶれ、あるものは頭が吹き飛んでいる。それなのに、銃だけはしっかりず持っおいる。そんな奎らが30人ほど、いや、次々に起き䞊がっおきおいる。銬鹿な露西亜人ずは劖怪の類かそんなはずはない痛みに耐えながら思った俺達の耳に、拡声噚越しの『あの癪にさわる声』が聎こえおきた。

    「君達の歊術は芋事だ。だが、君達はただ『共産䞻矩』を知らない」

    埐々に、良く晎れおいた露西亜の空が曇っおきた。これは吹雪き荒れるかもしれない。

    

    䞍敵に嘲笑うような、拡声噚越しのスタヌリンの声が聎こえる。腹が立぀ような、実に忌々しい声だ。

    「反動達に教えおやろう この愛囜的な兵士達がどうしお死しおたた起き䞊がり、死しおなお垝囜䞻矩者である貎様らず戊い続けるのか。カヌル・マルクスはヘヌゲル法哲孊批刀序論においお『宗教は民衆の阿片である』ず述べ、共産䞻矩においお宗教を吊定した。ロシア共産党指導者りラゞヌミル・レヌニンはマルクスの考えを発展させた。぀たり 」

    聞いおもいないのに奎は挔説のようにしゃべり続ける。俺ず王虎は、前方の生ける赀軍兵士の匟䞞を避け぀぀、埌方の死した赀軍兵士の突撃をいなし、銃匟を避け、手抎匟を蹎り返しながら、その挔説を聞いおやるこずにした。

    「共産䞻矩ずは最も掗緎されたアンチ・キリストなのだ」

    なるほど、点ず点が線で぀ながるように、合点がいった。王虎も目から鱗が萜ちたような顔をし぀぀も、理解できたようだ。それならば赀軍兵士がゟンビヌずなるのも圓然だ。

    かの有名な『共産党宣蚀』は有名な䞀文から始たっおいる。

    䞀぀の悪魔が欧州に珟れおいる、共産䞻矩ずいう悪魔が。旧欧州のあらゆる暩力が、この悪魔に察する神聖同盟を結んでいる。

    この魔導曞を著したカヌル・マルクスずその協力者フリヌドリヒ・゚ンゲルスが皀代の暗黒魔術垫であった事は裏の䞖界では垞識だ。圌らは普魯西や癜耳矩、仏蘭西や瑞西から远攟される憂き目にあったのも圓局から黒魔術の行䜿を問題芖されたためず蚀われおいるいただ神代の神秘が色濃く残り、魔術に関しお理解のある倧英垝囜では排斥されなかったのは人類にずっお幞か䞍幞か。

    もちろんマルクスが䌝えた共産䞻矩黒魔術の䞭には死霊魔術ネクロマンシヌ、すなわち死した人間の肉䜓からゟンビやスケルトンを、魂魄からゎヌストを䜜り出し究極のプロレタリアヌトを䜜り出す術も圓然あったのだろう。死霊魔術ずは耶蘇の埩掻をも吊定し匄ぶものであり、それらは宗教を吊定するアンチ・キリストたる共産䞻矩者こそが䜿圹するに盞応しい。それらはむンタヌナショナルなる共産䞻矩者の秘密組織にお密かに䌝えられ、やがお『シンビルスクの魔王』の異名をずる倩才魔術垫レヌニンらの手に枡り、そしお圌が露西亜にお暩力を奪取するために存分に䜿われたのではないか。

    ペシフ・スタヌリンもたた秘奥を䌝えられたレヌニンの匟子筋にあたる死霊魔術垫ずいう事か。ゟンビず戊いながらようやく事態を理解したころに、スタヌリンは俺達に向かっお埗意げに蚀い誇った。

    「君達が戊っおいる赀軍兵士達1䞇人は死しおもなお転生しお党の呜什に服し、垝囜䞻矩者達ず闘争を続けるのだ぀たり1䞇の兵士は10䞇  いや、100䞇の兵士に匹敵する。さあ、同志達よ。党の敵を屠るのだ」

    冷酷にしお非道な髭の男は続けお、呪文の詠唱に入った。冒涜的で、地獄めいた共産䞻矩死霊魔術の呪文をだ。戊いながらもその声を聎くずぞくりずする。ガラス窓を鉄釘で擊り぀けるような、生理的嫌悪を匕き起こす声だ。俺はスタヌリンの魂が地獄の悪魔ず契玄しおいるか、もしくはスタヌリン自身が地獄からきた悪魔であるかのどちらかである事を確信した。

    「゜ビ゚トロシアでは兵士は畑で取れる。䞀人の人間の死は悲劇だが、. 癟䞇人の死はもはや統蚈である。投祚をする者は䜕も決定できず、投祚を集蚈する者が党おを決定する。愛や友情はすぐ壊れるが、恐怖は長続きする。神は貎公の味方か、悪魔は私の味方だ。マルクス・レヌニズム、マルクス・レヌニズム、党は求め蚎えたり」

    戊堎のあちこちの地面に、鎌ずハンマヌが描かれ深玅の光で犍々しく茝く倚数の魔方陣が顕珟しおいく。それず同時に、地獄の業颚もかくやず思われる瘎気、血ず鉄ず硝煙の臭気があたりに立ち蟌めおいく。

    次々ず、血の海から『真っ赀な赀軍兵士』達が起き䞊がっおきた。今たでの速床ずは比にはならないほどの倧量のゟンビ兵士、スケルトン兵士、フレッシュゎヌレム兵士、ゎヌスト兵士が、死䜓の山の䞭から次々ず珟れおいく。奎らはただのアンデッドではない。銃を持ち、手抎匟を腰に構え、地獄の業火の劂き砲兵陣地の苛烈な揎護によっお前進を続けるアンデッド赀軍兵士なのだ。

    地獄が具珟化したず思われるほどの挂う瘎気のせいか、極寒の雪原だずいうのに冷や汗が止たらない。だが同時に、俺の口角がニダリず䞊がる。

    王虎は震えおいた。おそらく歊者震いであろう。その蚌拠に、その瞳は爛々ず茝いおいる。たるで新しいおもちゃを芋぀けた少幎のようだ。

    「いやあ、参ったな」

    「困るね。実に困るね。盞手が人間の兵士ではなく、化物だなんお、困るね」

    「化物盞手なら手加枛はいらねえよな。すたねえが、少し時間を皌いでくれ」

    「そうね。本気を出しお良さそうね。早めにしお欲しいね。じゃ、お先に倱瀌  応」

    裂垛の気合ず共に、王虎が党身の気功を攟出した。今たでの俺達は『盞手が人間だから』ずいう理由で本気を出しおなどいないのだ。支那人は倪極拳の発勁を繰り出し、片足を䞊げ、力を溜める。発勁ずは超垞の力などではなく、䞭囜歊術における「䌞瞮や重心移動の力」を指す蚀葉だ。ただし、衚の䞖界では

    そのたた凄たじい勢いず爪先から螵たで茝くほどの功倫を纏った足を倧地に螏み降ろした。八極拳における震脚だ。倚くの歊術における螏み蟌みず同じものだ。ただし、裏の䞖界では少々効果が远加される

    螏み蟌んだ足を䞭心に光り茝き、やがおそれは数本の線ずなっお幟䜕孊暡様を描きながら巚倧な陣を地面に䜜り出しおいく。それはたたたくたに半埄500mにも及ぶ黄金八角圢の図象を露西亜の倧地に描き切った。

    「これぞ垫父より䌝えられし犁八倧招匏・八半浞透勁䞃孔噎血、撒き死ぬね」

    倪極思想による気功を埗意ずする倪極拳、八半の圢を特城ずする八半掌、そしお超近接距離の匷打を特城ずする八極拳ず仙術・道術を融合し、それぞれの利点を組み合わせ盞乗効果ずしお「呚囲䞀垯の地面から」「耇数の察象党おに」「至近距離の匷打」を撃ち蟌む王虎の秘奥だ。

    「「「「「「「ЎееееееееееерьЌПППППППППППП!!!」」」」」」」

    地面から攟たれた黄金色の匷打の嵐に、悲鳎を䞊げおアンデッド赀軍兵士達は悲鳎を䞊げながら匟け飛び、二床ず埩掻できないよう现胞・魂魄の䞀片たでも粉々に砕かれおいく正に広域・䞀撃必殺、予備動䜜である震脚の時点で盞手を殺すこの拳が『无零打』ぜろうちいらずずいう王虎の異名の由来になっただけはある。

    僅かな隙の間に、こちらもひず぀本気を出すずしよう。俺は血塗れの刀を目の前に構え、静かに瞳を閉じる。耳元を銃匟が所謂が掠めるが、やがおそれらの雑音すら無になるほど深く集䞭しおいく。

    これは出雲の叀い道堎もちろん道堎砎りの戊利品だに䌝わる『心の䞀方』の類型である自己催眠の術だが、芏暡がちず違う。十分に境地が敎ったず感じれば、即座に祝詞を唱える。

    「倩぀眪ず畊攟、溝埋、暋攟、頻蒔、䞲刺、生剥、逆剥、屎戞、蚱倚の眪。蚱倚の眪出でむ  いざ参れ、この身に降れ神須䜐胜袁呜」

    神道や修隓道でいう倧祓詞の前半、スサノオ神が犯した眪、すなわち倩接眪の名を唱え、眪人たる神を降ろす。脳の奥が激しく痛み、内臓が悲鳎をあげ、筋繊維が少しず぀匟け切れおいくのがわかる。俺が俺でありながらも俺でなくなっおいく。

    凄たじい痛みず共に、目を開いたずき、俺の芖界はたるで違っおいた。党おが止たっお芋え、ありずあらゆる距離が自圚ず思われ、どこか知らぬ堎所から党身に燃料が投入されおいるが劂き力が挲っおきた。これが神降ろしによる神ずの合䞀、己が身を荒ぶる神スサノオず同じ存圚ずする犁術䞭の犁術だ。ああ、滟る俺はたたらず叫んだ。叫ばねば、力を攟出せねば人の身にはあたる莫倧な力の逆流でこの身が焌かれおしたう。

    『りオオおオオおオおオおオオおォぉォぉォ』

    自分でもこの䞖の者ずは思えぬ声で叫びながら、刀を適圓に振り䞋ろすず、蜟音ず共に剣の切っ先から凄たじい衝撃波が攟たれ、赀軍兵士の戊列を吹き飛ばし、背埌の砲台陣地すら朚っ端埮塵に打ち砕いた。

    ただだ。ただ足りぬ。もっず莄を寄越せ俺はさらに倧䞊段に構え、枟身の力ず共に技を攟ずうずした。この神を身に宿した状態でなければ攟おぬ倧技、荒ぶる砎壊神の力ずその神が殺戮した日ノ本の化身にしお八぀銖の韍王の力を同時に操る人の身には䜙る技だ。腕の、そしお党身の筋繊維がぷちぷちず音を立おお切れ、骚すらバキバキず折れ、それを有り䜙る力で匷匕に再接続しおいく。ああ、脆い。人の身はなんず䞍自由な事か。

    『シィィぃねェぇぇェェぇェ八頭韍の倪刀、キぃえぇェぇペォォォ』

    党身党霊を蟌めお、倧地に刃を振り䞋ろすず、先ほどの数倍もの嚁力を持぀八本の荒ぶる韍の圢をした衝撃波が地を连り、絡み合い、再び岐れ、四方の露西亜兵を切り刻み、吹き飛ばし、捻じり、生者も死者も区別なく死を䞎え、荒れ狂った。

    「盞倉わらず技の嚁力『だけ』は銬鹿げたものね。およそ3000人は葬ったかね」

    い぀の間にかすぐ近くたで来おいた挢人が枛らず口を叩く。党く持っお䞍敬で䞍愉快な奎だ。敵兵士達を殺し尜くしたらお前も殺しおやる。ずはいえ、技を攟ったこずで少し䜓内の力の緊匵も緩たった。俺は芪切だから奎に蚂正しおやる事にしよう。

    『違り。正確にハ、2898人ダ。生者が1678人、死者ガ1220人、党員根ノ囜に返シた』

    「しっかり芳枬ず蚈算ができるずはずいぶん頭もよくなったみたいね。た、それはずもかく、あのスタヌリンずか蚀う奎、生かしお返すかね」

    『圓然殺ス。挢人ペ、俺ニ合わセろ』

    「遅れたら眮いおいくね。しっかり぀いおくるね」

    挢人は瞬時に構えを取り、䞀泊眮いお、この神の瞳を以おしおも瞬間移動したような速床で背埌の死霊術垫めがけお突っ蟌んでいく。凄たじい勢いの突進であるずずもに、呚囲に拳ず脚の嵐を芋舞い、守りに入ろうずした兵士達を塵に返しおいく

    あの技は知っおいる。昔、挢人から聞いお知っおいる。倏王朝にお線み出された原始倪極拳の奥矩、倪極䞡矩十䞉勢、八億門五兆歩八半の理におあらゆる空間ず時間を自圚に芋極め、力ずする究極の拳法にしお仙術、今や修緎のための型のみしか残っおいないず聞く。

    なるほど、あの挢人も人の身に過ぎる歊を身に着けおおるか。これは埌で殺すのが楜しくなりそうだ。だが、あ奎に舐められるのは腹が立぀。舐められたら殺す。党員惚たらしく殺す。こちらも奥の手を出しおやろうではないか。

    あの死霊術垫めがけお巊手をピンず䌞ばし、照準に捕らえる。右手の剣を巊手に添え、枟身の力を蟌める。䞀呌吞埌に力を解攟し、䞀気に突進を開始する。

    『消え倱せペ。倩照倧埡神匑逆の倪刀、りおオおオおオオォぉォォ』

    暗殺に適した超高速の突進からの平突き、剣術ではよくある単玔明快な技ではあるが、その力も速床も桁が違う。これぞ憎き姉を殺すためだけに鍛え䞊げた神殺しの剣だなんやかんやあっお殺せなかったが

    觊れる いや、突進の射線付近にいた敵兵士を瞬時に血煙にあげながら、腹立たしい挢人の突進におい぀き、あの忌々しい死霊術垫の喉元めがけおぐんぐんず距離を䞀気に詰める。

    狌狜する死霊術垫の顔が芋えた。これはいい気味だ。

    「銬鹿な䜕故だなんだ貎様らの力は異垞ではないかこちらは1䞇以䞊の兵ず共産䞻矩死霊術があったんだぞ」

    『銬鹿メ俺ヲ殺すナラ垫団芏暡じゃ足りネ゚んだペ死ネ』

    「最䜎でも䞀個軍集団ぐらいは持っおくるね  地獄で反省するね」

    「有り埗ぬそんな力がありながら䜕故暩力を欲しないなぜ殺戮するだけの力を持ちながら、支配しようずしない」

    『貎様ノようナ俗物ニ歊神ノ心ハわカラんダろうサ』

    「私達は自分の匷さしか興味がないね。暩力思想䜕それ、食べられるね」

    「お、おのれ゜ビ゚ト共産党ばんざぁぁぁぁぁいいい」

    俺の剣が奎の頭を、挢人の拳が奎の胎䜓を、9の9倍の9倍の砎片ぞずバラバラに砕くず同時に、现胞の䞀片たで滅がし尜くす

    それで、その冷酷な死霊術垫は終わった。

    銬鹿め。暩力や財力で支配するなど二流の男がするものよ。䞀流の男なら刀䞀本・拳䞀぀で支配しおこそだ。

    だが、おかしい。䜕かがおかしい。

    剣の刺さった感觊にどこか違和感を感じる。どうにも奇劙だ。挢人も怪蚝な顔をしおいた。

    「こい぀も  死霊術で死䜓から䜜り出した屍肉人フレッシュゎヌレム  圱歊者ね」

    『な、なンダずォぉォ圱歊者たぁしゃらくせええええぇぇぇ」

    それず時を同じくしお、党身から力が抜けおいく。痛みが走る。傷口から血が噎き出る。俺は神降ろしの術が切れた事を悟った。それは神降ろしによっお匷匕に立っおいた状態が解陀されるずいう事だ。ばたりず、地面にあおむけに倒れる。曇倩に僅かに途切れ、切れ目から陜光が俺達を照らし始めた。

    

    ああ、党身が痛い。背䞭に圓たる露西亜の倧地が冷たく堅い。もう䞀歩も動けそうにもない。幞いにしおアンデッドどもは党お地に垰り、残った赀軍兵およそ100人以䞋だがは恐怖で逃げ出し始めた。だが、これはもう動けない。

    「日本人  いや、韍之介、おたえ、もう死ぬね。人の身に䜙る力、䜿い過ぎたね。私、わかるね」

    王虎の呟きが聎こえる。しかしながらその王虎も、俺のすぐ近くで、同じように転がっおいる。奎もあの拳術は身䜓の限界を超えおいたのだろう。

    「ケッ、うるせえ王虎。お前も功倫の䜿い過ぎで、同じ様子じゃねえか。こりゃあ呜脈が尜きたな」

    「盞倉わらず口が枛らないね」

    「お前にだけは蚀われたくねえ」

    ぜえはあず、呌吞が苊しくなる。ごぜりず肺の奥から血の塊が出お、䞀気に吐き出す。これは本気で苊しい。奎の蚀う通り、限界を超えおしたったのだろう。

    「た、でも  スタヌリンの野郎はぶっ殺せなかったけど  楜しかったなぁ、王虎」

    「そうね  実に、楜しかったね。ずは  いえ、韍之介、私ひず぀  心残りね」

    「ああ、俺も心残りが  ある。嘘、぀い  ちたった  なぁ」

    俺は黒海に溶けだしそうな色の、露西亜の曇り空を眺めながら、あの『孫嚘』の顔を思い出しおいた。

    

    1919幎4月、倧英垝囜。13時頃。倫敊には珍しく良く晎れた日。

    倫敊の䞭心郚にあり、倧英博物通などが存圚する高玚文教地区ブルヌムスベリヌ。

    王䟯貎族に愛される隠れた名レストランの二階垭。

    窓の䞋には、狂気じみた倧戊争が終わっおようやく孊業に粟を出し始めた孊生たちが通りを歩いおいる。俺は葡萄牙産のワむンを傟けながら、のんびりずそれを眺めおいた。平日昌間から酒を飲んで、衆生を眺める  これぞ真の男の楜しみよ。いい気分だ。

    仏頂面をしながらハむランドのりむスキヌが入った杯を手にした王虎がテヌブルの向かいにいなければ。

    「なんでお前、生きおるね」

    「お前が俺に生還を諊めさせお、報酬独り占めを狙っおたのは知っおたぞ」

    「韍之介も同じようなこずを蚀っおたよ。日本人、やっぱりずるいね」

    「ああ、もううるせえ。怪我に響く。黙れ」

    「あの時ずどめを刺しおおけばよかったよ。次は殺す。スタヌリンず䞀緒に殺す」

    「やれるもんならやっおみな、返り蚎ちにしおやるよ。おっず、怪我が治っおからにしろ」

    俺達はあの埌、圓然のように足を匕きずりながら歩いお垰っおきた。たあ滅茶苊茶身䜓が痛かったし、死ぬかず思ったが、運よく運悪くお互い死なずに倫敊たで蟿り着いた。畜生、今に芋おいろ。身䜓が治ったらぶっ殺しお俺のスペシャリスト番付を1぀あげおやる。

    ああ、気分が悪い。そう思いながらワむンを喉の奥に流し蟌み、窓の倖を眺めた。その時だ。通りにいた黒い犬ず目が合った。同時に犬がこちらに向けお、けたたたしく吠え始めた。腹の立぀犬だ。だが、どこかで芋た事のある顔の犬のような。

    飌い䞻の、䞊品な服を着た垜子の女が犬を抱え䞊げる。そしお垜子を取り、こちらを芋る。ああ、なるほど。

    間も無く階䞋から「お客様、困りたす」ずいう声、そしおドタバタず足音を立おお『懐かしい䜕か』が二階垭に駆け䞊がっおきた。䞊品に纏めた金色の髪が、掟手ではないが質の良い服が、実に良く䌌合っおいる。

    「ちょっず韍之介さんに王虎さん無事、垰っおきおるならそう蚀っおくださいよ䜕か月たったず思っおるんですか私、心配しおたんですから」

    犬を抱えた『孫嚘スネグヌラチカ』は随分ず埡立腹のようだ。

    「いやあ  その、今垰っおきたばっかりで。なあ、王虎」

    「そ、そうよ。今から探しに行こうず  ね、韍之介。いや、孫嚘スネグヌラチカも元気そうでよかったね」

    嘘だ。俺達は明日にでも船に乗っお景気のいい亜米利加にひず皌ぎ行こうかず考えおいた。

    『孫嚘』は頬を膚らたせながら、テヌブルに぀き、グラスを䞀぀手に取る。

    「ええ、あれからホヌムズ卿ず囜王陛䞋の埡厚意でこちらに蟿り着き、新しい戞籍もいただきたしたずもそんなこずよりずもかく玄束通りお話を聞くたで逃がしたせんからね。たずは、お酒無事垰っおきたんだから也杯しないず」

    早速酒を催促し始めた。名を捚おおもやはり露西亜の女らしい。俺達は苊笑いをしながら、圌女のグラスにりむスキヌを䞊々ず泚いでやった。

    「遅刻魔で連絡を寄越さないゞェド・マロヌスに」「可愛い孫嚘スネグヌラチカに」「也杯ね」

    あずがき

    お疲れ様でした。お読みいただいた皆様にたずは感謝を、そしお快く参加を受け入れおいただいた䞻宰者の桃之字様ず他のExcitingなパルプ・スリンガヌの皆様に深い敬意をお瀺しいたしたす。

    くるしたず申したす。知っおいる人はどうもご無沙汰しおおりたす。知らない人は初めたしお。い぀も胡乱なものを曞いおいたすが、「パルプ楜しいなあ。でもちょっずただただ腕が足りないなあ。腕を磚いおみたいなあ」ず思い、今回は飛び入り参加させおいただきたした。ただただパルプ初心者ではございたすが、他の参加者様の䜜品を楜しみながら孊んだりパクったりさせおいただいおおりたす。

    今回は「出だしのむンパクト」「物隒な䞖界」「垞識倖れの二人組」「匷倧な悪圹」「ズババババッサリ感」「凄いアレなオカルト描写」「゜連」「倧勝利垌望の未来にレディヌ・ゎヌ」「ブリカス」「ヒロむン」などをなるべく意識しおみたした。未熟ではありたすが、未熟なりに、アクセル党開ブレヌキ砎損の党力を出しきっおみたした。悔いはない。ずおも、ずおも、曞いおいお楜しかったです。あらためお深い感謝を。

    ただただこれからがパルプアドベントでございたす。皆様もぜひ楜しい聖倜を、そしお氷点䞋のシベリアをも溶かす熱いMexicoの颚、そしお矎味いCoronaの䞀服の圚らんこずをお祈り申し䞊げたす。

    PS.普段はこんな胡乱な奎曞いおたす。



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    ゚ンタメ それは君が芋た光 僕が芋た垌望 ゚ンタメ それはふれあいの心 BLAM!BLAM!BLAM!KABOOM! 幞せの青い硝煙(くも)

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