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🟡掌編小説|魔ネキは何でも知っている1

    【魔王編】はこちら

    第1話 魔女と魔王

     突然、弟が出来た。しかも愚弟だ。

    ***

     こともあろうにその愚弟は、世界中の男を、そしてわたしの許婿をも、現れるなり全て一飲みで食べ尽くしてしまった。

     その愚弟こそ、この世界の魔王、悪名高き……その名も……単なる「魔王」という。

     名前の設定が無かった。

    ***

    「被告マルグリット、最後にもう一度だけ発言の機会を与えよう。魔女だと認めるなら火刑に処す、認めないなら火刑に処す、そのいずれか一方を選べ」

     聖母様、これが宿命であるならどうか、この哀れなる者共にお赦しと、そしてわたしにはどうか少しの勇気と変わらぬ御慈悲をお与えください。

    「わたしから申し上げることは御座いません」

    「被告マルグリットは魔女であることを認めなかったが故に魔女であることが明らかとなった。よって火刑に処す」

     わたしは火炙りにされて死んだ。

     そして──

     このくだりを1000回繰り返した後、異世界に転生して魔族史上初の女性魔王となった。

    ***

     わたしのほうが数百年早かっただけだ。

     新たに魔王が異世界から転生し、わたしは事実上一線を退いた。以後「先王」「先代魔王」「大姉御」などと呼ばれるようになった。

     たが愚弟だけは何故か「魔ネキ」と呼ぶ。癇に障らぬでもないが、まあ捨て置くことにした。

    ***

     許婿はかつて「ぼくのマルゴ」と呼んだ。

    ***

     ギヨームは、魔女の嫌疑をかけられた妹を守るために、わたしを売った。

     本当の魔女はマルゴで妹は無実だと。そう言ってわたしを告発し、出鱈目な筋立てと嘘で塗り固めた証拠でもってわたしを魔女に仕立て上げた。

     だからギョームを、わたしはかろうじて人間のままで、この異世界に、愛する妹と引き離し、わたしだけを愛せるように連れて来たのだ。

     それから500年も生きたギヨームを人間と呼ぶことは最早出来まい。だが本人はそのつもりらしい。

     今ではこのわたしを「化物」と呼ぶ。

    ***

     愚弟には腹の中のものをすべて吐き出させたが、出てきた男たちの消化具合には個人差があった。

     皮膚表面の角質層が剥がれてスベスベになった者、体毛が溶けて全身ツルツルになった者、まるで損傷のない者もいた。

     また、心理的な外傷にも個人差があった。ギヨームは他者を恐れるようになり、誰との会話も困難となった。毎日震えながら暮らしている。

     その手の施設もあるにはあるが、わたしは最後まで面倒を見るしかないだろうと思っている。

    ***

     ああ、そしてまた、愚弟が何やら問題を抱えているらしい。

     手のかかる魔王だ。

    (つづく)

    🟡1041文字


    【附記】

    魔王シリーズがここへ来てまさかの視点人物変更。
    【魔ネキ編】突入です!笑

    ▼【魔王編】第1話

    ▼【魔王編】第2話

    ▼【魔王編】第3話

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