
セキレイの来る駅で【シロクマ文芸部 : 待つ時間】
待つ時間を楽しむ。
それがいつも、私の旅だ。
日頃は待つ事を避け、
時間に隙間があれば、
先々の用を片付けてしまう。
結果、いつも忙しく、
ボンヤリと頭や体、そして心を
沈殿させる時間が無くて、
いつもかき混ぜられ、
濁ったままだ。
不意に休日が降った日に、
私は小さく旅をする。
なかなか来ないローカル線の、
時刻表を検索もせず、
フラリと座る、無人駅の待合い。
静かだ。
列車の時刻がまだ先だから、
誰も来ない。
何も考えない。
スマホをバッグに突っ込んで、
ただボンヤリと、駅舎を眺めた。
小さな羽音がして、駅舎の中に
一羽のハクセキレイが舞い込んだ。
私を人だと気づかないのか?
小さな足で、驚くほど素早く
チョコチョコと歩き回り、
夜の間に自販機の灯りに集まり、
飛び回って弱った羽虫や蛾などを
あちこち物色している。
(・・・可愛い🩷)
息を殺し、じっと動かずに、
あまり視線を強くしないで
小鳥の様子を盗み見る。
なんの意味もなく、
なんの利益にもならないひと時。
でも、人には(私には)そんな、
無駄に見える時間が必要なのだ。
静かに心の濁りが沈殿し、
澄み渡るのを感じる穏やかな時間。
小鳥は早朝に食事する。
ここは、小さな昆虫を餌とする
セキレイにとって、魅力ある場所。
さしずめ、弱った羽虫が食べ放題の
朝食ビュッフェさながらだ。
やがてセキレイは、
小さなクチバシ一杯に
蛾や羽虫を咥えて飛び去った。
きっと子育てしてるのだろう。
可愛いヒナが待っているから、
人に遭遇する危険も乗り越えて、
この駅舎に入ってくるのだろう。
居たのが私だけで良かった。
セキレイは、ヒナへの土産を
どっさり持ち帰る事が出来た。
ただ、黙ってじっと見守っただけで、
セキレイの子育てを手伝ったような
妙な満足感を覚えた。
可笑しいね。
ただ、ボンヤリ座って
息を殺していただけなのに。
さて、と。
そろそろ次の列車の時間が
近づいてくる。
ロータリーに、送迎車が停まった。
今日はどこへ行こうかな?
オシャレな街で、
美味しいものでも食べようか?

それとも反対の列車に乗り、
山河の景色を楽しむのもいいな。

選ぶのは、私。
決めるのも、私。
運ぶのは、レールの響き。

飛び立ったあのセキレイのように、
軽やかに行こう。
自由気ままな、
私だけの旅が始まる。

※※※ 了 ※※※
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※小牧幸助部長 様
今週もお題を有難うございます😊
よろしくお願い致します🙇