
はちみつ、黒糖、グラニュー糖で検証──3つの甘味料で作るパウンドケーキ比較実験 @グレーテルのかまど (元教授、定年退職922日目)
昭和のカルメ焼き、令和のかき氷・綿あめ──変わりゆく屋台スイーツ
昨日は、最近のお祭りについて綴らせていただきました。屋台の食べ物といえば、焼きそばやたこ焼きだけでなく、甘いものも数多くあります。昭和時代から続くチョコバナナやりんご飴、かき氷、綿あめなどがすぐに思い浮かびます。その中でも、最近はかき氷や綿あめに大きな進化が見られます。かき氷ではこだわりの果物系ソース、綿あめではユニークな形や色のデザインが目を引きます。一方、懐かしいものとしては、最近あまり見かけなくなった「カルメ焼き」があります。ザラメと重曹で作る、サクサクとした食感の昔懐かしいお菓子です。作り方は、まず銅製のお玉にザラメと水を入れ、中火で加熱します。小さなすりこぎで混ぜながら 125℃ 程度まで温め、火からおろして重曹を加え、さらによく混ぜると、プクッと膨らんでいくのです。簡単そうに見えますが、サクサクとした美味しい仕上がりにするのは意外に難しく、屋台のプロのようにはなかなかうまくいきません。学園祭などでは、化学部の生徒たちがよく作っていたのを思い出します。
<追記1> カルメ焼きが膨らむのは、重曹(炭酸水素ナトリウム) が加熱によって分解し、二酸化炭素を発生するためです。膨らんだ状態で冷えて固まると、内部に気泡が残り、軽石状の構造になります。作り方のポイントは、重曹を加えた後、しっかりと混ぜることだそうです。
<奥様追記: 私はカルメ焼きを見たことはありませんが、さだまさしの「木根川橋」(1979年) の歌詞に出てくるので「どんなものかなぁ」と思っていました>
『グレーテルのかまど』15 周年特番に学ぶ、甘味料の歴史とパウンドケーキ
先日、NHK『グレーテルのかまど』で「ヘンゼルのスイーツ!タイムトラベル」の回を視聴しました。今回は個別のエピソードではなく、番組が 15 周年を迎えたこともあり、過去に放送された古代から現代に至るスイーツと甘味料の歴史的変遷を振り返る内容でした。そして最後には、3種類の甘味料を使ってパウンドケーキを作り、味や仕上がりの違いを比較するという、通常回とは少し異なる展開でした。まずは、番組で紹介された甘味料の歴史を簡単にまとめてみます。(下写真もどうぞ)

甘さの起源をたどる
まず、砂糖が普及する以前の時代です。古代メソポタミアの「クック」というお菓子が、約 3800 年前の粘土板に記された世界初のレシピがありました。デーツ(ナツメヤシの実) やキャロブ(イナゴマメ)、はちみつが甘味源として使われていたようです。また、ローマ皇帝ネロが好んだとされる雪のデザートには、はちみつが使われていたと言われています。一方、唐の楊貴妃が愛したとされる杏仁豆腐には、杏仁の苦味を和らげるために水飴が加えられていたそうです。日本では、平安時代の甘葛(あまづら) が知られています。植物の樹液を煮詰めた甘味料で、清少納言は『枕草子』に、削り氷に甘葛をかけたものを記しています。また、義経と弁慶が求めたとされる麦芽あめは、蒸したもち米に麦芽を加え、時間をかけて糖化させることで作られました。(下写真もどうぞ)


甘い石の衝撃──インドから世界へ広がった砂糖の物語
一方、砂糖の起源はインドとされ、紀元前4世紀頃には、サトウキビから砂糖を作る技術が知られていたと言われています。蜂の力を借りずに葦のような植物から得られる「甘い石」、つまり砂糖は、歴史的には薬として扱われ、権力の象徴でもあったそうです(中国や日本に伝わった際にも、食べれば元気になれる貴重な薬として珍重されたそうです)。13 世紀、モンゴル帝国の皇帝フビライ・ハーンが愛した「シャリバ」という甘い飲み物も、貴重な薬のように医師や薬剤師が取り扱っていたそうです。16 世紀には、数々の予言で世界を驚かせたノストラダムスはもともと医師で、果物の砂糖漬けの製法についても研究していたそうです。また、甘いものが大好きだった皇帝ナポレオンは、大陸封鎖によってサトウキビ由来の砂糖が不足すると、てんさい糖の産業化を推進しました。これがヨーロッパにおける砂糖の大量生産につながったのです。当時は、戦争が代替甘味料の開発を促すきっかけになることもあったのですね。(下写真もどうぞ)

<追記2> 現代では、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファム K、スクラロースなどの合成(人工)甘味料も利用されています。これらは化学合成や分子構造の工夫によって生み出されたものです。興味深いことに、これらは実験室での研究中に偶然その甘さが発見されたという経緯があるようです。
甘味料を変えるとパウンドケーキはどう変わる?
番組では、進行役の俳優・瀬戸康史さん(今回は役作りのためか、髭を生やした姿でした)が、ナレーションを担当するキムラ緑子さんの指導のもと、3種類の甘味料(はちみつ、黒糖、グラニュー糖)でパウンドケーキを作り、その違いを比較しました。パウンドケーキの基本材料は、バター、小麦粉、卵、砂糖の4種類で、今回は各 100g を基準として比較していました。まず、はちみつを使ったケーキからです。柔らかくしたバターにはちみつを加えてよく混ぜ、そこに卵を少しずつ加えていきます。そして、生地の状態を見ながら、卵を加える途中で小麦粉も混ぜ込みました。その後、型に流し入れ、170℃ のオーブンで 50〜60 分焼き上げます。一見すると単純な工程ですが、使う甘味料によって生地の状態が変わり、焼き上がりにも大きな違いが生じたようです。(下写真もどうぞ)

パウンドケーキ比較実験で知る焼き上がりの秘密
今回の比較実験では、甘味料ごとの特性が、焼き上がりや食感に顕著な違いを生み出すことがわかりました。まず、グラニュー糖です。これは純度の高いショ糖の結晶で、バターと練り合わせる際に微細な気泡を取り込む働きがあります。そのため、焼き上がりは3種類の中で最も高く膨らみ、軽やかで「ふわふわ」とした食感になりました。次に、はちみつです。主成分は果糖とブドウ糖で、液状の甘味料であるため、グラニュー糖のようにバターに空気を抱き込ませる働きは期待しにくくなります。一方、糖の組成による高い保水性や吸湿性が特徴です。その結果、膨らみは控えめながら、水分を保持した「しっとり・重厚」な、密度のある生地に仕上がりました。瀬戸さんは、はちみつだけでは甘さや風味が物足りないのではないかと思っていたそうですが、実際には、はちみつの風味をしっかり感じられたそうです。そして、黒糖です。黒糖にはサトウキビ由来の糖蜜成分やミネラル分が含まれており、純粋なショ糖結晶とは性質が異なります。そのため、バターと混ぜた際の空気の抱え込み方や生地の状態にも違いが生まれました。黒糖特有の深いコクと香ばしい風味が加わったようで、他の2種類とは味がまったく異なっていたようです。こうして比較してみると、甘味料は生地の気泡形成や水分保持、焼き上がりの食感にも大きく関わっていることがわかりました。(タイトル写真、下写真もどうぞ:注1)

今回の番組では、お菓子作りに欠かせない甘味料の歴史を、古代から現代までたどっていました。瀬戸さんは、それぞれの時代に人々が甘さを追求し、さまざまな苦労や工夫を重ねてきたからこそ、現在の私たちは美味しいお菓子を楽しめるのだと実感したそうです。特に、今回の比較実験を通じて、その思いを一層強くしたようでした。それでは、また。
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注1:NHK『グレーテルのかまど』の特集「ヘンゼルのスイーツ!タイムトラベル」より