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今年の夏から秋、私が一番飲んだお茶の話──苦みゼロで甘く香る「加賀棒茶」の魅力と驚きのルーツ (元教授、定年退職 938日目)

    セールでポチった加賀棒茶に、金沢の奥深さを教わった

    今回は、この夏から秋にかけて我が家で大流行した「加賀棒茶」の話を綴ろうと思います。昨年の夏から、日本コカ・コーラ社の「やかんの麦茶」をよく購入していました。定年退職して家にいることが多いので、麦茶パックで煮出せばよいのですが、無精なのでアマゾンで箱買いしていたのです。味には大満足でしたし、先日 note でも取り上げたチビボトルも可愛くてお気に入りです。そんな折、アマゾンの大型セールで、以前に高級スーパーで衝動買いしたことのあるポッカサッポロ社の「加賀 棒ほうじ茶」を見つけました。その時は美味しかったものの、若干価格が高く、一度購入したきりでした。ところが、今回は箱買いでなんと 30〜50% 引き!「やかんの麦茶」と同じくらいの価格だったので、迷わずポチりました(現在は 8% 引きのようです)。(下写真もどうぞ)

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    昨年夏からの「やかんの麦茶」と今年の「加賀 棒ほうじ茶」


    『秘密のケンミンSHOW 極』で知った「加賀棒茶」のヒミツ

    改めて飲んでみると、やはり美味しいのです。浅煎りなので一般的な深煎りのほうじ茶より色が薄く、渋みも少ないのです。さらに、ほんのりとした甘みがあり、何より香りが素晴らしい。特に電子レンジで温めると、その香りが一段と際立ちます。そんなことを思っていたところ、読売テレビ『秘密のケンミンSHOW 極』で「加賀棒茶」の特集が放映されました。番組では、加賀棒茶の特徴や誕生の経緯、地元金沢の方々の声などが紹介され、私の知らないことばかりで興味深い内容でした。(下写真もどうぞ)

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    『秘密のケンミンSHOW極』で「加賀棒茶」の特集(注1)


    加賀棒茶を調べたら、青春時代の喫茶店につながった

    記事を書くにあたり少し調べてみると、驚くべき事実を発見しました。加賀棒茶を考案したのは三代目林屋新兵衛という方なのですが(後で詳しく)、その五代目が約 60 年前、京都の三条大橋付近に日本初の茶カフェ「喫茶京はやしや」をオープンしたのです(現在は、近くへ移転)。実は、私は大学一回生の頃、時々その店に通っていました。ただ、当時ハマっていたのは、残念ながら棒茶ではなく紅茶でした。2年ほど前の note にも書きましたが、友人から「紅茶は砂糖を入れない方が美味しい」と教わったのがこの店だったのです。アベック(当時はそう呼びました)や女性同士の客が多い中、部活で真っ黒に日焼けした男二、三人で紅茶を楽しんでいました。「緑茶に砂糖を入れないのなら、美味しい紅茶にも砂糖は不要」という謎の理論でしたが、実際に美味しく、それ以来、今でも美味しい紅茶はストレートで飲んでいます。


    金沢和菓子に最も合うお茶? マダムたちを虜にする「加賀棒茶」

    話を番組に戻します。まず、石川県民の方々の声ですが、金沢には独自のほうじ茶文化があり、金沢おでんや金沢カレー以上に誇りを持っているとのことでした。街で聞いてみると、サッカー少年団の水筒の中身も棒茶が多く、お稽古終わりのマダムたちは棒茶と金沢和菓子を堪能、夜の居酒屋でもウーロンハイや緑茶ハイではなく加賀棒茶ハイが人気でした。特にマダムたちは、甘みの強い金沢の伝統和菓子に対し、渋みが少なく軽やかな加賀棒茶は和菓子の風味を損なわず口の中をリセットしてくれると、うれしそうに語っていました。スーパーにも加賀棒茶がズラリと並び、店員によると日本茶の売り上げ上位5商品がすべて棒茶とのことでした。そのほか「渋みや雑味がなく、優しくまろやかで何杯でも飲める」「お茶屋ごとに味が違い、その違いを楽しむ文化がある」「かつてはお茶屋の御用聞きが日常的で、加賀棒茶が当たり前だった」など、地元の方々から絶賛の声が続きました。(下写真もどうぞ)

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    「加賀棒茶」は石川県民の誇りとのこと(注1)


    一般のほうじ茶とは何が違う? 渋くなく、甘く香る科学的理由

    一般的なほうじ茶と加賀棒茶には、「原料」「製法」「味・香り」に大きな違いがあります。一般的なほうじ茶は、主に番茶や二番茶以降の茶葉を原料とし、強火で焙煎する「深煎り」が多いため、濃い茶褐色や赤褐色になります。一方、加賀棒茶は一番茶(新茶)などの柔らかな「茶の茎(棒)」を主原料とし、遠赤外線などを利用して芯まで熱を通し、表面を焦がさずに仕上げる「浅煎り」が特徴です。そのため、淹れると濁りのない美しい琥珀色になり、渋みや苦みも少なくなります。その科学的な理由は、渋みのもとになるカテキンや苦味成分のカフェインが、葉に比べて茎に少ないことです。一方、甘みや旨味に関係するアミノ酸「テアニン」は茎に豊富に含まれています。その結果、熱湯で淹れても渋みや雑味が少なく、上品で柔らかな甘みが広がるのです。さらに、加賀棒茶には香ばしさと華やかな花のような香りが共存しています(追記参照)。(下写真もどうぞ)

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    番組では試飲会を開催し、その違いを実感(注1)

    <追記> 茎の焙煎によって生じる香ばしさの主成分「ピラジン類」は、葉のほうじ茶より多く含まれるといいます。また、浅煎りによって、ラベンダーやローズにも含まれる香気成分「リナロール」や「ゲラニオール」が生かされ、焦げ臭さの少ない甘く華やかな香りが生まれるそうです。


    なぜ茶どころではない石川県で名茶が生まれたのか?

    番組では、加賀棒茶の歴史も紹介されました。というのも、石川県の茶葉生産量は全国でも最下位レベルだからです。なぜ、そんな土地で名茶が生まれたのでしょうか。その答えは、製茶工程で生じる副産物「茶の茎」の有効利用にありました。明治期、日本の緑茶は主要な輸出品で、良質な茶葉は主に海外へ出荷され、庶民には手が届きにくかったそうです。そこで明治 35 年頃、金沢の茶商・三代目林屋新兵衛(前出) が、それまで利用価値が低かった茎を焙煎し、安価な日常茶として生まれ変わらせました。これが加賀棒茶の起源とされています。しかも新兵衛は、この製法を独占せず同業者に公開したのです。そのため加賀地方の茶商たちが独自の焙煎技術を競い合い、金沢ならではのお茶文化が育まれました。こうして、石川県民の質実な気風とも相まって、地域の日常茶として定着したのです。(タイトル写真、下写真もどうぞ:注1)

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    茶どころではない石川県で、茎を使った名茶が(注1)
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    三代目林屋新兵衛さんの功績。そして、高級ブランドへ(注1)


    「加賀棒茶」はいかにして高級ブランドへ上り詰めたか

    昭和 58 年、昭和天皇が石川県を訪問された際、高齢の天皇にも負担の少ない、刺激の少ない最上級のほうじ茶を用意してほしいという要請がありました。そこで選ばれたのが、浅煎りの加賀棒茶だったそうです。天皇はその芳香と澄んだ味わいを大変気に入られ、残った茶葉を東京へ持ち帰ることを希望されたといいます。これをきっかけに「献上加賀棒茶」として一般商品化され、全国の百貨店や高級料亭にも広がりました。そして、加賀棒茶全体のブランドイメージを大きく高めたのです。(上写真もどうぞ)


    いやはや、加賀棒茶には、他のお茶にはない特徴と奥深い歴史があったのですね。さすが加賀百万石です。これまで金沢には何度も訪れましたが、ラーメンやゴーゴーカレー、ハントンライスなど、B 級グルメばかり楽しんでいました。今思えば、お茶屋さんこそ巡るべきでしたね。それでは、また。


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    注1:読売テレビ『秘密のケンミンSHOW極』の特集「加賀棒茶」より

     
     
    長らく勤めていた大学を2024年春定年退職しました。これまで研究に明け暮れ、それ以外全てを二の次にしてきた元教授が、世の中を体験していく様子をお伝えします。新しい発見や楽しい出来事の一方で、頭を抱えて戸惑うポンコツな瞬間もあることでしょう。彼の新たな冒険の日々をお楽しみください。

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