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⭐️きゅうりさんの、【初企画】🎃 あなたのキャラは、ハロウィンの夜に何を見る?|短編ハロウィンゲート⑤

    この企画に参加しました。
    きゅうりさん、ありがとうございます。


    ハロウィンゲート⑤

    私は食堂車が初めてだった。
    しかも、猫として歩いている。
    青い絨毯に足をそっと置いた。
    向こうから、白い制服のウエイターが早足でやって来た。
    茶トラの猫と私を器用に避けて、ウエイターは通り過ぎていった。

    端から2番目の二人がけのテーブルが空いている。
    茶トラの猫は、私が座るのを待ってからテーブルについた。
    なかなかの紳士である。
    私はというと、どうも尻が落ち着かない。
    椅子の上で、くるくると回ってしまう。
    自分では、じっとしていたいのだが、すぐに立ち上がり回っている。
    「あはは、尻尾が気になるんだね」
    私は茶トラの猫に笑われてしまった。
    楽しくて、私の尻尾がプイと上がってしまうのだ。
    茶トラの猫は、それは愛おしそうに、行儀の悪い私を見つめる。

    私がきちんと座れたら、
    「いらっしゃいませ、ジャスパー様」
    ウエイターがさっと現れた。
    顔がモグラで、体が人間だった。
    丸くて黒い眼鏡をかけている。
    「やぁ、トム、久しぶりだね」
    茶トラの猫が声をかけた。
    「はい」
    トムと呼ばれた、ウエイターは返事をし、茶トラの猫にメニューの説明を始めた。
    「軽食、でよろしいですか?」
    「うん、そのつもりなんだ」
    「では、今日は、ハロウィンチョコパフェと、カボチャタルトの二つのご用意です」
    茶トラの猫は私を見て
    「チョコパフェ?」
    と私に聞いた。
    私はそっぽを向いて、違うと教えた。
    茶トラの猫はニヤリとしてから
    「カボチャタルト、二つ」
    とトムに言った。
    「お飲み物は?」
    「そうだなぁ、タピオカミルクがいいな」
    茶トラの猫が私に目で問いかける。
    私は「ニャー」と鳴いた。
    タピオカミルクを飲んでみたいと思った。
    けれど、私の猫語は伝わらないようで、茶トラの猫は困った顔をしていた。
    トムは、注文をメモしながら、
    「ジャスパー様、良かったですね。待った甲斐が、ありましたね」
    「うん」
    ジャスパーは軽く頷いた。
    私は、それが自分のことだとすぐにわかった。
    きっと、ジャスパーは、何年も私を探しに来ていたのだ。
    そして、その度に、一人で食堂車でデザートを食べ、帰っていたに違いない。
    「カボチャタルト、タピオカミルク二つずつですね。かしこまりました」
    トムが注文を確かめた。

    トムが行ってしまうと、
    「ボク、ジャスパーって言うんだよ」
    茶トラの猫は得意げに私を見た。
    私は、じゃすぱあぁ、と口の中で繰り返した。
    なんだか、耳が熱くなった。
    カッコいいと思う。
    「言ってみて、ね、ボクの名前は?」
    ジャスパーが目を据えて私を見る。
    私は、ニャーとしか言えないのになぁ、と思いながら、口を開いた。
    「ジャスパーァ」
    私のコトバが出てきた。
    「ほら、話せた」
    ジャスパーは嬉しそうにテーブルをポンと叩いた。
    「キミはボクを、好きだってことだね、完全に」
    ジャスパーは何度も立ち上がっては、座り直していた。
    「キミの猫語はやめた方がいい。どうも、危なっかしいよ」
    そして、前屈みに座って
    「てっきり、キミはチョコパフェだと思ったよ」
    と私に言った。
    私は肉球を鼻に当て、ムフフと笑い、
    「だって、さ、こぼしそうだから」
    と正直に言った。
    素敵な食堂車は、私の憧れだ。
    白いテーブルクロスを汚したくなかった。
    「あー、猫になって慣れないから、失敗すると思ったんだぁ」
    茶トラの猫は顎をあげ、ニャーと鳴いて、笑った。

    (つづく)


     
     
    初めまして。 4コマ漫画「万作さん」や「万作劇場」、エッセイ・物語、俳句などを投稿しています。 エッセイ、漫画、小説で、味わいの違う作品が並んでいます。気分に合わせて、お好きな時間をお過ごしください。 よろしくお願いいたします。