
⭐️きゅうりさんの、【初企画】🎃 あなたのキャラは、ハロウィンの夜に何を見る?|短編ハロウィンゲート⑦最終回
ライブ会場の人をかきわけて、出口へ向かった。
ジャスパーに会いたい。
きっと、ハロウィンゲートへ間に合う。
扉を押して、階段を登っていく。
もうすぐ、出口だ。そこには、黒ピエロの衣装を着た、小太りの男が立っているはずだ。そして、その男がたくさんのチョコが入った器を私に差し出す。私は素直にそのチョコをもらうだけでいい。
「ちょっと、ごめんねぇ、とおりまぁーす」
厚底の靴を履いたカップルが階段を降りてくる。
私は壁際に背をつけて、道を譲った。
それから、私はゆっくりと一段ずつ登り、外に出た。
チョコの器を持つ、黒ピエロの姿がない。
私は出口を行ったり来たりした。黒ピエロからチョコがもらえないと、銀色の包み紙がないことになる。ジャスパーの言っていた切符がない。
フェスに参加する客たちが、会場へ入っていく。
その中の一人が、私を指差した。
「みて、あれ、ラリってるんじゃない?」
「しっ、見ちゃダメだよ」
「やばっ」
笑い声が聞こえた。
私は空を見上げる。
「いい時なんか、一瞬だな」
もう戻れないと思うと、体から力が抜けた。
それだから、歩き出して、すぐに転んでしまった。
ひどく、横顔を石畳に擦る。
「あ、いたーっ」
私は地面に手をついたまま跪いていた。
「だいじょうぶですか?」
会場の警備の人だろう。反射ベストを着ていた。彼は私の腕をひいて、立ち上がるよう促した。
そして、街灯の下で私の顔の傷を見て驚いていた。
「わーぁ、血が出てるよ」
彼はポケットからハンカチを取り出した。同時に、彼のポケットから、ゴミが落ちた。
私は、差し出されたハンカチは受け取らずに、落ちたゴミに飛びついた。
彼は、私を気味悪く思ったらしい。そのまま、何も言わずに去って行った。
彼のポケットから落ちたのは、銀色のチョコの包み紙だった。
私は手の中を見る。
拾ったのは、やはり、あの銀色のチョコの包み紙だった。
これがあれば、ハロウィンゲートへ行ける。
それからの私は、勘を頼りに夜の街を歩いた。
でも、どこまで行っても、秋風が寂しげに吹くだけだった。
そうだ、この包み紙を風に飛ばすんだった、蝶の羽にしなくちゃ、と私は苦笑し、包み紙を持っていた手を開いた。
ところが、私の手の中に、銀色の包み紙はなかった。
代わりに、私の掌にあったのは、銀色のボールピアスだった。
それは、対になっていて、普通よりずっと華奢に見えた。
私は笑った。
どんなに歩きまわっても、霧は出てこない。
もう、ハロウィンゲートは閉まったのだ。
私は片耳をそっと触ってみる。
少し、痛い。
私の耳にはジャスパーの噛んだ牙の痕が二つある。
確かにある。
私は、ニヤリとした。
私とジャスパーは夢ではないのだ。
私はこの銀色のピアスをジャスパーの牙の痕に通すことにした。
きっと、これはハロウィンゲートの切符だから。
ジャスパーが私を見つけてくれるまで。
ジャスパー。
終わり
※きゅうりさんの企画、参加させていただきました。ありがとうございます。お付き合いくださって、感謝しております。
きゅうりさんの企画がきっかけで短編を書くことができました。ありがとうございました。