
7歳が教えてくれたこと
7歳の息子がいる。
彼が生まれたときのこと。
ふにゃふにゃで目も開ききらないわが子を見て、わたしは思った。
「この子に、世界中の美しいものを見せてあげたい」
あなたが生まれたこの世界には、美しいものがたくさんある。
まだ病院の明かりしか知らないあなたに、空の青さを見せてあげたい。
山も、川も、人が織り成す造形美も、たくさん見せてあげるからねと、心の中でつぶやいたのを覚えている。
あれから7年。
美しいものを見せてくれたのは、息子のほうだった。
きれいなどんぐりを見つけたときの、あなたの目の輝き。
たんぽぽの綿毛を吹き飛ばすはずが吸い込んじゃったあなたの顔。
幼稚園にお迎えに行ったときのとびきりの笑顔。
小学校にひとりで歩いて行けるようになった後ろ姿。
わが子を通して見る世界に、わたしは何度も目を奪われ、胸を打たれてきた。
息子が4歳のとき。
わたしは新卒から入社していた会社を辞めた。
大手証券会社の正社員という、条件の良い仕事だった。
同期が華々しく出世していく中、自分はキャリアを築く道からひとり降りた。
家にいたって、誰からも評価されず、褒められもしない。
お金を生み出さない自分には価値がないようにさえ思われた。
でも今、わたしはこうして美しいものを見る日々を送っている。
小学校1年生、初めて漢字を習い、わくわくした顔で宿題をする息子。
ドッジボールで当たってないのに「アウト」と言われ、悔し涙をこらえる横顔。
それをこうしてnoteに残せるのは、本当にまれな幸福だと思う。
息子を見つめる時間と、noteを書く時間、その両方がなければ実現しなかったことだ。
わたしはキャリアを残せなかった。
大学まで出してもらったのに、なにも成しえなかった。
ただ、部屋の片すみでひとり幸福にnoteを書いている。
今日もそれが、ひっそりと嬉しい。