
魔法をかけてよ
はあ……
鏡を見てため息をつくのは、もう何度目だろう。
自分の気に入らない部分って、すごく目につく。
たとえば、頬のあたりとか、目の感じとか。
お腹まわりだってほら、こんなんだし。
ちょっと前までは、そんなに悪くなかったんだけどな。
どうしちゃったんだろう。魔女に呪いでもかけられた?
ものすごくひいき目に見れば、犬顔に見えなくもない。でも……そうじゃない。それじゃ全然ダメ。
みんなに「かわいい♡」と言われている、あの子のことが頭に浮かぶ。あんなふうに、なりたかったんだけどなぁ。
修正メイクでも、どうにもしようがない。
もうこうなったら、アレしかないかな……。
「では、これから麻酔をかけますからね」
先生の陶器のような声に導かれて、最後の扉を閉じるようにまぶたをとじた。憧れのあの子と、今の私の姿が目の裏側で激しく明滅する。もう引き返せない。
私は、深く息を吸った。
これでようやくハムスターになれる……


え?これって…
この、ヤブ医者があ!!
「ちょっとこれ、全然変わってなくない!?」
私は鏡に写ったじぶんの姿を見て、すかさず鋭い針先のような声で、先生に詰め寄ってしまった。
「えっ、えっとお……。そんなことはないと思うのですが。ほ、ほら、頬のあたりとか、お腹周りとか、ふっくらしたでしょ?もう、シリコン入れたり、ヒアルロン酸注入したり、8時間もかかって大変だったんだから」
先生はあわてふためき、陶器のような声にわずかなヒビが入る。その隙間からじわじわと染み出してくるのは、きっと私の後悔だ。
「ハムスターになれるって。言ってたじゃないですか!!」
こんなんじゃだめだ、こんなんじゃだめなんだから。
私はぼろぼろと涙をこぼし、先生は割れ目からボロボロと崩れ始め、瓦礫になる。先生は、ギョロギョロ血走しった目を動かしたあと、ギュっと閉じた。ごくり、つばを飲み込む音とともに、……あの方に頼みましょう。かすれた声で告げた。
あの方?
あのお方は、大門未知子のように颯爽と現れ、私をちらりと見て言った。
「うさぎ?耳、長くない?」
瓦礫になった先生が、なにやら未知子にごにょごにょと言っている。
「はぁ、まぁやってみてもいいけど」
どうでもよさそうに、私をむんずと掴んだかと思うと、未知子はニードルをキラリと光らせ、ものすごく雑にザックザックと針を突き立ててきた。
イタタタ!ちょっと!何やってるのよ!
「はい、終わり」
放るように私を、瓦礫先生のところに転がす。
乱暴な未知子は、もう私ではなくテレビを観ていた。

「わぁ!耳が可愛くなってる」
「てかさ、そもそも体細すぎだよね、これ」
瓦礫先生の嬉しそうな声が聴こえる。
……成功したってこと?転がったままの私と、目が合った未知子がにやりとして言った。
「私、失敗しないので」
大好きな関谷レインボーさんが、少し前に羊毛フェルトの記事をあげていて、DAISOでキットがあることを知りました。
以前から一度はやってみたかった羊毛フェルト。絶対に年末年始にやろうと思っていました。
途中までは「もしかしたら、私センスあるかも」なんて思っていたのですが、出来上がってみたらイマイチで。
あちこちフェルトを足しながらチクチク修正しているうちに、なんだか天才外科医にでもなった気分です。
私、失敗だったけど。
同じ初心者のはずの娘が、適当にやっていても上手にできていたので、耳を修正をしてもらいました。
私が8時間かけたものを、ものの5分で直せるって……やはりこれはセンスが必要とされるのでしょうかね。
羊毛フェルトは難しいんだなぁ。
【参考資料】
憧れは、急に考え出すおばさんが溺愛しているぽんぽこちゃん(リアルハムスター)
ハムスターを飼うかわりに、ハムスターを作りたかったの