
私はスタッフの人生の時間を預かっていると思っていた
経営者になってから、ずっと心のどこかで思っていたことがある。
それは、
私はスタッフの人生の時間を預かっている。
ということだ。
今振り返ると、
少し大げさなのかもしれない。
傲慢だったのかもしれない。
でも、本気でそう思っていた。
人は人生の限られた時間を使って働く。
当たり前のことだ。
でも経営者になってから、その重みを強く感じるようになった。
例えば20代のスタッフ。
人生の中でも特に変化が大きい時期だと思う。
社会人として成長し、
仕事を覚え、
価値観を作っていく。
その貴重な数年間を、
私たちの組織で過ごしてくれている。
子育て中のスタッフもいる。
家族との時間を調整しながら働いている。
限られた時間を職場に使ってくれている。
ベテランスタッフもいる。
長年積み上げてきた経験を持ちながら、
人生の一部をこの組織に預けてくれている。
そう考えると、
その時間に意味があってほしいと思った。
ただ働いて終わるだけではなく。
ただ給料をもらって終わるだけではなく。
ここで働いた時間が、
その人の人生にとってプラスになってほしいと思った。
だから学んでほしいと思った。
成長してほしいと思った。
挑戦してほしいと思った。
未来の選択肢を増やしてほしいと思った。
それは組織のためでもある。
でも、それだけではなかった。
その人自身のためでもあった。
しかし最近、
考えさせられることが増えた。
私は本当に、
相手が望んでいることを見ていたのだろうか。
私は
「成長してほしい」
と思っていた。
でも相手は
「安心して働きたい」
と思っていたかもしれない。
私は
「未来を考えてほしい」
と思っていた。
でも相手は
「今日を乗り越えるだけで精一杯」
だったかもしれない。
私は
「学んでほしい」
と思っていた。
でも相手には
「負荷をかけられている」
ように見えたかもしれない。
その時初めて気づいた。
私が見ていたのは未来だった。
相手が見ていたのは今だった。
どちらが正しいという話ではない。
見ている景色が違っただけなのだと思う。
そしてもう一つ。
私はいつの間にか、
組織を守ることと、
人を守ることを同じだと思っていた。
組織が成長すれば、
みんなが幸せになると思っていた。
組織が変化すれば、
みんなの未来も良くなると思っていた。
でも現実はそんなに単純ではない。
変化を望む人もいる。
安定を望む人もいる。
挑戦したい人もいる。
今のままでいたい人もいる。
同じ組織にいても、
人生の優先順位はそれぞれ違う。
だから最近は、
少し考え方が変わった。
私はスタッフの人生を預かっているわけではない。
預かれるほど人生は軽くない。
でも、
人生の一部の時間を預かっている。
それは間違いないと思う。
だからこそ、
その時間を大切にしたい。
成長を強制するのではなく。
価値観を押し付けるのでもなく。
この組織で過ごした時間が、
その人の人生にとって意味のあるものだったと思えるように。
そのために何ができるのか。
最近の私は、
以前よりもその問いを考えるようになった。
経営とは、
売上を作ることでも、
組織を大きくすることでもなく、
誰かの人生の時間と向き合うことなのかもしれない。
そしてその責任の重さに、
時々押し潰されそうになりながら、
それでも考え続けている。