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「敬老の日の大失敗。私のピアノで、おじいさんをあやうく天国へ送りかけた話(10月9日)」

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    こんにちは、ピアニストのMIYABIです。

    今日は、あなたに、私がある老人介護ホームの『敬老の日イベント』に招かれた時のこと。

    良かれと思って「全力」を尽くした結果、冷や汗をかくほどの大失敗(?)をしてしまった、忘れられないエピソードをお話しさせてください。


    30分にかけた情熱と、チカラの入りまくった私

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    その日、ホームの多目的室には、午後のゆったりとした空気が流れていました。

    車椅子でふらりと立ち寄る方がいたり、一曲だけ聴いて部屋に戻る方がいたりと、出入り自由の気楽な音楽空間です。
    しかし、演奏する私の方は、人知れず並々ならぬ闘志を燃やしていました。

    ご高齢の皆様の体力を考慮して、プログラムは「30分×2公演」という短期決戦。

    だからこそ、一音たりとも無駄にはできない。

    しかも、この2公演の「大トリ」を飾るのは、私がこだわり抜いた『大きな古時計』と『ふるさと』のメドレーだったのです。


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    気がつけば、私の指先にはこれでもかと「チカラ」が入りまくっていました。

    「皆様の歩んできた大切な時間と、懐かしい故郷に想いを馳せてお聴きください」

    張り詰めた気合いとともに鍵盤に指を置き、まずは『大きな古時計』を奏で始めました。

    100年という長い歳月を家族と生きた物語。

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    一音一音にこれ以上ないほどの情緒を込め、ドラマチックに、魂のすべてをぶつけるように弾き進めていきました。

    多目的室の空気が、ガラリと変わるのが分かります。

    皆様は歌詞カードをじっと見つめながら、私の熱量に引っ張られるように、静かに、優しく歌声を重ねてくださいました。

    そして曲はクライマックスへ。

    おじいさんが天国へとのぼっていき、チクタクと刻んでいた時計が静かに鳴り止む、あの切ない「昇天」のくだりです。

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    私はすべての感情を鍵盤にのせ、美しくも壮大な旅立ちの情景を完璧に演出しました。

    間髪入れずに、大トリの締めくくりである『ふるさと』のイントロへ。

    瑞々しい前奏が響いた瞬間、客席のそこかしこから、小さなどよめきとかすかなすすり泣きが聞こえてきました。

    「うさぎ追いし かの山……」

    涙ぐみながら声を震わせる方。
    隣同士でそっと手を握り合う方。

    きっと皆様の脳裏には、子どもの頃に走り回った野山や、人生の走馬灯が鮮やかに駆け巡ったことでしょう。

    私の「チカラの入りまくった」演奏が、皆様の心をあの温かい時代へとタイムトラベルさせた、確かな手ごたえがありました。


    温和なおじいさんの、粋すぎるツッコミ

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    2公演とも大成功。

    鳴り響く大きな拍手に包まれ、全精力を使い果たした私がホッと胸をなでおろした、その時でした。

    お見送りをする私の元へ、一人の温和そうなおじいさんが、悪戯っぽい笑みを浮かべてトコトコと近づいてきたのです。

    そして、私の耳元で楽しそうにこう囁きました。

    「先生、今日の演奏は魂がこもっていて本当に素晴らしかったよ。……ただね、あんまり情緒たっぷりに引き込まれるもんだから、僕、あやうく一緒に天国へ行きかけちゃったよ!」

    (実は私、この『先生』と呼ばれる響きに、なんだかいつまでも落ち着かない、照れくさい気持ちになってしまうのですが、この時ばかりはそんな気恥ずかしさも一瞬で吹き飛びました……。)


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    (敬老の日に、お年寄りを"天国送り"しそうになったみやびさん。)


    ――ハッとしました。

    あなたも、ご存じの通り、『大きな古時計』の後半には「天国へのぼってゆくおじいさん」という歌詞があります。

    お年寄りの長寿と健康をお祝いする「敬老の日」の大トリで、

    私はその結末を深く確かめないまま、全力のエネルギーを注いで、おじいさんの「天国への旅立ち」を大感動巨編として演出しきってしまっていたのです……!


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    自分のうっかりと、あまりの熱演ぶりに、顔から火が出るほど恥ずかしくなりました。

    でも、おじいさんは私の手を優しく握り、声を立てて笑ってくれたのです。

    その笑顔は、「それほど引き込まれる良い演奏だったよ」という、何より温かいメッセージでした。

    おじいさんの粋なツッコミのおかげで、張り詰めていた私の肩のチカラも抜け、多目的室は最後、最高に温かい笑い声で包まれました。


    100年の時を刻む、現世(ここ)のメロディ

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    音楽は時として、人の心を天国のように美しい思い出の世界へと連れて行ってくれます。

    でも、演奏が終わったあとに待っているのは、こんなにも愛おしい「笑顔の現実」なのだと、あのおじいさんに教えてもらいました。

    この『大きな古時計』、
    実は俳句の世界では「時計」自体は季語ではないのですが、この曲の持つ切なさや、人生の終盤を思わせる物語性から、私たちはどうしても「寂しい秋の暮れ」や「しんしんと冷える冬の夜」の季節感を抱いてしまいます。

    だからこそ、あの時も皆様の胸に、より深く響いたのかもしれません。
    というわけで、あの日の大反省を胸に、今日の私はバッチリです!(笑)

    「あなたを、どこにも行かせません。」

    しっかりこの場所に足を引っ張りとどめておくような、でもあの日と同じくらい、魂を込めた温かい音色をお届けします。
    心を込めて。

    どうぞお聴きください。



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    最後までお読みいただき、そしてお聴きくださりありがとうございました。

    あなたの心に、温かい時間がお届け出たら幸いです。

    今日も、良い一日になりますように。
    (🎹MIYABI)

     
     
    音楽と言葉で、気付きと癒しをお届けしたい。 Pianistみやび & Violinistえみりん。 プロフィールもお読みくださいね。

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