
アンとコエのイロ 8話:できない ボタン













あとがき
このお話を書こうと思ったのは、
「できへん」
という言葉は、思っているより、ずっと言いにくい言葉かもしれへんな、と感じたからです。
大人にとっては、小さなボタンひとつ。
けれど、子どもにとっては、そのボタンが、とても大きな壁になることがあります。
うしろでだれかが待っている。
となりの子が先にできる。
「まだ?」という声が聞こえる。
そんなとき、できないことよりも、
「できない自分を見られること」
のほうが、こわくなるのかもしれません。
できるようになることは、うれしいことです。
何度も練習することも、大切です。
でも、その前に、
「できへん」
「手伝って」
「ちょっと待って」
と言える場所があってほしい。
そして、その言葉を聞いた人が、急かさず、笑わず、
「そっか。むずかしいんやな」
と受け止めてくれたらと思います。
ちなみにアンは、ボタンをとめられません。
前足ですから。
バンダナも、だれかに結んでもらっています。
それでも、アンは毎日、えらそうにアンそうりをしています。
できないことがあっても、助けてもらいながら、ちゃんと暮らしていける。
この絵本を読んだ子が、ボタンの前で困ったとき、
「これは、アンそうりに相談するやつやな」
と、ほんの少し笑ってくれたらうれしいです。
ボタンがとまらない日もあります。
心のボタンが外れない日もあります。
そんな日は、できないまま、だれかのそばへ行ってもいい。
このお話が、その小さな一歩のとなりに座れますように。
読んでくれて、ほんまにありがとう。
柴犬アン
