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七月三十二日|風まかせ文芸部

    四十九日を迎える祖父の部屋。

    壁に日めくりカレンダーがかかっている。六月十四日で、止まっている。

    最後のお別れに、と一枚ずつ剥がしていった。
    たくさんの思い出と、少しの後悔を感じながら。

    三十一日をめくろうとして、手が止まった。

    紙が、少し厚い。

    丁寧にめくってみた。

    三十一日のその下に、もう一枚あった。
    印刷ではない。祖父の字で、書いてある。

     七月三十二日

    日付の下に、小さく、こう書いてあった。

     みつると、釣り

    ——私のことだ。

    思い出した。
    年明けの頃から、「今年の夏、釣りに連れて行ってやる」と言われていた。
    私は、曖昧な返事で流していた。「そうだね」と繰り返した。

    祖父は、待っていたのだ。

    古い世代の祖父には、八月は立秋の月、旧盆の月。
    「今年の夏」にこだわりたかったのだろう。
    ひょっとしたら、予感めいたものもあったのかもしれない。

    私は、カレンダーをそのままにして部屋を出た。

    次に来るときは、竿を持ってこよう。
    それまでは、日めくりはそのままに。






    iさんの風まかせ文芸部に参加します。



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