
待ち合わせ|せりふ三題噺
駅前の広場で、私は彼を待っていた。
時計を見ると、6時20分。
約束の時間をとっくに過ぎている。
口から出る息が白い。
寒い。
足元のコンクリートも冷え切っている。
「足が冷たいんだよ」
独り、私は呟いた。
スマホを見る。
彼からのメッセージはない。
6時30分。
目の前をネクタイ姿の男性たちが通り過ぎていく。
仕事帰りだろう。
「ちょっと遅れるかも」
彼の昨日のメッセージを思い出す。
仕事ならば仕方ない。
7時。
足の感覚がなくなってきた。
「ねぇ、足が冷たいんだよ」
スマホが鳴った。
彼からだ。
「ごめん、今日は行けなくなった」
ひとことだけ。
私は、返信しようとして、やめた。
広場を歩き出す。
コートの襟を立てる。
足早に歩く。
体は少しも温まらない。
家に帰って、靴を脱ぐ。
冷えた足先は真っ赤になっている。
冷たすぎて、痛い。
「次は必ず」
彼はいつもそう言う。
けれど、その「次」は来ない。
湯舟にお湯が溜まるのを待ちきれずに、お湯を沸かして、足を浸した。
つま先から、少しずつ温かくなる。
部屋の中でつく溜め息は白くはなかった。
けれど、足湯の温かさはいつまでたっても体の芯には届かなかった。
はらとけいさんのせりふ三題噺に参加させていただきます。
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