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金木犀|風まかせ文芸部

    「この匂い、なあに?」

    散歩の途中、三歳の娘が聞いてきた。

    「金木犀だよ」
    「きんもくせい?」

    どこに、あるのか、探すことになった。

    我が家の庭には、金木犀は、ない。
    植木越しに見た家のトイレの窓が開いている。

    ——芳香剤、というオチは、勘弁してほしいなぁ。

    娘と匂いをたどる。
    こっち、あっち。鼻を頼りに。

    ——やっと、見つけた。隣家の庭先。

    オレンジ色の小さな花。

    「ちいさい! でも、良い匂い」

    こんなに、小さいのに。

    金木犀の香りは、たった、二日で、消えるのだそうだ。そのことを、娘にも話した。二人で、深呼吸をして、吸い込んだ。

    ——あっ、この香り。

    トイレの芳香剤以外にも、よみがえる記憶がある。

    昔、彼女がつけていた。香水の匂いだ。

    娘は、その日から、金木犀を探す名人になった。

    大きくなった娘が、金木犀の香水を、つけるようになったら……。

    私は、少し複雑な思いの、この頃だ。





    iさんの風まかせ文芸部に参加します。



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