
掌編小説 月を飼う
月を見る僕の前に君は水槽を置いた。「これで月を飼うの」と。見ると水面にはゆらゆらと小ぶりな月が映し出されている。君は飽きることなくそれを眺めていたね。空には本物の月がぽっかりと浮かんでいるというのに。その姿が何ともエロティックで危うくて僕は思わず息を飲んだ。大事にしてねと月を残して立ち去ってしまった君。そして朝目覚めると水槽と僕の2人きり。窓の外に水を捨てる。あの日から君の亡霊をずっと追いかけてるんだ。本物にはもう会えないから。あの日水面に映った虚像の月を見つめるように君のありもしない姿を追いかけてしまうんだ。僕はまだその先には行けない。さようなら。最後の恋人。僕は僕なりのスピードで君に必ず追いつくから。
ポルノグラフィティの「月飼い」という曲をイメージして書きました
こちらの企画に参加させていただいております。