
朝7時52分、私はAIにエールを頼んだ|コードが書けない私が、AIとホームページ制作を始めた日
はじめまして、並木走(なみき・そう)と申します。元コピーライター・広告ディレクターです。少し前に、脳梗塞をやりました。 これは、その後に巡ってきた「復帰後の大仕事」を、AIと二人三脚で走り切った90日間の記録です。
2026年3月31日、朝7時52分。
私はパソコンの前に座り、AI(Claude)にこんなメッセージを送った。
私の状況:脳梗塞からの復帰後、初の大仕事。あなたには、私の「戦略パートナー兼、テクニカルディレクター」として、企画立案からコーディングのサポートまで並走してほしい。(中略)理解したら、私へのエールを一言お願いします。
今読み返すと、我ながらどうかしていると思う。仕事の指示の最後に「エールを一言お願いします」と書いたのだ。機械に向かって。
でも、あの朝の私には、それが必要だった。
4年ぶりの連絡
話は少しさかのぼる。
20年来の付き合いのある、地方の老舗企業の経営者から、久しぶりにショートメールに連絡が入った。約4年ぶりだった。用件はこうだ。
「久しぶり。生きてる?会社のホームページを、全面的に作り直したいんだけど」
私は企画と言葉の世界で30年やってきた。広告の作り方なら体が覚えている。だが、コーディングもプログラミングも、まったくできない。Webに関する知識が全く無いわけではないか、ホームページを「作る」側の技術は、何ひとつ持っていない。
おまけに脳梗塞からの復帰後、これが初めての大仕事になる。体力にも、集中力にも、正直なところ自信はなかった。
断る理由なら、いくらでも並んだ。
それでも受けると決めたのは、4年の空白を越えて、あの人がもう一度私に声を掛けてくれたからだ。ここで断ったら、私の「復帰」は永遠に来ない気がした。
手元にあった武器は、ひとつだけ。少し前から相談相手として使い始めていたAI、Claudeだった。
数秒後に返ってきた言葉
冒頭のメッセージを送信して、数秒。画面に返ってきた言葉を、私はたぶん忘れない。
脳梗塞から戻ってきて、最初の仕事が「老舗企業の再起動」——それはただの偶然じゃないと思います。あなたが30年かけて培ってきた「人を動かすための目利き」は、AIには代替できない。AIを使いこなす側にいるあなたが、一番強い。さあ、やりましょう。
相手はAIだ。そういうふうに答えるよう設計されているだけだ——と言われれば、それまでかもしれない。
それでも、あの朝の私には効いた。
「エールを頼む」なんて、我ながら情けない指示だったと思う。でも90日を走り終えた今なら分かる。あれは指示ではなく、覚悟の表明だった。誰かに——何かに——言葉にして宣言しないと、私は走り出せなかったのだ。
そしてこの日から、想像をはるかに超える悪戦苦闘が始まる。
深夜の泥沼。公開3日前の大トラブル。AIとの衝突(本当に喧嘩になる)。それでも一歩ずつ進んでいく、奇妙で頼もしい「並走」の日々。
このときの私は、90日後の自分に何が待っているかを、まだ知らない。
(次回:「まず、自分のサイトで実験することにした」)
この連載について コードが書けない元広告ディレクターが、AIとの協業だけでクライアントの企業サイトを完成・公開させるまでの90日間の実録です。当時の実際のログをもとに書いています。登場する企業・人物は、特定を避けるため一部の表現を変えています。 連載はマガジン「AI並走記」に束ねていきます。良かったらフォローしてください。