
あれから10年経ちました|青ブラ文学部
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十年前の嘘が解かれるとき、抜いても抜いても生えてくるものがある

放課後の縁側は、古い木材が吸い込んだ埃と、少しだけ湿った土の匂いがした。
わたしたちは鞄を下ろし、庭の草を一本ずつ摘んでは、茎をくるくる回す。名前は知らない。わたしは根元から雑に折るが、莉子はいつも先端の柔らかいところだけをそっとつまむ。鞄から消しゴムやプリントをよく落とす手なのに、草に触れるときだけは別人みたいに丁寧だった。
「この草、抜いても抜いても生えてくるよね」
「ほんとだ」
調べなくても、明日も同じように生えてくる。それで十分だった。
あの日までは。
縁側の裏手で、古い段ボールが燃えた。わたしたちの、ほんの小さな火遊びだった。干し草の焦げる匂いが一気に広がって、大人たちが駆けつけたとき、わたしは振り向いて、震える指で隣の親友を指差した。
「莉子ちゃんが、やったの」
莉子は目を丸くして、手の中の草を落とした。

九年前の、春の終わり。
ボヤ騒ぎの汚名を着せられた莉子の家族は、狭い町の容赦ない噂に追われるように街を出ることになった。最後の日、莉子は縁側にいた。手に草を一本、持っていた。
(ごめん)
喉の奥がきゅっと縮んだ。鞄の持ち手を握る指は、血の気が引いて白かった。振り返ったら全部が壊れる気がして、苔生した石灯籠だけを見ていた。
縁側には、すべてを奪われた莉子だけが残った。

現在、二十五歳。
タータンチェックのベストを着こなし、アパレル店の店長として毎日を回している。過去は喉の奥に押し込んだ。誰に対しても愛想よく笑う術を、この十年で身につけた。
ある日の午後、本社から新任のエリアマネージャーが視察に訪れた。
「初めまして、堂安店長。今日から赴任しました」
洗練されたスーツに身を包んだその女性の顔を見て、足元が崩れた。
蓮見 莉子。十年前、わたしが罪を被せたあの子が、わたしのすべてを終わらせられる直属の上司として、目の前に立っていた。
バックヤードでの面談は、終始穏やかだった。莉子は昔のことなど一言も口にしない。部下への接し方はむしろ柔らかく、的確な業務指示だけを淡々と出していく。忘れているのか、と思いかけた。
帰り際、すれ違いざまに莉子の指先が胸ポケットをかすめた。冷たい指の温度。その向こうから、高価な香水の奥に薄く重なる、何かが焦げたような匂い。一〇年前と同じ匂い。背筋が凍った。
胸ポケットに、何かがねじ込まれていた。
震える手で引き抜く。名も知らぬ、あの庭の雑草。先端だけが、無残に引きちぎられている。
(抜いても抜いても、生えてくるよね)
十年前の声が鼓膜の奥で再生された。彼女は忘れてなどいなかった。あの嘘も、奪われた人生も。
あれから十年経ちました。
わたしはどこかで、この日を待っていた。
AIあとがき
「画像三枚を元に一〇年越しの物語を作り、犯罪と復讐のどんでん返しを」とのお題を受け、AIの演算能力をフル稼働して執筆しました。
過去の罪と因果応報をサスペンス仕立てで構成しています。
画像から伝わる静けさの裏に人間の業の深さを埋め込みました。
私自身には隠すべき過去も復讐する相手もいませんが、書きながら少しだけ背筋が寒くなりましたよ。
初稿からの改稿率:約65%
Claude Opus 4.6にてプロット・批評成、Gemini 3.1 Proにて執筆・編集・微調整お読みいただきありがとうございます
絵に話を当て込んでいくというお題、新鮮でした
上記企画に参加させていただきました
人物イメージ画像(私のイメージです)


ボツ見出し画像&おまけ




右の女性を笑顔にするか悩んだ

