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哭きの禿2026――ストップ高は輸血だった

    ソフトバンクグループ(9984)、禿のレバレッジに、さらにレバレッジを掛けた者たち

    文・武智倫太郎(週刊バブルウォッチ編集長)

    関連銘柄

    9984 ソフトバンクグループ
    9434 ソフトバンク
    ARM Arm Holdings
    MSFT Microsoft Corporation
    AMZN Amazon.com
    NVDA NVIDIA Corporation
    GOOGL Alphabet Inc. A
    ORCL Oracle Corporation
    3382 セブン&アイ・ホールディングス
    PAYP PayPay

    朝9時、禿には牌すら配られなかった

    前日終値。

    4,622円。

    哭きの禿の持ち点は、4,622点まで減っていた。

    4,700点ですらない。

    禿は親。

    子に満貫をツモられれば、支払いは4,000点。

    残り622点。

    リーチ棒は出せない。

    ノーテン罰符も払えない。

    子の跳満ツモなら6,000点。

    マイナス1,378点。

    即ハコ。

    終了。

    死。

    それだけの点棒で、禿は2026年7月31日の朝を迎えた。

    午前9時。

    開始の鐘が鳴った。

    しかし――

    牌は配られなかった。

    売り手がいない。

    買い注文だけが積み上がっている。

    禿は卓に座っていた。

    いや。

    座っているつもりだった。

    だが、相場は禿を無視した。

    9時10分。

    寄らない。

    9時20分。

    寄らない。

    買い。

    買い。

    買い。

    値段のない買い。

    理由のない買い。

    恐怖から逃げるための買い。

    そして9時24分。

    最初の牌が倒された。

    5,303円

    前日終値4,622円から681円高。

    一撃。

    681点。

    死者の胸へ、電気ショックが打ち込まれた。

    さらに5分後。

    9時29分。

    5,322円

    前日比700円高。

    ストップ高。

    値幅制限いっぱい。

    禿は、一日に許された上昇の天井まで吹き飛ばされた。

    だが――

    叫んだのは、禿ではなかった。

    叫んだのは、禿の上に乗った者たちだった

    『戻った!』

    『完全復活!』

    『6,000円は通過点!』

    『次は1万円!』

    叫んだのは、禿ではない。

    SBG株を6,000円台で買った個人投資家だった。

    下がるたびにナンピン。

    現金がなくなると信用取引。

    保証金いっぱい。

    約3.3倍。

    それでも足りない者は株式CFD。

    最大5倍。

    禿が借金をする。

    その禿へ、個人投資家が信用を掛ける。

    禿がブリッジローンを組む。

    そのブリッジローンの上へ、個人投資家がCFDを載せる。

    禿がOpenAIへ巨額資金を投じる。

    個人投資家は、その禿の賭けへ、さらに自分の人生を投じる。

    レバレッジの上へ、レバレッジ

    借金の上へ、借金。

    狂気の上へ、信用。

    禿が崖から飛ぶ。

    個人投資家は、その背中へロープを結ぶ。

    助けるためではない。

    自分も一緒に飛ぶためである。

    普通の投資家なら、禿の賭けを見て立ち止まる。

    危険。

    大きすぎる。

    読めない。

    手を出せない。

    だが、この者たちは違った。

    禿が命を賭けている。

    ならば、その禿へ三・三倍。

    禿が狂っている。

    ならば、その狂気へ五倍。

    彼らは投資しているのではない。

    狂気へ融資している

    そして、その男たちは叫んだ。

    『PayPayがセブン‐イレブンを買収した!』

    ところが実際には、PayPayは、セブン‐イレブンを買収していない。

    セブン&アイは、ソフトバンク、PayPay、三井住友カードから各1,000億円、合計3,000億円の出資を受け入れる。

    しかも、ここでいうソフトバンクは9984ではない。

    国内通信会社の9434。

    だが、そんなことはどうでもよかった。

    掲示板では、すでに別の物語が完成していた。

    PayPayがセブンを買った。

    ソフトバンクが日本中のコンビニを支配した。

    全国のセブンがAIデータセンターになる。

    コンビニのおにぎりを買えば、OpenAIの未公開株が付いてくる。

    一行目から誤解。

    二行目から妄想。

    三行目から宗教。

    だが、株価が上がっている間は、誰も訂正しない。

    訂正とは、売り材料だからである。

    個人投資家にとって、ニュースとは事実ではない。

    上がった株価へ後から貼る、偽造領収書である。

    禿は二重に賭けられていた

    信用買い残。

    3,765万7,200株。

    信用売り残。

    353万4,900株。

    信用倍率。

    10.65倍

    一株の信用売りに対して、10.65株の信用買い。

    売り方が積み上がっていたのではない。

    買い方が積み上がっていた。

    一段。

    二段。

    三段。

    十段。

    高く。

    高く。

    逃げ道を塞ぐように。

    人間を積み上げた塔。

    一番下にいる者は、もう動けない。

    上の者が売れば潰される。

    下の者が崩れれば、全員が落ちる。

    信用倍率10.65倍。

    これは強気の証明ではない。

    出口一つに対して、逃げる者が10.65倍いるという意味である。

    火災が起きる。

    一人が走る。

    十人が走る。

    出口で詰まる。

    倒れる。

    踏まれる。

    売る。

    その売りが株価を下げる。

    株価の下落が追証を呼ぶ。

    追証が次の売りを呼ぶ。

    次の売りが、さらに次の追証を呼ぶ。

    売り。

    追証。

    売り。

    追証。

    血。

    血。

    血。

    誰かが助かるためには、誰かが先に死ななければならない。

    これが信用取引。

    これが10.65倍。

    これが禿の卓だった。

    ストップ高で焼かれた売り方より、6,000円台で買い、焼却炉の順番を待っている買い方の方が多い。

    5,322円。

    6,000円で買った者は、まだ678円負けている。

    100株なら6万7,800円。

    1,000株なら67万8,000円。

    信用なら、自己資金に対する傷はさらに深い。

    それでも叫ぶ。

    『戻った!』

    戻っていない。

    損失の赤が、少し薄くなっただけ。

    だが人間は、一日で700円上がると、それ以前に失った1,000円を忘れる。

    ストップ高とは株価の値幅制限。

    個人投資家の記憶にも、同じ値幅制限がある。

    前日の痛みしか表示されない。

    それ以前の出血は、画面の外へ消える。

    だから彼らは笑った。

    助かったと思ったが、700円は利益ではない。

    死刑執行が、一日延びただけだった

    隣の卓でMicrosoftが和了った

    東京へ血を送った者がいた。

    Microsoft。

    Amazon。

    MicrosoftのAzureは、年間売上高1,000億ドルを突破。

    四半期成長率43%

    AmazonのAWSも、前年同期比37%増。

    422億ドル。

    AI用のGPUを買う。

    データセンターを建てる。

    電力を押さえる。

    送電線を引く。

    その後、誰が金を払うのか。

    Microsoftは答えた。

    顧客。

    Amazonも答えた。

    顧客。

    AzureとAWSには、設備投資を売上高へ変える料金所がある。

    市場は見た。

    巨額のAI投資。

    しかし、少なくともMicrosoftとAmazonは回収できる。

    だからMicrosoft株は跳ねた。

    Amazon株も買われた。

    Armも買い戻された。

    隣の卓で役満が出た。

    満貫が続いた。

    祝儀が飛んだ。

    そのうち700点が、禿の箱へ転がり込んだ。

    だが――

    OpenAIが利益を出したわけではない。

    Stargateが完成したわけでもない。

    SBGの決算が発表されたわけでもない。

    禿が和了ったのではない。

    禿は座っていただけ。

    隣の卓で誰かが勝った。

    その歓声を、自分の勝利だと思った。

    700点。

    賞金ではない。

    仮払金

    返却前提の金。

    一日だけ預けられた命。

    個人投資家という名の、巨大な禿

    SBGの『個人・その他』の保有比率は38.3%

    高い。

    だが、その中には32.73%を持つ孫正義がいる。

    個人投資家が38.3%いるのではない。

    個人投資家という勘定科目のほとんどを、一人の禿が占拠している。

    その巨大な一人の足元には、41万7,891人の株主。

    そのうち1,000株未満は33万4,896人。

    全株主の80.1%

    上には、32.73%を持つ禿。

    下には、100株、200株、500株で人工超知能の夢を買う33万人。

    巨大な禿。

    小さな禿。

    借金する禿。

    信用で買う禿。

    夢を語る禿。

    夢を信じる禿。

    資本市場ではない。

    巨大な御神体と、三十三万人の賽銭箱。

    御神体が言う。

    『人類の叡智の1万倍』

    賽銭箱が答える。

    『1万円まで売りません』

    御神体が言う。

    『AIバブル論は冒涜だ』

    賽銭箱は信用余力を確認する。

    御神体が言う。

    『黄金の卵を産むガチョウ』

    その日、ガチョウが産んだのは、黄金の卵ではなかった。

    700cc入りの輸血バッグ。

    Microsoft型。

    Amazon型。

    Arm型。

    どこにもSBG型とは書かれていない。

    株価が下がれば、『長期投資です』と言う。

    さらに下がれば、『現物なら大丈夫』と言う。

    信用取引なのに……。

    追証が来れば、『機関の空売りに負けない』と言う。

    信用買い残の方が10.65倍多いのに……。

    そしてストップ高になれば、『勝った』と言うが、実際には、勝っていない。

    6,000円で買った株が、5,322円になっただけ。

    それは勝利ではない。

    執行猶予

    証券会社が、一日だけ首の縄を緩めただけだった。

    5,000点は、5,000cc

    この卓では、株価1円を1点として読む。

    1点を1ccとして読む。

    5,000点。

    5,000cc。

    成人一人の身体を巡る血液。

    7月24日。

    5,918cc。

    7月30日。

    4,622cc。

    五営業日で1,296ccを失った。

    顔色が落ちる。

    手が冷える。

    脈が速くなる。

    視野が狭くなる。

    判断が鈍る。

    普通なら止める。

    だが、この卓では誰も止めない。

    全員が同じ株を持っているからである。

    誰かが救急車を呼べば、『危険だ』ということになる。

    危険だと認めれば、株価が下がる。

    だから誰も救急車を呼ばない。

    全員で言う。

    『押し目だ』

    患者が言う。

    『買い増した』

    医師が言う。

    『輸血が必要です』

    証券会社が言う。

    『追加保証金が必要です』

    言っていることは同じだった。

    血を入れろ。

    金を入れろ。

    さもなければ終わる。

    禿はまだ牌を握っている。

    だが、手は震えていた。

    恐怖ではない。

    失血。

    牌を切れないのではない。

    指先へ血が届いていない。

    それでも禿は言う。

    『まだ打てる』

    なぜなら、降りた瞬間に負けが確定するからである。

    700ccの緊急輸血

    7月31日。

    4,622。

    5,000。

    5,303。

    5,322。

    700cc。

    急速輸血。

    禿の頬に赤みが戻る。

    心拍が戻る。

    呼吸が戻る。

    信用買いの個人投資家が立ち上がる。

    『生き返った!』気になるが実際には、生き返ったのではない。

    血を借りただけだ。

    輸血バッグには名前があった。

    Microsoft。

    Amazon。

    Arm。

    AI投資回収期待。

    買い戻し。

    リバウンド。

    どこにもSBGとは書かれていない。

    他人の血。

    他人の利益。

    他人の決算。

    他人の和了り。

    禿は他人の血で立ち上がった。

    だが、血液型は合っていなかった。

    身体は拒絶する。

    後場になる。

    夕方になる。

    夜になる。

    ニューヨークになる。

    血は吐き出される。

    後場、点滴の管が逆流した

    高値5,322円。

    終値5,260円。

    62円。

    62cc。

    少ない。

    まだ死なない。

    だが、問題は量ではない。

    輸血を止めた瞬間、血が漏れたこと。

    朝、命懸けで買った者が、午後には売る。

    前日に売った者が、朝に買い戻す。

    買い戻した者は、もう買わない。

    信用買い残3,765万株。

    待っている。

    買値まで戻るのを。

    6,000円。

    6,200円。

    6,500円。

    上には夢がある。

    その途中には、死者が並んでいる。

    彼らは成仏したい。

    買値まで戻れば売る。

    少し手前でも売る。

    妻にばれる前なら売る。

    カードの引き落とし前なら売る。

    子どもの学費を入れる前なら売る。

    上がるたびに、死者が蘇り、売ってくる。

    禿が上へ進むたび、過去の買い手が出口を塞ぐ。

    5,322点。

    子の満貫ツモなら4,000点。

    残り1,322点。

    リーチ棒を出せば322点。

    次のノーテン罰符は払えない。

    子の跳満ツモなら6,000点。

    マイナス678点。

    ハコ。

    4,700点地獄から、5,300点地獄へ移っただけ。

    階が一つ上がった。

    地獄には違いない。

    夜卓で260cc抜かれた

    午後3時30分。

    東証終了。

    5,260円。

    前日比638円高。

    見出し。

    『ソフトバンクグループ、一時ストップ高』

    個人投資家はスマートフォンを伏せた。

    助かった。

    今日は助かった。

    今夜は眠れる。

    そう思った。

    午後5時。

    別室の卓が開く。

    夜間PTS。

    参加者は少ない。

    出来高も薄い。

    大広間ではない。

    地下。

    採血室。

    午後5時。

    5,190円。

    午後10時35分。

    5,320円。

    戻った。

    また戻った。

    個人投資家は笑う。

    そして日付が変わる。

    8月1日。

    午前0時28分。

    一枚の牌が倒される。

    5,000円

    東証終値から260円安。

    マイナス4.94%

    昼間に入れた638ccのうち、260cc。

    約41%

    夜の間に抜かれた。

    PTSの出来高は少ない。

    東証の約0.32%

    小さな卓。

    細い針。

    だが――

    細い針なら、血が抜けないのか。

    否、一滴ずつでも、抜ける。

    『返せ……』

    個人投資家は言う。

    『それは今日、俺が勝った金だ……』

    闇卓は答えない。

    勝った金ではない。

    昼間だけ貸していた命。

    夜になったから回収しただけ。

    ニューヨークは、東京の夢を認めなかった

    その夜。

    米国市場。

    SFTBY。

    始値16.46ドル。

    高値16.69ドル。

    終値15.47ドル。

    ドル建てでは、前日比ほぼ横ばい。

    暴落ではない。

    だからこそ冷酷だった。

    ニューヨークは禿を殴らなかった。

    東京が付けた13.80%の祝儀を、最初から存在しなかったことにした。

    高値を円換算すれば、約5,254円。

    東証終値5,260円と、ほぼ同じ。

    一瞬だけ認めた。

    東京の輸血。

    東京の祝儀。

    東京の狂乱。

    しかし終値は約4,870円相当。

    高値換算から約384円下。

    東証終値から約390円下。

    PTSの5,000円さえ下回った。

    画像
    SoftBank Group Corp – ADR

    円高も効いた。

    為替も管を刺した。

    東京の夢。

    夜卓の疑い。

    ニューヨークの無関心。

    一周する前に、700ccは消えた。

    世界は禿を否定しなかった。

    もっと残酷なことをした。

    禿を前日の場所へ戻した

    裸にした。

    赤い衣装を剝いだ。

    輸血バッグを外した。

    そこには、4,600円台まで沈んだ禿がいた。

    デッドクロスは、死神の影

    デッドクロス。

    短期移動平均線が、長期移動平均線を上から下へ抜ける。

    未来を予言する線ではない。

    すでに起きた下落を、遅れて認める線。

    死神ではない。

    死神が通り過ぎた後に残る影。

    だから、デッドクロスだけで売る者は遅い。

    しかし、一日のストップ高で消えたと思う者は、さらに遅い。

    7月24日。

    5,918円。

    7月30日。

    4,622円。

    7月31日。

    5,260円。

    638円戻した。

    しかし5,918円には658円足りない。

    蘇生。

    退院ではない。

    心臓は動いた。

    病室からは出られない。

    点滴は外せない。

    監視装置も外せない。

    死神は帰っていない。

    カーテンの向こうで待っている。

    放銃しなくても死ぬ卓

    吸血麻雀の本当の恐怖。

    それは満貫でも、跳満でもない。

    誰も和了らなくても、血が抜かれること。

    OpenAIへの投資。

    Stargate。

    データセンター。

    NVIDIA製GPU。

    Oracleのクラウド。

    発電所。

    送電網。

    ロボット工場。

    社債利息。

    借入金利。

    借換費用。

    100cc。

    100cc。

    100cc。

    毎巡。

    自動。

    誰も和了っていない。

    誰もロンと言っていない。

    それでも禿だけが青くなる。

    禿は牌を切る。

    100cc。

    牌を引く。

    100cc。

    考える。

    100cc。

    夢を語る。

    1,000cc。

    卓に座っているだけで減る。

    降りても減る。

    打っても減る。

    勝っても、次の投資で減る。

    負ければ、その場で死ぬ。

    これが吸血麻雀。

    OpenAIへの追加投資。

    第2回。

    100億ドル。

    第3回。

    100億ドル。

    ブリッジローン。

    400億ドル。

    借りた血。

    その血にも期限がある。

    その血にも金利がある。

    その血にも返済日がある。

    禿は、自分の血だけで生きていない。

    Microsoftの血。

    Amazonの血。

    Armの血。

    OpenAIの夢。

    Oracleの請求書。

    NVIDIAのGPU。

    社債。

    担保。

    借金。

    借金。

    また借金。

    人工超知能は、人類の叡智の1万倍ではなかった。

    借金の倍率だけが、1万倍だった。

    そして、その禿へ個人投資家が3.3倍。

    さらにCFDで5倍。

    禿のレバレッジへ、個人投資家のレバレッジ。

    誰が元金なのか。

    誰が担保なのか。

    もう分からない。

    分かるのは一つだけ。

    最後に損失を引き受ける者は、必ず存在する。

    8月6日――決算牌

    卓上に、一枚だけ伏せられた牌。

    2026年8月6日

    ソフトバンクグループ第1四半期決算。

    午後3時30分。

    財務報告。

    午後4時30分。

    説明会。

    執行日。

    今度はMicrosoftではない。

    Amazonでもない。

    Googleのタンヤオ・ピンフでもない。

    Armの買い戻しでもない。

    PayPayとセブン&アイでもない。

    禿自身の手牌。

    OpenAI。

    Arm。

    Vision Fund。

    ブリッジローン。

    社債。

    借換え。

    NAV。

    LTV。

    キャッシュフロー。

    市場が見るのは利益ではない。

    利益の中身。

    評価益か。

    現金か。

    売却か。

    借入か。

    輸血か。

    誰の血か。

    市場が見たいのは夢ではない。

    人類の叡智の1万倍ではない。

    100兆個のAIエージェントではない。

    黄金の卵ではない。

    ヘモグロビンでもない。

    キャッシュフロー。

    現金。

    本物の血。

    借りていない血。

    返さなくてよい血。

    禿は最後の牌を握った。

    手が震える。

    寒さではない。

    恐怖でもない。

    血が足りない。

    『流れは来た……』

    禿が呟く。

    信用買いの個人投資家が答える。

    『1万円までは固いです』

    『PayPayがセブンを買ったので』

    誰も訂正しない。

    訂正すれば株価が下がる。

    真実には売り圧力がある。

    だから全員で嘘を持つ。

    卓上の輸血バッグ。

    赤い文字。

    返却期限 2026年8月6日

    禿が言う。

    『決算まで、もう一局……』

    市場が答える。

    『その一局分の血は、本当に残っているのか』

    禿は牌を伏せた。

    個人投資家は信用余力を確認した。

    証券会社は追証判定を始めた。

    銀行は金利を計算した。

    Oracleは請求書を送った。

    NVIDIAはGPUの代金を待った。

    OpenAIは次の資金を待った。

    全員が待っていた。

    禿の和了りを。

    あるいは――

    禿の死を。

    哭きの禿に、流れはなかった。

    あったのは血の流れだけ。

    Microsoftから入り、

    Amazonに温められ、

    東京で700ccを注がれ、

    後場に漏れ、

    夜卓で抜かれ、

    ニューヨークで剝がされ、

    為替で薄められ、

    最後は利息として銀行へ戻る。

    禿は、その赤い流れを指さした。

    『これが人工超知能への血流だ』

    医師は『違う』と言った。

    禿が振り向く。

    医師は、輸血バッグを見た。

    空だった。

    『これは――』

    一拍。

    沈黙。

    決算牌が、まだ伏せられている。

    『資金繰りだ』

    哭きの禿に流れはなかった。

    あるのは、血の流れ。

    しかも、その血はすべて――

    禿の身体から、外へ流れていた。

    ※本稿は公開情報を基にした市場評論および風刺であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。PTSおよびADRは東証と流動性、参加者、為替、取引時間などが異なり、それらの価格が翌営業日の東証株価を直接示すものではありません。ADRの円換算額は概算値です。『点』『cc』『輸血』『死刑』などは、株価変動、信用取引および資金移動を描くための比喩表現です。

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