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Photo bytarohanamana

暗記できないんじゃない。まだ海底まで潜っている途中です。――「理解型」の子どもに、夏期講習で大量暗記をさせる前に知ってほしいこと。「なんで?」で止まる子は、勉強が苦手なのではなく、深く潜っているのかもしれない

    夏休み。

    受験生たちは、夏期講習の真っ最中だ。

    大量のプリント。
    大量の宿題。
    大量の漢字。
    大量の英単語。

    親は焦る。

    「昨日やったのに、なんで覚えてないの?」

    「何回やったら覚えるの?」

    「もっと反復しないとダメなんじゃない?」

    でも最近、子どもと勉強について話していて、私はひとつの仮説を持つようになった。

    もしかしたら、覚えられないんじゃない。

    その子は、理解しないと先へ進めない「理解型」なのではないか。

    TheseとThoseを、アイシャドウで説明してみた

    ある日、子どもと英語の話をしていた。

    Theseは「これらの」。
    Thoseは「それらの」。

    もちろん、それをそのまま暗記してしまえば問題は解ける。

    でも私たち親子は、どうもこういう覚え方が得意ではない。

    そこで私は、身近なものに置き換えてみた。

    私たちが好きなアイシャドウである。

    目の前にあるアイシャドウ。

    これは近い。

    だから、

    these eyeshadows

    一方、少し離れた場所にあるお店のアイシャドウを想像する。

    今、目の前にはない。

    遠くにある。

    だから、

    those eyeshadows

    These=近くにある「これら」
    Those=遠くにある「それら」

    すると英単語が、単なる文字列ではなくなる。

    距離という感覚と、実際に知っている物が結びつく。

    子どもは理科系の分野にも興味がある。

    だったら英語でも数学でも理科でも、本人の頭の中にすでに存在する世界に、新しい概念を接続してやればいい。

    新しい知識を、孤立させない。

    これが理解型には、とても重要なのではないかと思う。

    「三人称」が分からないなら、友達を登場させればいい

    別の日には、二人称と三人称について話した。

    「二人称はyou。三人称はsheとかhe」

    ……これ、結構抽象的じゃないだろうか。

    「三人称」と言われても、頭の中に誰もいない。

    そこで、子どもの実在する友達に登場してもらった。

    名前も地名も仮のものにすると、

    Hanako lives in Tokyo.

    みたいな感じだ。

    すると子どもが笑った。

    その瞬間、私は思った。

    あ、今、頭の中に友達が登場したな。

    これだ。

    「三人称」という抽象的なラベルから入るのではなく、

    知っている人
    ↓
    具体的な状況
    ↓
    英文
    ↓
    文法

    の順番で入っていく。

    理解型に必要なのは、こういう「意味の橋」なのかもしれない。

    「なぜ?」が分かった瞬間、一気につながった

    夏休み、子どもが英語の講習を受けている。

    そこで、ある先生から英語の冠詞について説明を受けた。

    aとan。

    なぜ、

    a pen

    なのに、

    an apple

    なのか。

    「母音の前だからan」

    もちろん、それがルールだ。

    でも理解型が欲しいのは、そこで終わらない。

    そもそも、なぜそんなルールになっているの?

    実際に発音してみる。

    すると、音のつながりとしてanが入ったほうが発音しやすい場合があることが、感覚として分かる。

    ここで子どもの中に、

    「ああ、そういうことか!」

    が起きた。

    これ、ものすごく大事だと思う。

    理解型はルールを拒否しているのではない。

    ルールが生まれた理由を探している。

    だから理由が見つからない間、止まる。

    周囲から見ると、

    「覚えが悪い」

    「時間がかかる」

    「要領が悪い」

    ように見えることすらある。

    でも、一本の理由が通った瞬間、急に強くなる。

    私が考える「理解型の学習曲線」

    子どもと話しながら、私はその場で紙にグラフを描いた。

    横軸は理解の深さ。

    縦軸は学習にかかる時間。

    これはもちろん研究データではない。

    あくまで、私自身と子どもを観察していて思いついた仮説だ。

    暗記を得意とする人が、覚えたものを比較的早く使えるようになるとしたら、理解型は少し違うのではないか。

    最初は、とにかく遅い。

    「なんで?」

    「どうして?」

    「これとあれは何が違う?」

    「そもそも、どうしてこのルールがあるの?」

    いちいち止まる。

    だから、なかなか進まない。

    ところが。

    ある程度まで理解が深くなると、

    バラバラだった知識が突然つながり始める。

    理科で知ったことが算数につながる。

    算数で理解した考え方が物理につながる。

    英語で理解したルールが、別の英文を読むときにも使える。

    新しい知識を得るたび、既存の知識との接続が始まる。

    私は紙に丸をいくつも描いて、それを線で結んだ。

    知識のネットワーク化。

    一個一個の知識を独立した箱として保存するのではない。

    「あれと、これって同じ話じゃない?」

    「あのとき覚えたことが、ここにも使える!」

    そんなふうに、知識同士がつながっていく。

    理解型は、このネットワークができてからが強いのではないか。

    理解型は「スキューバダイビング型」なのではないか

    さらに子どもに説明するため、私は別の絵を描いた。

    海。

    海面には船。

    そして、深い海の底に魚。

    理解型の人間は、新しいことに出会ったとき、海面から眺めるだけでは終われない。

    「あの魚、何?チョウチンアンコウ?」

    画像
    チョウチンアンコウ

    と思ったら、

    潜る。

    スキューバダイビング開始。

    ブクブクブク……。

    深い。

    まだ潜る。

    周りの子は、もう次の単元へ行っている。

    それでも潜る。

    「なぜ?」

    「どういう仕組み?」

    「じゃあ、こっちは?」

    「例外は?」

    そして海底まで到達して、

    獲物を捕まえる。

    ここまでに時間がかかる。

    でも一度、

    「分かった!」

    まで到達すると強い。

    一度捕まえた獲物は、

    なかなか離さない。

    これが理解型の強みなんじゃないか、と私は思っている。

    夏期講習で「進みが遅い子」を責める前に

    夏期講習は、とにかく速い。

    膨大な範囲を、短期間で扱う。

    当然、反復も暗記も必要だ。

    私は暗記そのものを否定するつもりはない。

    覚えなければならないことは、当然ある。

    ただ、そのスピードに乗れない子を見て、

    「努力が足りない」

    と即断するのは、少し待ってほしい。

    もしかすると、その子の頭の中では今、

    猛烈な工事が行われているかもしれない。

    新しい知識を、既存の知識につなぐ工事。

    「なぜ?」を掘る工事。

    バラバラの点を、線にする工事。

    表面上は問題集が3ページしか進んでいなくても、

    地下では巨大なネットワークを建設しているかもしれない。

    「なんで覚えてないの?」を、別の質問に変えてみる

    もし子どもが、

    「なんで?」

    を頻繁に言う。

    説明に納得しないと先へ進みたがらない。

    図を描くと急に理解する。

    具体例を出すと目の色が変わる。

    好きな分野については、驚くほど深く掘る。

    ゲームでも遊びでも、仕組みを理解したり、組み合わせたり、自分なりの世界を構築したりすることが好き。

    そんなタイプなら、一度だけ、

    「この子、理解型かもしれない」

    という視点で見てみてもいいかもしれない。

    そして問題を間違えたとき、

    「なんで覚えてないの?」

    ではなく、

    「どこがまだ、つながってない?」

    と聞いてみる。

    これは、かなり違う。

    前者は、記憶できていないことを責める質問だ。

    後者は、

    一緒に接続ポイントを探す質問だ。

    我が家は「理解型親子」だった

    実は私自身も、暗記があまり得意ではない。

    理解できないものを、そのまま頭に突っ込むのが苦手だ。

    だから勉強するとき、私は図を描く。

    たとえ話を作る。

    身近なものに置き換える。

    変なキャラクターを登場させることもある。

    とにかく、抽象的な概念をいったん具体的な世界へ降ろす。

    そして、

    「ああ、そういうことか!」

    まで到達すると、急に覚えられる。

    子どもと勉強について話していて気づいた。

    あ、この子も同じなんだ。

    だから最近は、

    「私たち、理解型なんだね」

    と親子で話している。

    これは、

    「私たちは暗記が苦手だから仕方ない」

    という免罪符ではない。

    むしろ逆だ。

    自分の脳の攻略法を知った、ということだ。

    海面にいる時間だけで、子どもの能力を判断しない

    夏休み。

    塾のテキストは、どんどん進む。

    周囲の子が、ものすごいスピードで問題を解いているように見える。

    模試の数字も出る。

    クラスもある。

    順位もある。

    親も焦る。

    子どもも焦る。

    でも。

    もし、その子が理解型なら。

    今、海面に姿が見えないのは、

    沈んでいるからではない。

    深く潜っているのかもしれない。

    海底で、

    「分かった!」

    という獲物をつかんだ瞬間、

    その知識は、別の知識とつながり始める。

    点が線になる。

    線が網になる。

    そして、その網が次の知識を捕まえてくれる。

    だから私は、子どもが深く潜っているとき、

    できるだけ急かさないでいたい。

    暗記できないんじゃない。

    まだ海底まで潜っている途中なのだ。

    時間はかかる。

    周りより遅く見えることもある。

    でも、一度つかんだら。

    この人たちは、強い。

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    家事代行1000件超。元化学系研究職。51歳で消防設備士乙6合格。人生後半、ただいま再起動中。家庭も仕事も都市も、現場に入れば構造が見える。都市を泳ぎ、観察し、考え、書き、そして次へ行く。就職氷河期世代。INTJ。

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