
ショートショート 「月を見る」 #シロクマ文芸部
月を見るという行為は、どうしてこうも“人間的”なのだろう。
待宵月が、ひとりぽつりと夜空に浮かんでいる。
その淡い光を仰ぎながら、ふと思った。
動物たちは月を「見る」のではない。
光や温度、夜の律動。 月がもたらす環境のゆらぎを、身体全体で受け取っている。
人間だけが、月を“視覚”として切り取る。
もちろん、それは美しい。
けれど、もっと別の感覚でも月を受け止められるはずだ。
雲の裂け目からこぼれる月光が、肌に薄く触れたとき、
僕はようやく月を「感じて」いた。
その瞬間、胸の奥で言葉にならない原始的なざわめきが立ち上がる。
心拍が跳ね上がり、胃のあたりがズシりと重くなる。
――モヤモヤする。
だって、月末だもの。
完
(本文298字)
あとがき
小牧幸助さんの企画『シロクマ文芸部』お題で書きはじめるnote企画「月を見る」に参加させて頂きました。月末は酷ですね。