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つくし上位互換【毎週ショートショートnote】

    アレルギー症状に関する記述・描写があります。
    お読みいただく場合は、じゅうぶんご注意ください。


    「つくしなんて、もう何年見てないんだろう……」

    男はぽつりと呟いた。

    ひどい花粉症体質だった男は、日があるうちは外に出ない。通勤も日の出前だ。おかげで春の息吹などまったく無縁だった。


    「そうか! なら作ればいいんだ!」

    バイオ系の企業に勤める男は、さっそく研究を始めた。

    「どうせなら普通のつくしより、すごいのを作りたいよな……」

    骨の髄まで理系思考マッドサイエンティストの男は、様々な試行錯誤を重ねた。

    「できた! もっと大きくてえぐみもなく、はかまも取りやすい、まさに『つくし上位互換』と言ってもいい出来だ!……ふ、ふ、ふぇーっくしょん!!!」

    自然に疎い彼は知らなかった。
    人間が手を加えて巨大化したつくしの胞子は、スギ花粉より驚異的なアレルゲンになることを。
    だが不思議なことに、その症状は開発者たる彼にしか出なかった。

    「へっくし! なんで俺だけ……ふえっくしっ!」

    以後、そのつくしは『とり憑つくし』と呼ばれ、研究者の中でもひどく恐れられるようになった。
    そして男は、ますます春が嫌いになったという。

    (430字)


    【あとがき】
    子供の頃、よくつくし採りをしました(田舎育ちなので)。
    よく生える場所をいくつか知っていて、親に喜ばれたものです。
    ただ採るのはいいんだけど、後の「はかま取り」が大変でしたね。
    子供が食べてもあんまり美味しい味じゃないし(笑)

    それはそうと、たらはさんの独り言からネタを頂戴しましたが、本作は完全にフィクションであり、実在の人物等とは一切関係ありませんので、そこんところはくれぐれもご承知おきくださいね~。


    *この記事は、以下の企画に参加しております。


     
     
    小説を書くわんこ(SS~長編)。創作大賞2025『栗と牡丹』入選。→2026年4月『栗は月色、こがね色』として朝日文庫より刊行。第2回日本おいしい小説大賞最終候補、第31回やまなし文学賞『雨を知るもの』佳作→作品集刊行。餃子とピザとあんこが好物。一人BARと野鳥観察が趣味。

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