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マッチョ華道【毎週ショートショートnote】

    広大な日本庭園にしつらえられた桟敷席は静まり返っていた。
    中央の舞台に今日の主役の三人が立っている。
    マッチョ華道の三大流派、池棒いけのぼう・尾腹おはら流・窓月そうげつ流が相まみえ、日本一を決めるのだ。

    筋骨隆々たる池棒多羅波と尾腹出藻いずも。
    そして場違いなまでに楚々とした手枝河原理美都てしがわらりみと。

    「では、僭越ながら」

    池棒が前へ出るや、凄まじい地響きが庭を揺るがす。太い樹木を三本、庭の池へ突き立てたのだ。

    「次は自分が」

    尾腹がその丸太のごとき腕で巨大な虎を締め落とすと、尾と腹を上にして大地へ叩きつける。

    「最後はわたくしですね」

    手枝河原は静かに目の前の池を差した。
    青空に残る白い月が池の中央に浮かんでいる。

    「『窓から月を眺むるごとく』が窓月流の理念。いかが」

    途端に他の二人が哄笑した。

    「力では男に勝てぬゆえの悪あがきか」
    「月が動けば池には映らぬ。失格だな、理美都どの」

    その瞬間、手枝河原が目にも留まらぬ速さで両手を突き出した。
    急所を突かれた池棒と尾腹が、どうと仰向けに倒れ込む。

    「これでしばらくは眺められるでしょう――剣山も使いようですね」

    恐るべき細マッチョ、ここに見参――。

    (465字)


    【あとがき代わりの創作プロセス】
    華道なるものをまったくたしなんだことのない秋しばです。
    なので、ちょっと下調べを。

    なるほど、「池坊・小原流・草月流」が三大流派で、それぞれ 池坊専慶・小原雲心・勅使河原蒼風 が創始者とのこと。

    いろいろと考えておりましたら、非常にシンプルかつ迫力ある作品に出会いました!

    いやあ、お見事です! 熱狂具合がばしばし伝わってきますね。
    ではこちらは華道の紹介をしつつ、日本モノらしく静と動を強調してみましょう。

    (はい、この記事の先頭に戻ってください⤴)

    あ、そうそう。大事なことを書いておきます。

    この作品はフィクションです。
    実在の人物・組織などとは一切関係ございません。


    *この記事は、以下の企画に参加しております。

    【既刊一覧】


     
     
    小説を書くわんこ(SS~長編)。創作大賞2025『栗と牡丹』入選。→2026年4月『栗は月色、こがね色』として朝日文庫より刊行。第2回日本おいしい小説大賞最終候補、第31回やまなし文学賞『雨を知るもの』佳作→作品集刊行。餃子とピザとあんこが好物。一人BARと野鳥観察が趣味。

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