
人魚裁判所【毎週ショートショートnote】
ある日、男は人魚裁判所に呼ばれた。
海の奥深くにある、人魚の国の裁判所だ。
「あなたはどうして、人魚の鱗を欲しがったのかしら?」
裁判官の声はやけに甘い。
「母の病を治すため、人魚の鱗を煎じて飲ませたかったからです」
男が困ったように微笑むと、傍聴席から黄色い悲鳴が上がった。
「優しい!」
「私の鱗、全部あげる!」
人魚たちが大騒ぎするのも無理はなかった。
被告人の男は、海底でも大人気の、あるドラマのイケメン俳優に生き写しだったのだ。
「静かに。尾ひれで机を叩く代わりに、手でコンコン、ですよ。うふふ」
「裁判官、判決を」
「えっと……被告人さん。最後に何か、胸に刺さる、ズキュンとする一言をお願いできるかしら?」
「……判決より先に……君の心をいただく」
「無罪!」
人魚たちは拍手喝采した。
男はただ、母のために必死だった。
自分の顔が、実は人魚たちの好みドンピシャだとは知らずに。
田原 にかさんのお題『人魚裁判所』
に参加させていただきました。
いつもありがとうございます😊
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