メインコンテンツへスキップ
見出し画像
Photo bytominagayuki

つくし上位互換【毎週ショートショートnote】

    「あ、つくしが出てるよ、アヤコ。すっかり春だねー」

    河川敷の斜面に制服のままごろりと横たわった陽村すずが、のどかな声を出す。

    「……ごめんね、スズ」
    「何がー?」
    「朝から付き合わせちゃって」
    「ぜーんぜん」
    「しかも、結局、行けなかったし。スズまで休ませちゃって」
    「いいんだよ。家からここまで来れたじゃん、上出来だよ」

    でも、半年ぶりに学校が見えてきたところで、膝が震えてきてしまい、それ以上歩けなくなってしまった。

    「……ほら、アミカ。『人間は考えるつくしである』って言うじゃん?」
    「……えっと……それは」
    「つくしみたいに、春だからにょっきり出てきました! でいいなら楽だけどさ。人間は、悩んだり心配したり、考えちゃうぶん、なかなか簡単には行かないでしょ? でもアヤコは、『怖くても外に出よう』って考えて、ちゃんと実行した。充分すごいことだよ」
    「……ありがと、スズ」

    葦野弥子は微笑んで、つくしの伸びる暖かな斜面にごろりと横たわった。



     
     
    三児の父です。 子供たちが成長して、ようやく多少の余裕ができたので、しばらくはリハビリがてら、気楽さを忘れずにつらつら綴っていきたいです。

    あなたへのおすすめ