メインコンテンツへスキップ
見出し画像
Photo bybright_gnu105

ゴールデンユニーク【毎週ショートショートnote】

    「どうだ、じいちゃんの育てた甘夏は」
    「すっごくおいしい!」

    連休に帰省した実家の畑で、好き嫌いの多い息子が、目を輝かせて甘夏にかぶりつく。

    「そうだろう。何しろ、他では絶対に真似できない、美味しさの秘訣があるからな」


    「……違う。こんなものじゃない!」

    成長した息子は、今は亡き祖父の甘夏の味が忘れられず、何とか再現しようと躍起になっている。

    「くそっ、酸味も甘味も香りも、あの日の唯一無二の味に遠く及ばない」

    痩せ細るほど入れ込む息子が心配になり、声をかける。

    「なあ。お前のその思い出の味は……あの日あの場所、楽しい連休にじいちゃんの家に行って、黄金色の夕焼けの中、家族で一緒に食べたからこそ、何より美味しかったんじゃないか? じいちゃんが言っていた『他にはない美味しさの秘訣』というのは、そういう――」
    「……そんなことは、わかってるよ」

    息子はゆらりと振り向く。

    「だからわざわざ、じいちゃんの遺体を掘り返して、畑に埋め直したのに」



     
     
    三児の父です。 子供たちが成長して、ようやく多少の余裕ができたので、しばらくはリハビリがてら、気楽さを忘れずにつらつら綴っていきたいです。

    あなたへのおすすめ