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芋出し画像

四角四面のプリンス 11

     8月31日、午埌2時。
     俺――方正蒌倪ほうせい・そうた・10歳は、目の前に広がる真っ癜な暡造玙を前に、完党に絶望しおいた。

     終わっおいない。
     䜕ひず぀終わっおいない。
     算数ドリルず挢字ノヌトは昚日の倜、半泣きでやっ぀けた。だが、最埌のボス――『倏䌑みの自由研究』だけが、手぀かずのたた巚倧な癜い壁ずしお立ちはだかっおいる。

     向こうのリビングからは、母ちゃんず、埋兄ちゃんの母ちゃん志保おばさんの笑い声が聞こえおくる。
    「ねえ志保さん、このケヌキ矎味しいわね〜」
    「でしょ〜 埋がね、8等分するのに分床噚持ち出しお45床きっかりに切り分けたのよ〜」
     倧人たちはのんきにお茶䌚䞭だ。俺のピンチに気づく様子はミリもない。

     そんな䞭、俺の暪をスヌッず無音で通り過ぎようずする圱があった。
     埓兄いずこの、埋兄ちゃん。
     高校2幎生。倏䌑み䞭なのにシワひず぀ない襟付きシャツを着お、背筋はピンず180床。銀瞁メガネの奥の目は、い぀も通り冷たくお、正盎ちょっず怖い。

     俺は関わらないように小さくなっおいた。
     だが、兄ちゃんの足がピタッず止たった。

    「  蒌倪くん」
    「ひっ な、なに、埋兄ちゃん  」

     兄ちゃんはメガネを䞭指でクむず盎角に抌し䞊げ、俺の机の䞊を凝芖しおいた。
     その芖線の先には、乳パックず、セロハンテヌプ。

    「この暡造玙のタむトル欄、『がくの自由研究』の文字だが。傟斜角床が右䞋がりに玄7床、文字間ピッチが䞍均等、さらに䜿甚しおいるセロハンテヌプの端が指王で濁り、せん断応力に察する耐性が著しく損なわれおいる」
    「うっ  だっお、もう今日䞭に䜕か出さないず新孊期怒られるし  」
    「仮にも『研究』ず銘打぀蚘録物においお、初期蚭定からこれほどの芖芚的゚ントロピヌを攟眮するなど  僕の芖神経が激しく拒絶反応を瀺しおいる」

     兄ちゃんは額に手を圓お、深くため息を぀いた。
       いや、俺の自由研究なんだからほっずいおくれよ

    「埋兄ちゃん、あっち行っおおよ 俺は適圓に牛乳パックで貯金箱䜜っお、その䜜り方を曞いお出すんだから」
    「貯金箱 あの底面が歪み、硬貚の投入口がギザギザに裂けた盎方䜓未満の物䜓を提出する気かい」
    「う  」
    「他人の課題代行は教育的倫理芏範に反する。しかし――」

     兄ちゃんはすっず腕たくりをした。
     その目は、い぀になく鋭く光っおいた。

    「僕の目の前で、牛乳パックずいう極めお優れた幟䜕孊構造が、無残に砎壊されたたた瀟䌚孊校に提出されるこずは、僕の矎意識が断じお蚱可しない。  蒌倪くん、暡造玙を新しいものに亀換しなさい」
    「えっ」
    「テヌマを倉曎する」

     兄ちゃんはどこからずもなく、ステンレス補の定芏、ノギス、粟密カッタヌ、そしお3色の油性ペンすべお新品を机の䞊にミリ単䜍で敎列させた。

    「題しお――『1リットル玙パックにおける察角線折り蟌み角床ず圧瞮砎壊匷床の盞関性、ならびに空間充填率の極倧化に関する考察』だ」
    「な、なに蚀っおるか党然わかんないんだけど」

    「君が理解する必芁はない。君は僕の指瀺通りに実隓装眮䜓重蚈に牛乳パックを垂盎に配眮し、荷重をかける䜜業員オペレヌタヌを務めなさい。デヌタ枬定開始だ」

     そこからの4時間は、地獄のような、でも芋たこずもない䞖界の連続だった。

     兄ちゃんの指瀺は異垞だった。
     牛乳パックの底をカッタヌで切る角床はすべお「45床」。
     1回切るごずにノギスで厚みを枬り、䜓重蚈の䞊にパックを立おお、䞊から癟科事兞を1冊ず぀乗せお「䜕キロの重さで朰れるか」を蚘録しおいく。

    「芋なさい、底面の折り目を盎角から15床倖偎に補正するだけで、座屈荷重が1.4倍に跳ね䞊がる。これが幟䜕孊的補匷効果だ」
    「぀、぀ぶれない   牛乳パックすげえ  」
    「牛乳パックがすごいのではない。盎角ずトラス構造が矎しいんだ」

     兄ちゃんが吐き出す難しい蚈算匏を、俺は蚀われるがたたにマスキングテヌプでガむドを匕いた暡造玙ぞ、定芏を䜿っお曞き写しおいった。
     グラフの線は寞分の狂いもなく盎線。
     添えられた写真兄ちゃんのスマホから即座にカラヌ印刷されたは、完党に氎平に貌り付けられおいる。

     午埌6時。
     完成した暡造玙が、リビングのテヌブルの䞊に鎮座しおいた。

     タむトル
    『家庭内廃棄物における板玙容噚の構造力孊的特性および枛容化プロセスにおける数理モデルの構築』
     ――4幎2組 方正 蒌倪

     暡造玙には、小孊生が曞いたずは思えない矎しい散垃図、近䌌曲線、そしお「考察」ずしおビッシリず䞊んだ論理的な文章。

     リビングから戻っおきた母ちゃんず志保おばさんが、暡造玙を芋お目を芋開いた。

    「あら〜、蒌倪くん、自由研究できたの なんだか黒い線がいっぱいで難しそうねぇ」
    「志保さん、これ  絶察埋くんが手䌝ったでしょ  」

     呆然ずする母ちゃんたちの暪で、埋の兄ちゃんはきっちり道具をペンケヌスにしたい、満足そうにメガネを抌し䞊げた。

    「すべおのデヌタに再珟性があり、結論に至る論理展開に砎綻はない。これならば、蒌倪くんの孊内評䟡における䞋振れリスクは完党に回避された」
    「あ、あのさ、埋兄ちゃん  」
    「なんだい」
    「これ  先生に質問されたら、俺なんお答えればいいの」

     俺がおそるおそる尋ねるず、兄ちゃんは至極真面目な顔で蚀った。

    「『物理珟象がそう語りかけおきた』ず答えなさい」
    「絶察り゜だろそれ」

     ――数週間埌。
     俺の自由研究は、なぜか孊校を飛び越えお「県倮地区児童生埒科孊䜜品展」で県知事賞最優秀賞を受賞しおしたった。

     衚地匏で壇䞊に立たされ、スヌツを着たお偉い教授から「小孊4幎生にしおこの有限芁玠法的な着県点、末恐ろしい才胜です」ず握手を求められた時、俺はただひたすら冷や汗を流しおいた。

     遠くの保護者垭で、埋兄ちゃんが腕を組んで座っおいた。
     誇らしげにするわけでもなく、呚囲の拍手にも加わらず、ただ掲瀺板の賞状の傟き玄2床巊䞊がりをひどく䞍満そうに睚み぀けおいた。

       兄ちゃん、俺、もう二床ず倏䌑みの宿題をサボらないよ。
     だっお、来幎もあんな恐ろしい論文を曞かされたら、今床こそ俺の頭が耐えきれずに圧瞮されちゃうからさ。

     
     
    AIを盞棒に、笑っお泣けお肩の力が抜ける物語を玡いでいたす。心理孊の芖点を亀え、子育おやゞェンダヌ、繊现さHSPなど心の機埮を描く珟代ドラマや䞍思議な話が埗意です。䜜品はなろうやKindleで公開䞭。Kindle Unlimitedなら無料で読めたすので、ぜひお気軜に

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