
140字小説:R.8.1.26以降②
あぁ、もう私の頭から雪解けの水が流れて顔や体を伝い、足元に落ちて溜まる。腕の先には花が小さく咲いて、穏やかな陽の光がまだ冷たい風と共に肩を揺らす。足元の水は溢れると私から離れて旅に出る。もう行ってしまうのか、あの遠い海へと。萌芽はまだか。君が芽吹くまで、もう少し、寝て待とう。
「俺が即位する時には、お前に隣にいてほしい」
「すみません殿下……」
思わず眉間を押さえた。
「そのお言葉は私ではなく将来娶る奥方にお伝え差し上げてください」
「お前は練習もさせてくれないのか!?」
「練習なら練習と仰ってください!」
初心な殿下が喚くと、腹心の部下も唸った。
「愛してるの」
彼もそうかな?
「全て捧げるわ」
要らないと言われたら?
「望むものをあげるわ」
愛を疑われるかも。
「体に私の気持ちを刻み付けてやるわ」
じゃぁ切れ味のいいナイフをあげる。
「これで彼は私のものよ」
代わりにあなたを私にちょうだい。
ずっと一緒に、遊びましょう?
「ウッドの奴、俺がちょっと雨宿りに使うだけで怒るんだぜ。でけぇからってえばんなよな」
「そういえば、ウッドはバードの事よく悪態つきますよね。実力は認めているはずですが」
「小せぇクセに煩ぇからだろ」
「お前の意見聞いてんじゃねぇよ、スカイ!」
その様子をクラウドは穏やかに見ていた。
世界に優しい風が吹いたら、それは君への愛の歌。
いつか君が恋する時は、そんな歌が響く世界でありますように。
僕が流した赤い血も、失った命も、君が次の世代に繋いでくれますように。
もう君の側にはいられないけれど風になって君の側で歌うよ。
優しい世界で君が愛する人と豊かに暮らせますように。
僕は、推理小説を書いたり時代小説を書いたりファンタジー小説を書いたりしてきたけれど、次に書くなら君と培ってきたエッセイ……いや、恋愛小説を書いてみようと思う。似合わない?そうかもね。でも、君との出来事を、本にして残しておきたいんだ。僕から君へのプレゼントにして。
「慶次、可愛い娘連れてるやん。どこで拾ってきたんや」
「コンビニ。俺のお気に入りの泥棒猫」
「何やスリか」
「ちょ、私何も盗んどらんやん」
「俺のハート盗んだん、誰かな~」
「……!」
「ははは、ケイジとドロボウでお似合いやないか!」
「アホぬかせハゲ!」
「剃ってるんや、小娘!」
「うわ最悪。このタマゴパンあんまり美味しくないわ」
「あぁ、新商品の?残念だったね」
「口直しに違うパン食べたい」
「しょうがない。そんな貴女に親友からツナパンを授けよう」
「ははー。有難き幸せ」
もぐもぐ。
「このパンは世界を平和にするわ」
「いや大袈裟」
わたしは唄う。あなたのために。誰かのために。自分のために。
わたしは願う。自由を。愛を。平和を。希望を。未来を。
わたしは泣く。絶望に。挫折に。そして歓喜に。
わたしは信じる。わたしを。あなたを。人を。夢を。
きっと道は繋がるから。
きっと明日に繋がるから。