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Photo byturbo1019

国境を超えて(は言い過ぎかもしれないが)届いた本のこと

    点と線として、お店の間借りとかレンタルスペースとかを利用させてもらって、新刊本を売ることが時々ある。それなりに気力とかもろもろが必要なので、そう頻繁には今のところ出来ていない。月に一度くらい出来たら良いかな、くらいの気持ちでいる。

    今日は、松江市中原町にある「ファンパ」さんで2度目の出店だった。「本屋さんもファンパにいる日」として、ファンパさんには通常通りオープンしてもらい、そこの一部をお借りして、点と線として営業させて頂いた。

    建物の2階なので、わざわざ建物の中に入って、階段を上がって来ないとたどり着けない位置にある。そんなに利用者が来ない日も無いわけではない。今日も割とそんな感じだった。そういう日もある。

    想定していた営業時間が終わりに近づく頃、利用者があった。でもそれは、ファンパさんを訪ねてきたというよりも、点と線の出店を知って、点と線を目掛けて来てくれた感じだった。とてもありがたい。

    来てくれたのはカップルで、特定されると困ると思うので適当にぼやかして書くと、共に日系の家庭に生まれた、海外にルーツのある二人だった。女性の方と先日イベントで知り合い、点と線の活動に興味を持ってくれ、パートナーさんも点と線のことを知ってくれている(でも会ったことは無い)ということで、二人で来てくれた。男性とはお互いをスマホ越しに認識はしていたものの、対面するのは初めてだった。

    本を広げている点と線に対面するのは二人とも初めてで、二人とも興味深そうに眺めてくれた。何冊か実際にページをめくってもらったりしながら本の話をして、一冊本を買ってくれた。

    買ってくれたのは、私と同じ81年生まれでもある、荻上チキさんのちょっと昔に刊行された書籍だった。個人的に彼の社会的な姿勢を真摯的に感じており、彼の本の中でも、点と線のフィーリングに合うものを並べたくて仕入れていた。Instagram越しにフォローしていた男性のフィーリングや読書傾向なら多少なら見ていたから、「合うと思いますよ」と伝えて、いろいろ目次を読んでもらったりしながら語らい、結果的にその本を買っていってくれた。

    仕入れてからしばらく日にちが経っていたその本は、誰かフィーリングの合う人に買ってもらえたら嬉しいな、と思いながら並べていた。結果的に、とても相応しい人の元に渡っていった感じがして、本屋としてじんわりと満たされた気持ちになった。

    こういうのは、売上の額とかでは無いな、と思う。本は仕入れて並べることはできても、相手の気持ちが動かなければ買ってもらうことは難しい。イベントのフライヤーや、名刺を持ち帰ってもらうわけでは無いし。売上的には、今日はそんなに大きく動いたわけでは無かったけれど、必要としてる人に相応しい本が手渡せるのは、本屋として気持ちの良いことだった。

    こういう日もあるんだな。そうしみじみ感じながら、帰路についた。知り合ったばかりの海外にルーツのある人が、パートナーを連れて自分を目掛けてきてくれて、相応しい本を購入してくれる。点と線をやっていなかったら今日の感覚は味わえなかったと思う。規模は小さくとも、本屋冥利につきる。そんな一日だった。

     
     
    島根県松江市在住の元プロ書店員(経験7年半)。81年生まれ。本屋的活動「点と線」開始。好きな言葉は「何とかなるし何とかする」「世界はまだ名前のついていない才能であふれているなあ」「休む為に働く訳じゃなく、従う為に学ぶ訳でもない」「一人を超えてゆけ」。

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