
あの頃を持ちに行く
477.あの頃を持ちに行く
ここで働くのは何年ぶりだろう。
ここから見る景色は、あの時からほとんど変わらない。
隣で作業する同僚、遠くで働く同僚。
手元の配置。
あの日した会話がつながっている気がした。
ドラマが好きだ。お子さんはいくつになったのか。あの頃はああだったとか。
一番下の子は保育園から小学四年生になっていた。
会話の温度も、仕事のスピード感も、何ら変わらない。
話したいことがたくさんある。
聞いて欲しいことがたくさんある。
そんな中。
「持ちに行く」
一瞬意味がわからなかった。
それと同時に、久しぶりに聞いたと思った。
(そういえば、みんなこう言ってたな)
だが手は動き続ける。
当たり前だった素振りをしながら。
次に何するかを考えなくても、仕事が進む。
その後も、積もる話を切り崩しながら会話が進む。
話したいことはまだある。
それでももう、定時の時間。
「お疲れ様です」あの頃と同じトーンで。