
こんにゃくって、誰が最初に食べようと思ったん?|イノシシも食べない芋を攻略した人類の執念
先日、こんにゃくを食べながら、ふと思ったんです。
こんにゃくって、誰が最初に食べようと思ったん?
いや、私あんまりこんにゃく好きじゃないんですが、最近久しぶりに御岳山に行ったんですよ。
以前からたまに「原稿旅行」と称して、宿坊に寝泊まりして原稿を仕上げるという、文豪の真似っこみたいなことをしてたりして。
で、その宿坊で出てくる刺身こんにゃくが、私の知っている一般的なこんにゃくと全然違って!!
めちゃくちゃ美味しいんですよ!!!!
で、久しぶりに食べたくなって行ってきました御岳山。笑
そして、私が大好きなこんにゃくメーカー(有)向山食品さんのこんにゃくを、腕が千切れるくらい買い込んできました。
しばらく、こんにゃくが潤うぜ!(こんにゃくが潤うとは?)

で、冒頭に戻ると。
そもそも誰が食べ始めたんだろう?
いや、大豆とか小豆なら、まだ分かるんですよ。
なんか豆がなってる。
とりあえず煮てみる。
お、食える。
うん、分かる。
私でも発見できそう。笑
じゃがいもも、まあ分かる。
土から芋が出てきた。
焼いてみる。
お、うまい。
分かる。
でも、こんにゃくは分からん。
だってあれ、最初からあのプリプリした四角い状態で畑から生えてくるわけじゃないんですよ?
当たり前だけど。笑
原料は「こんにゃく芋」という、サトイモ科の植物です。
で、このこんにゃく芋。
そのまま食べられません。
どういうことだってばよ。
日本こんにゃく協会によると、こんにゃく芋にはシュウ酸カルシウムが多く含まれていて、その針状の結晶が口の中の粘膜を刺激するため、生でもダメ。煮てもダメ。
口の中がピリピリ痛くなるらしい。
しかも、畑を荒らすイノシシすら食べないと言われている。
……。
いやもう、そこで諦めろよ、人類。🤣
イノシシが「これはやめとこ」って判断したものに対して、人間だけが「いや、まだ何か方法があるはずだ」ってなってる。
何その執念。
詳しく聞かせて。笑
しかも、普通に煮るだけでは攻略できない
こんにゃく芋を食べられる「こんにゃく」にするには、芋をすりつぶしたり粉にしたりして、水を加えて練って、そこにアルカリ性の凝固剤を入れる。
昔は草木を燃やしてできた灰から取った「灰汁(あく)」が使われていました。
すると、こんにゃく芋に含まれるグルコマンナンが固まって、私たちが知っている、あのプリプリしたこんにゃくになる。
さらに煮て、水にさらして、アクを抜く。
つまりですよ。
最初の誰かは、「この芋、食ったら口痛いな」となったあと、「煮てもダメか」となって、普通ならここで終了するはずなのに、
「じゃあ、すりつぶして灰汁を混ぜてみるか」まで行ってる。
なんで???🤣
どういう思考回路でそこに到達したん。
で、結局「最初に食べた人」は誰なのか
気になったので調べてみました。
結論から言うと、分かりません。笑
日本こんにゃく協会にも、
誰が思いついたかは定かではありません
とあります。
ですよね!!!
そこ一番知りたかったけど!!笑
ただし、こんにゃくの歴史自体はかなり古いようです。
こんにゃく芋の原産地はインドシナ半島とされていて、中国では少なくとも3世紀ごろには、こんにゃくを灰汁で固めて食べる方法が知られていたと考えられています。
3世紀ごろの中国について記した『蜀都賦』には、こんにゃくの根を灰汁で煮ると固まり、それを酢に浸して食べる、という内容の記述が残されています。
3世紀。今から1700年以上前。
すでに人類、こんにゃく攻略済み。
早いなオイ!!笑
でも、なんでそこまでして食べたかったんだろう?
ここまで調べて、もうひとつ疑問が湧いてきました。
そもそも、なんでそこまでして食べたかったんだろう?
だって、こんにゃく芋以外にも食べ物はあるわけじゃないですか。
いや、現代人の感覚で言えば、ですけど。
昔は今みたいに、スーパーへ行けば世界中の食材が並んでいる時代じゃありません。
土地によって育つものも違えば、季節によって手に入るものも違う。
食べ物が足りないことだってあったでしょう。
そんな中で、食べられそうな芋がある。
でも、食べたら痛い。
……。
いや、食べたいんだけどなぁ!!!
となった人がいたのかもしれません。笑
もちろん、実際にどういう経緯でこんにゃくの製法が発見されたのかは分かりません。
たまたま灰が混ざったのかもしれないし、別の植物で使っていた加工方法を応用したのかもしれない。
ただ、ここで思うんですよ。
私たちは、すでに完成したこんにゃくを知っているから、「なんでわざわざそんな面倒くさいことを?」と思う。
でも、まだ食べられる方法を知らなかった人にとっては、試す価値のあるものだったのかもしれない。
同じ行動でも、その人が置かれている状況によって、合理的かどうかは変わる。
今の私には「諦めろよ、人類🤣」としか思えないことも、その時代の誰かにとっては、切実な挑戦だった可能性があるわけです。
そう考えると、ちょっと見方が変わりません?
……まあ、それでも。
最初に灰汁を混ぜた人の思考回路だけは、やっぱり詳しく聞きたいけど。🤣
日本にも、かなり昔からいた
日本への伝来時期については諸説あるようです
植物そのものは縄文時代ごろに入ってきていた可能性があり、食べ物や薬としてのこんにゃくは、6世紀ごろ、仏教とともに中国から伝わったのではないかとも考えられています。
ただし、このあたりははっきりした記録が残っておらず、確定しているわけではありません。
日本で食用こんにゃくについて確認できる古い文献のひとつが、平安時代の百科事典『和名類聚抄』。
931〜937年ごろに成立した本で、先ほどの中国のこんにゃくの作り方も紹介されています。
その後は僧侶や貴族の食べ物、精進料理などとして広がり、鎌倉時代以降になると民間でも食べられるようになり、江戸時代には、かなり一般的な食材になっていったそうです。
そして1846年には、『蒟蒻百珍』なる料理本まで登場しています。
百珍。
こんにゃく料理だけで一冊。
人類、最初はあんなに食べられなかった芋を、最終的に100通りくらい料理し始める。
極端なんよ。笑
しかも江戸時代、さらに魔改造される
ただ、昔のこんにゃくには弱点がありました。
こんにゃく芋って、腐りやすいんです。
しかも収穫できる季節も限られる。
そこで1700年代、現在の茨城県にいた中島藤右衛門という人が、こんにゃく芋を薄く切って乾燥させて、粉にする方法を考案したとされています。
これによって保存しやすくなり、遠くまで運べるようになり、一年を通してこんにゃくを作りやすくなった。
つまり、最初の人類が「食えん芋を、なんとか食えるようにする」という壁を突破し、
後世の人類が「でも腐るし運びにくいよね」という壁を突破し、
現在の、スーパーで138円くらいで普通にこんにゃくを買える世界につながっている。
……そう考えると、こんにゃく一枚の裏に、まあまあ壮大な人類史があるわけで。いや、意味わからないな。笑
しかも、こんにゃくの歴史って、食べられるようになったところで終わってないんですよね。
保存できるようにした人がいて、運べるようにした人がいて、料理を考える人がいて。
そして現代にも、私みたいな「こんにゃくはそんなに好きじゃない」と思っていた人間を、わざわざ御岳山まで買いに走らせるこんにゃくを作る人がいる。
これ、すごくない?
1700年以上前の誰かの試行錯誤が、今もちゃんと進化してるんですよ。
しかも、その結果が私の冷蔵庫に大量に入ってる。
人類の叡智、買いすぎた🤣
食文化って、「誰かが諦めなかった歴史」なのかもしれない
こういうのを調べていると、食べ物って面白いなと思います。
今の私たちは、こんにゃくを見ても、「おでんに入れようかな」「豚汁に入れようかな」くらいしか考えませんよね。
でも、その「普通に食べられる」という状態になるまでに、誰かが食べてみて、失敗して、別の方法を試して、また失敗して、偶然うまくいったものを残して、さらに次の人が改良する。
たぶん食文化って、ひとりの天才が突然発明したものというより、名も残っていない大量の人たちの試行錯誤が積み重なったものなんでしょうね。
こんにゃくを初めて食べた人が誰なのかは、分かりません。
でも少なくとも、最初のほうでこんにゃく芋を口に入れた誰かは、「痛っっっ!!」とはなったはずです。笑
そこでやめなかった。
次の誰かもやめなかった。
こんなん、こんにゃく界のワンフォーオールじゃん。じぃ〜ん…
その結果、1700年以上たった今、私は何も知らずに、からしをつけて田楽を食べている。
ありがとう、名もなき執念深い人類。
そして、こんにゃくを買いに出かけたら、思わぬ発見があった
で、今回、久しぶりに御岳山へ出かけて、もうひとつ発見したことがありました。
ラジウム泉のお風呂があるんですって!!
御岳山の宿坊「山香荘」には、ラジウム泉のお風呂があるそうで。
えーーー!!
ここ、そういうお風呂もあったの!?
以前から何度も足を運んでいたのに、全然意識したことがありませんでした。
今、がんの治療をしていることもあって、ラドンやラジウム泉について調べたりしているんですよね。
もちろん、こうしたお風呂でがんが治ると証明されているわけではありません。
ただ、今まで気にも留めていなかった情報が、急に自分に関係のあるものとして目に入ってくる。
これが面白いなと思って。
そして、もうひとつ。ワサビです。
御嶽駅の出入り口付近では、生ワサビが400円くらいから販売されているんですよ。
このワサビをすりおろして、刺身こんにゃくにつけるとですね……。
もうね……。
めちゃくちゃ美味しいんですよ!!!!✨
で、ワサビについてもちょっと調べてみたんです。
そしたら、本ワサビに含まれる「6-MSITC」という成分が、がん研究でも注目されていると知りまして。
細胞実験では、一部のがん細胞の増殖を抑えたり、細胞死を促したりする作用が報告されているそうです。
乳がん細胞を使った研究まであるらしい。
ワサビ、お前そんな研究までされてたんか!!🤣
ただし、これは主に細胞や動物を対象とした基礎研究の話。
人間がワサビを食べればがんが小さくなる、という意味ではありません。
そこはちゃんと分けて考えたいところです。
でも、こういう研究があること自体、私は全然知らなかった。
以前なら、「ワサビ美味しい〜!」で終わっていたのに、今回は、「このワサビって、どんな植物なんだろう?」と調べるようになった。
同じものを見ていても、今の自分だから気づくことがあるんですね。
同じ場所でも、今の自分が行くと、違うものが見える
ここまで書いて、なんだか今回の御岳山行きって面白かったなと思いました。
最初の目的は、ただのこんにゃくです。
こんにゃくを買いに行っただけ。笑
なのに、こんにゃくの歴史を調べて、人類の執念に感動して、ラジウム泉のお風呂があることを知って、ワサビの研究についても知った。
しかも、御岳山は初めて訪れた場所じゃないんですよ。
以前から何度も行っている。
でも、今回初めて気づいたことがある。
場所が変わったんじゃなくて、私の興味や関心が変わったんでしょうね。
以前の私は、ラジウム泉なんて気にしていなかった。
ワサビの成分についても考えたことがなかった。
でも今は、がんの治療をしていることもあって、そういう情報に自然と目が向く。
だからといって、病気になってよかった、なんて思いません。
そんなものは、ならずに済むならならないほうがいいに決まってます。笑
ただ、今の自分だから見えるものがある、というのは確かなんだろうなと思いました。
そしてもうひとつ。
こういう発見って、家で調べているだけでもできるのかもしれないけど、実際に出かけて、食べて、景色を見て、偶然何かに出会うことで、初めて生まれる疑問もあるんですよね。
私は今回、こんにゃくを食べなかったら、そもそもこんにゃくの歴史なんて調べなかったと思います。
御岳山に行かなかったら、ラジウム泉にも気づかなかったかもしれない。
ワサビを買わなかったら、ワサビの成分にも興味を持たなかった。
出かけるって、単に場所を移動することじゃなくて、新しい疑問に出会いに行くことでもあるんだな。
なんて思ったりしました。
私が今やっている『余命より、予定。』という未来接続実験も、結局こういうことなのかもしれません。
未来に予定を入れるというのは、必ずしも壮大なことじゃなくていい。
旅行でも、仕事でも、美味しいものを食べに行くでも。
「ちょっとあれ食べたいな」だけでも、人は外へ出かける理由をつくれる。
そして外へ出た先で、予定していなかった何かに出会う。
それがまた、次の予定につながっていく。
……まあ、今回に関しては、こんにゃくを買いに行って、人生の話まで広げすぎな気もしますが。🤣
今度こんにゃくを食べるときは、ぜひ一度、思い出してください。
あなたが何気なく箸でつまんでいるそのプリプリした物体は、もともと、イノシシすら食べないと言われる芋を、人類が無理やり攻略した結果です。
そう思うと、おでんのこんにゃくが、ちょっとだけ愛おしく……
なるかどうかは知りません🤣
でも、今回の私は、御岳山へ行ってよかったなと思いました。
綺麗な空気を吸って、美味しいものを食べて、知らなかったことに出会う。
そして買って帰ったこんにゃくに、生ワサビをすりおろして食べる。
もうね。
人間って、こんにゃくとワサビだけでこんなに幸せになれるんだなって。
戦争とかしてる場合じゃないよほんと。
みんなでこんにゃくとワサビ食べよ。
って気分になります。(情緒)
そんなわけで、御岳山。
東京の奥地にある、私のお気に入りの場所です。
気になった方は、ぜひ遊びに行ってみてください。
……そして、もし行ったら。
帰りの荷物がこんにゃくだらけになる可能性があるので、腕の筋トレだけしておくことをおすすめします。🤣