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絵画が魅せる、日常と妄想のすれ違い。

    「Neighbor's Garden」展のフライヤーを開いて見えたもの

    【展覧会名】 笠井麻衣子 「Neighbor's Garden」

    【美術館・ギャラリー名】 YUKA TSURUNO GALLERY

    【開催時期】 2013年8月24日~2013年9月21日

    今回は2013年夏に東京・東雲(しののめ)にあった「YUKA TSURUNO GALLERY」で開催された、笠井麻衣子さんの個展「Neighbor's Garden」のフライヤーです。

    一見すると、背の高い草むらの中で青い髪の少女がポツンとたたずんでいる、ノスタルジックで美しい一枚の絵。
    「この少女は何をしているんだろう?」「この場所はどこなんだろう?」と、不思議な妄想が膨らんできます。

    「一枚の絵」との出会い

    この正方形のスクエア型フライヤーの表面に大きく配置されているのは、笠井麻衣子さんの『A caller early morning』という作品です。

    実物の作品は大きなキャンバスに油彩で描かれた大作ですがこのまま飾れそうなクオリティのフライヤーです。
    まず目を奪われたのは、荒々しくも繊細な筆のタッチと、草木の生い茂る画面の中央に立つ少女の姿でした。

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    このまま飾れそうな厚手の用紙のフライヤー

    青い長い髪を風になびかせ、手には大きなシャベルを持っています。
    「A caller early morning(朝早くの訪問者)」というタイトルがついているにもかかわらず、彼女が立っているのはどこかの家のきれいな玄関先ではなく、背丈を超えるほどの雑草がうっそうと生い茂る場所です。

    「彼女はここで何を掘ろうとしているのだろう?」
    「誰かの家を訪ねてきたのに、道に迷ってしまったのかな?」
    一枚の絵から、まるで一冊のミステリー小説の序章を開いたような感覚。

    身近な風景が「怪しい物語」に変わる瞬間

    「雑草が生い茂る空き地」
    「水やりを終えた後の湿り気を感じる庭」
    「ついさっきまで話し声が聞こえてきた玄関先」——。
    笠井さんが作品の着想を得ているのは、どこか遠い異国ではなく、私たちが日常で何気なく通り過ぎているごく身近な空間。

    住宅街を歩いていると、たまに手入れがされず雑草が伸び放題になっている空き地や、隣の家の塀の奥に広がる庭が見えることがあります。
    「どんな人が住んでいるんだろう」「奥には何があるんだろう」と、ほんの少しの好奇心と不気味さを感じるあの感覚。
    そんな日常のすき間に潜む「気配」や「妄想」をすくい上げ、キャンバスの上にドラマチックな場面として立ち上げているのだと感じられました。

    笠井さんは日常の中で目にする風景に、自身が作った物語を組み込んで創作をしているとの事。
    様々な武器を手にした少女やウサギの着ぐるみなど、一風変わったユニークなモチーフが登場しますが、それらは単なるファンタジーではなく、「社会的に制御された側面」や「生活するための訓練の必要度」といった、現代社会を生きる人間が直面する現実的なテーマも映し出しているとのことです。

    「隣人」という距離感が教えてくれる現代アートの楽しみ方

    この展覧会のタイトルになっている「Neighbor's Garden(隣人の庭)」。 笠井さんは次のような非常に興味深い制作意図を明かしています。

    「『Neighbor's Garden』では、感じ取れるようで感じ取る事ができない風景や場面と距離を保ちながら生まれるイメージを、それらを所有する人たちの『隣人』という立場になって作品を作り出したいと思う」

    アート鑑賞というと、「作者が何を言いたいのか完璧に理解しなければならない」「正しい知識がないと楽しめない」と難しく考えてしまいがちです。 しかし、この「隣人」というキーワードは、現代アートを楽しむための素晴らしいヒントを与えてくれます。

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    完全に自分のもの(=100%理解できるもの)にはできないけれど、適度な距離を保ったまま「お隣さん」として妄想を楽しむ。
    完璧に分からなくていい。
    垣根越しに覗き込んで『何か面白そうなことが起きているな』とワクワクするくらいが一番贅沢なアートの楽しみ方なんだ、ということに、このフライヤーの言葉を通して気づかされた気がします。

    TOLOTという工場ギャラリー(?)

    余談ですがこの個展が行われたTOLOTについて。
    2021年に閉館してしまった様ですが、りんかい線「東雲駅」近くにある広い工場(?)の中にいくつかのホワイトキューブがある空間でとても好きなアートスペースでした。
    リヒターのガラス作品がエントランスにあったのをおぼろげに覚えていますが休憩スペースのあたりにクレーンのスイッチがぶら下がっていたり、非日常を味わえる特異なスペースは仕事で疲れた時に現実逃避できたので閉館してしまったのがとても残念です。


    最後まで読んでいただきありがとうございました。


     
     
    1枚のフライヤーをテーマに思い出すこと、思い出せないこと、当時のデザインについて書いていきます。 きまぐれで映画やドラマの感想なども。

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