
ノーベル賞2026 日本人候補と関連銘柄 10月5日から発表、過去4例の株価反応も検証
【10月3日更新】
2026年のノーベル賞は10月5日の生理学・医学賞から発表が始まる。今年は柳沢正史氏と中外製薬3研究者のラスカー賞、安達千波矢氏のクラリベイト引用栄誉賞、宮坂力氏の京都賞と、日本の研究者に国際的な受賞が相次いだ。
第1講では、有力研究者と日本株の関係を研究テーマだけで判断せず、医薬品承認、製品売上、量産設備、設備投資までたどる。さらに2018年以降の日本人受賞4例について、受賞翌営業日と約1カ月後の株価を比較した。
◆ノーベル賞2026 10月5日18時30分から発表開始
ノーベル財団の公式日程によると、生理学・医学賞は10月5日、物理学賞は6日、化学賞は7日、文学賞は8日に発表される。発表予定時刻を日本時間にすると次の通りだ。
生理学・医学賞 10月5日18時30分以降
物理学賞 10月6日18時45分以降
化学賞 10月7日18時45分以降
文学賞 10月8日20時00分以降
いずれも東京市場の取引終了後となる。受賞結果が日本株に反映されるのは翌営業日だ。

なお、ノーベル賞の推薦者や候補者に関する資料は50年間非公開で、2026年の正式な候補者名簿は公表されていない。本稿の「候補」は、クラリベイト引用栄誉賞、ラスカー賞、京都賞などの国際的評価と研究実績をもとに、アセットアライブが継続して追っている研究者を指す。
2025年には坂口志文氏が生理学・医学賞、北川進氏が化学賞を受賞した。2人はいずれも、アセットアライブが2024年のノーベル賞候補記事で取り上げていた研究者だった。
◆安達千波矢氏 TADF量産へ日本曹達が設備投資
物理学分野では、九州大学の安達千波矢氏が2026年のクラリベイト引用栄誉賞に選ばれた。Stephen R. Forrest氏、Mark E. Thompson氏とともに、リン光有機ELのPHOLEDと熱活性化遅延蛍光TADFによる高効率有機EL研究が評価された。
安達氏は九州大学発スタートアップKyuluxの共同創業者でもある。上場企業では(4041)日本曹達が2024年にKyuluxと資本業務提携し、TADF発光材料の量産に向けたプロセス開発と設備投資を担当している。
提携の目的は、世界初となるTADFの量産・安定供給体制の構築だ。日本曹達にとってTADFは既存製品の増産ではなく、新たに立ち上げる有機EL材料事業になる。安達氏への受賞期待とは別に、日本曹達ではTADFの量産設備そのものが中長期の事業材料になっている。
◆柳沢正史氏 オレキシン研究から武田薬品の承認薬へ
生理学・医学分野では、筑波大学の柳沢正史氏が2026年のアルバート・ラスカー基礎医学研究賞を受賞した。柳沢氏は睡眠と覚醒を制御する神経ペプチド「オレキシン」を発見し、オレキシン欠乏がナルコレプシーを引き起こす仕組みを解明した。
この研究を医薬品へ発展させたのが(4502)武田薬品工業だ。オレキシン2受容体作動薬オベポレクストンは、2026年7月に中国、8月5日に米国、8月24日に日本で承認され、日本では「オーゼイフル」として販売準備に入っている。
オレキシン発見から約30年を経て、研究成果は中国、米国、日本の3市場で承認された医薬品となった。武田薬品の業績を見るうえでは、ノーベル賞の結果より、オーゼイフル発売後の処方拡大と売上規模の方が重要になる。
◆中外製薬3研究者 ヘムライブラ4072億円、NXT007は第III相へ
(4519)中外製薬の服部有宏氏、北沢剛久氏、井川智之氏は、血友病A治療につながる二重特異性抗体の発明で2026年のラスカー・ドゥベーキー臨床医学研究賞を受賞した。
血友病Aでは血液凝固第VIII因子が不足する。3氏は第VIII因子を補充する従来療法とは異なり、活性型第IX因子と第X因子を一つの抗体で結び、第VIII因子の働きを代替する創薬手法を実現した。この研究から生まれたのがヘムライブラだ。
ヘムライブラは研究成果の評価にとどまらず、すでに中外製薬の主力製品となっている。2025年の国内・海外合計の製商品売上高は4072億円に達した。
中外製薬はさらに、次世代二重特異性抗体NXT007の開発を進めている。2026年7月までに2本の第III相試験を開始しており、ラスカー賞を受賞した抗体技術が次世代薬の開発にも引き継がれている。
◆宮坂力氏 積水化学はペロブスカイトに1000億円投資
化学分野では、宮坂力・桐蔭横浜大学特任教授が有力研究者の一人だ。宮坂氏はペロブスカイト太陽電池を世界に先駆けて開発し、2017年のクラリベイト引用栄誉賞に続いて、2026年には「次世代太陽光発電技術『ペロブスカイト太陽電池』の創成」で京都賞を受賞した。
上場企業では(4204)積水化学工業がフィルム型ペロブスカイト太陽電池の量産を進めている。2028年度には100MW生産ラインをフル稼働させ、売上高250億円以上と事業黒字化を計画する。1GW供給体制では売上高1000億円規模を想定している。
1GWまでの総投資額は約3150億円で、このうち50%について補助金を受ける計画だ。2026~2028年度の中期経営計画には、第2期以降の投資約2000億円のうち、補助金控除後の1000億円を設備投資として織り込んでいる。
2024年にアセットアライブがペロブスカイト太陽電池を取り上げた時点では、研究開発や実証実験がテーマの中心だった。現在は1000億円の設備投資が中期経営計画に入り、2028年度250億円以上の売上目標まで示された。積水化学の株価を考えるうえでは、宮坂氏の受賞期待以上に、100MWラインの立ち上げと黒字化が大きな意味を持つ。
ここまで取り上げた4社は、利益への反映時期が大きく異なる。中外製薬はヘムライブラがすでに大型売上を計上し、武田薬品はオーゼイフルの販売開始を迎える。日本曹達はTADFの量産体制を構築する段階、積水化学は1000億円を投じて100MWラインを立ち上げる段階にある。
第2講では、日本曹達、武田薬品、中外製薬、積水化学について、製品売上、会社計画、設備投資をもとに2026~2028年の業績への寄与を詳しく取り上げている。
ノーベル賞2026関連銘柄 第2講 4社の業績を変えるか
https://note.com/asset_alive/n/nba9b5e1d1ebf
◆森和俊氏、藤田誠氏、細野秀雄氏 研究実績は高いが関連株は絞りにくい
2026年に大型科学賞を受賞した研究者だけが有力候補ではない。アセットアライブが以前から追ってきた森和俊氏、藤田誠氏、細野秀雄氏も世界的な研究実績を持つ。
森和俊氏は、異常なタンパク質が細胞内に蓄積した際に働く「小胞体ストレス応答」の分子機構を解明した。糖尿病、がん、神経変性疾患などへの応用研究が進むが、現時点では柳沢氏と武田薬品のように、特定の上場企業で大型製品が生まれている状況ではない。
藤田誠氏は、金属イオンと有機分子が自発的に構造を作る分子自己組織化で知られる。創薬、新材料、分子構造解析など応用分野は広いものの、特定企業の売上や利益への寄与を具体的に示せる事業はまだ限られている。
細野秀雄氏は透明酸化物半導体IGZOや鉄系超伝導体などで世界的に知られる材料研究者だ。IGZOはすでにディスプレーや半導体へ実用化されているが、関連企業が多いため、受賞期待だけを理由に特定銘柄へ結び付けるのは難しい。企業ごとの製品構成や売上規模まで確認する必要がある。
◆受賞翌日は3社上昇、1カ月後にプラスを保ったのは旭化成だけ
ノーベル賞発表後、関連株は実際にどの程度上昇したのか。
2018年以降の日本人受賞4例について、研究成果と事業上の関係が確認できる代表的な上場企業を取り上げた。受賞発表日の東京市場終値を基準に、翌営業日と約1カ月後の終値を比較した。
2018年 本庶佑氏 → (4528)小野薬品工業
受賞発表日3210円 → 翌営業日3308円(+3.1%)→ 約1カ月後2572円(-19.9%)
本庶氏が発見したPD-1を基礎に、小野薬品は抗がん剤オプジーボを実用化していた。受賞翌日は一時3430円まで上昇し、年初来高値を更新したが、約1カ月後には受賞発表日の終値を約2割下回った。
2019年 吉野彰氏 → (3407)旭化成
受賞発表日1106円 → 翌営業日1125円(+1.7%)→ 約1カ月後1274円(+15.2%)
吉野氏は受賞時に旭化成名誉フェローで、ノーベル化学賞はリチウムイオン電池の開発に対して授与された。翌営業日の上昇率は1.7%だったが、その後も買いが続き、約1カ月後には受賞発表日の終値を15.2%上回った。
2025年 坂口志文氏 → (4894)クオリプス
受賞発表日7290円 → 翌営業日7250円(-0.5%)→ 約1カ月後6730円(-7.7%)
クオリプスは、坂口氏が創業研究者であるレグセルをCDMO事業の重要取引先と位置付けている。ただし、この関係をクオリプスが適時開示したのは受賞4日後の10月10日だった。受賞翌日の値動きとこの事業関係を直接結び付けるのは適切ではない。約1カ月後の株価は受賞発表日の終値を7.7%下回った。
2025年 北川進氏 → (4004)レゾナック・ホールディングス
受賞発表日5848円 → 翌営業日6069円(+3.8%)→ 約1カ月後5722円(-2.2%)
北川氏はMOF(多孔性金属有機構造体)の研究でノーベル化学賞を受賞した。レゾナックは旧昭和電工時代から北川氏と多孔性金属錯体の研究開発で連携しており、受賞翌日の終値は3.8%上昇した。しかし約1カ月後には受賞発表日の水準を2.2%下回った。
4例のうち、受賞翌営業日に上昇したのは小野薬品、旭化成、レゾナックの3社だった。ところが約1カ月後も受賞発表日の終値を上回っていたのは旭化成だけだ。
小野薬品は-19.9%、クオリプスは-7.7%、レゾナックは-2.2%となった。ノーベル賞は発表直後の買い材料にはなっても、その後の株価まで保証するものではないことが4例の結果から分かる。
◆4社の株価評価 中外は既存収益、武田は新薬販売、日本曹達・積水化学は量産投資
中外製薬は既存収益の拡大、武田薬品は新薬販売、日本曹達と積水化学は量産投資が評価の中心になる。
中外製薬ではヘムライブラが2025年に4072億円の製商品売上高を計上しており、NXT007が次の成長を担えるかが株価評価に加わる。武田薬品はオーゼイフルの承認を終え、発売後の処方拡大と売上規模が業績への寄与を決める。
日本曹達ではTADFの量産開始と顧客採用、積水化学では100MWラインの稼働率と2028年度の黒字化が収益化の条件になる。中外製薬は既存収益と次世代薬、武田薬品は新薬の販売、日本曹達と積水化学は量産開始と設備投資の回収が株価評価の中心になる。
本稿で取り上げた4社以外にも、ノーベル賞の受賞発表をきっかけに物色される可能性のある上場企業は多い。ただし、研究テーマとの接点が強い企業と、すでに製品化や量産が進み業績への寄与が見込める企業では、株価材料としての重みが違う。
受賞者が発表された直後に、どの企業が実際の事業と結び付いているのかを一から調べるのは難しい。そこで生理学・医学、物理、化学、文学の4分野から関連40社を拾い、すでに売上・利益に反映している企業、事業化が進む企業、受賞時に物色されやすい企業の3つに分けた。発表当日に関連銘柄を確認するための一覧として使える。
ノーベル賞2026関連銘柄40社 医学・物理・化学・文学賞を「業績期待」で選別
https://note.com/asset_alive/n/n711da4a97a15
◆10月5日から受賞結果と翌営業日の株価を追記
本稿は各賞の発表後に受賞者と関連銘柄を追記する。翌営業日の取引終了後には終値も加え、2018~2025年の4例と同じ形式で2026年の株価反応を記録する。
発表週の速報だけで終わらせず、受賞直後に買われた銘柄が数日後、1カ月後にどう評価されたかまで継続して追う。
◆合わせて読みたい
日本曹達、武田薬品、中外製薬、積水化学の4社については、ノーベル賞との接点だけでなく、TADF量産、オーゼイフル販売、ヘムライブラとNXT007、ペロブスカイト太陽電池への設備投資まで踏み込み、2026~2028年の業績への影響を個別に分析している。
https://note.com/asset_alive/n/nba9b5e1d1ebf
さらに候補を広げたい場合は、生理学・医学、物理、化学、文学の4分野から関連40社を取り上げた。すでに売上を生んでいる企業、量産や開発が進む企業、受賞時に物色されやすい企業を分けて掲載しているため、発表当日の関連銘柄確認にも使える。
https://note.com/asset_alive/n/n711da4a97a15
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