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自由と孤独まみれの一人旅、充電1%で知る等身大の自分

    1人で旅をするのは、最高です。

    全日程を自分の思い通りに組み立て、行きたい場所だけを予定に詰め込み、その瞬間に食べたいものだけを食べる。

    そこにあるのは、誰にも邪魔されない完全な自由です。


    しかし、旅における自由とは、「誰も自分を助けてくれない」という孤独な責任と表裏一体でもあります。

    乗るはずだった電車が突然止まっても、ホテルの予約がうまく取れていなくても、あるいは道に迷って途方に暮れても、すべて自分1人で解決しなければなりません。

    旅において、何のトラブルも起きないことなど基本的にはあまりないのですが、だからこそ魅力的なアクティビティだと思うんですよね。

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    数年前、熊本へ一人旅に出た時のことです。中心地である熊本駅から電車・バス・徒歩で1時間半ほど移動し、安藤忠雄氏の建築(熊本県立装飾古墳館)に訪れました。

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    感想はまた熊本の建築巡りでゆっくりお伝えできればと思うのですが、別にそこまで大変な思いをして行く建築ではなかったかな…(撮影:筆者)

    それはそれとして、その後ホテルへ行こうと思ったら、行きと同じルートはその日はもう無くて、山の中の道を1時間ほど歩いてからバスで行くしかなく、小雨の降る中歩き始めました。

    ここで、携帯の充電が少なくなっていることを、私は甘くみすぎていたのです…


    Googleマップ片手に歩き始めたのですが、夕暮れの薄暗い山あいはなんだか不安を煽るような色をしていました。

    そんななか歩いていると、Googleマップが示す道に、「この先土砂災害にて通行禁止」の看板が出てきたのです。

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    この先が通行禁止になっていました(撮影:筆者)

    「え?バスは最終便だから遅れたらホテルまで4時間歩かないと行けないし、どうしよう」とパニックになりつつ、焦りの中Googleマップで見つけた森に入る細い道を、藁にもすがる思いでわけいって進みました。

    心は折れかけていましたが、なんとか森を抜けることができ、文明を感じながらバス停に到着できました。

    ほんとうに勝ち誇った気持ちで、なんでもできる気がしました。


    ……しかし、本当の恐怖はそこからでした。

    バス停に着いた時点でスマホの充電は10%を切り、しかも待てど暮らせどバスが来ないのです。


    「あと5分か、もうすぐだな」
    「田舎だから5分くらいは遅れるか」
    「……え、30分来ないのはまずくない?」
    「1時間来ない……充電もあと2%……え、ここで死ぬのわたし……?」
    「1時間半遅れ……充電1%……お腹減った……さようならみんな……」


    そして2時間後、ついにバスが来ました!!!!!

    怒りなど一切なく、安心で涙が出る寸前。コンセント付きの座席で命綱(スマホ)を充電し、無事にホテルへ辿り着いたあとの大浴場とサウナ、そして晩ご飯は、信じられないくらい気持ちよく、美味しかったことを覚えています。

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    うま~~(撮影:筆者)


    この旅で学んだことは、「旅行には必ずモバイルバッテリーを持っていけ」という身も蓋もないものです。

    しかし同時に、私は痛感したのです。

    自分という人間が、たかがスマホの充電が切れただけで山奥で死を覚悟するほど無力でちっぽけな存在であること。

    そして、無事に宿に着いて温かい湯に浸かり、ご飯を食べるだけで涙が出るほど幸福を感じられる、単純な生き物であることを。


    よく、「自分探しの旅に出ても、本当の自分なんて外には転がっていないよ」という人がいます。確かに、どこかの絶景の中に新しい自分が落ちているわけではありません。おっしゃる通りです。

    しかし、見知らぬ土地で一人トラブルに見舞われ、剥き出しの孤独を味わうと、「世界はなんて広く、理不尽なんだ」「それに比べて、自分はなんてちっぽけなんだ」と嫌でも気づかされます。


    それは熊本の暗い山道であろうと、圧倒的なスケールを持つ世界の果ての絶景であろうと同じです。

    その圧倒的な世界の広さ(と、バスの来なさ)を前にすれば、変に自分を過大評価して驕り高ぶることもなくなりますし、逆に無意味な過小評価をして卑屈になることもなくなります。

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    世界は広いです、というか、地球はデカいです(撮影:筆者)

    ただ「等身大」で生きて、目の前のご飯を美味しいと感じられればそれでいいのだと、肩の荷が下りる感覚を味わうことができるのです。


    自分の現在地を相対化し、等身大のサイズを知る。

    そういう意味での「自分探し」という言葉であるならば、あながち大きく間違ってはいないなと、旅の空の下で思いました。



    【合わせて読みたい】

    「予定通りにいかない理不尽さ」こそが、一番深く刻まれたりします。 だったら最初から、タイパを求めなくてもいい。旅先で30キロの道のりを歩き通したバカバカしくも最高に贅沢な記録はこちらから↓



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    aulora

     
     
    建築を通し、世界の解像度が少し上がる 一級建築士|設計事務所勤務 全国47都道府県・海外8カ国を巡り、建築を通して出会った景色や気づきを綴ります。 名建築の空間や差し込む光、その土地の歴史。設計業界の実情や、仕事と人生についての思考も。 世界を少しだけ美しく整えるための備忘録

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