
影を許さない時代に、空間の「艶」をどう描くか
建築巡りをするなかで、最近完成したばかりの真新しい建築や空間を見て、
ふと「色気がないな」と感じることが増えました。
もちろん、完成したての新品なのだから、使い込まれたような凄みを感じないのは当たり前かもしれません。
しかし、それを差し引いても、最近のピカピカの新建材で覆われた新築空間には、どうしても決定的な色気が欠けている気がしてならないのです。
私たちが美しいと感じる空間には、なんとなく言葉にできない艶やかさや、奥ゆかしさがあります。
しかし現代の多くの空間は、とにかく明るさばかりが優先されています。
天井に無自覚にダウンライトを均等に並べ、部屋の隅々まで影を許さない均質な明るさで満たしてしまう。
そして、傷や汚れがつきにくいという理由だけで選ばれた、フェイクの木目やツルツルとした新建材で表面を覆う。
結果として出来上がるのは、陰影が薄く、どこまでも平坦で「のっぺり」とした、奥行きのない空間です。
そこには、光と影が織りなすドラマも、
素材が持つ本来の凄みも存在しません。

もちろん、設計の現場を取り巻く環境が過酷であることは事実です。
年々厳格化される法規制、そしてあらゆる建築資材の異常な物価高騰。
少しでもこだわった素材を使おうとすれば予算は跳ね上がり、安全面や効率を盾に、好きにできる余白はどんどん奪われています。
安価で施工性の良い新建材に頼りたくなる作り手の事情も、
痛いほどわかります。
しかし、その時代の流れや制約に抗うことなしには、
人の心を打つような素晴らしい空間は絶対に生み出せません。
予算が厳しいから、法規がうるさいからとのっぺりした箱を作るだけなら、建築士は必要ないのです。
では、そんな世界でどうやって我々の価値を示していくのか。
例えば、空間の質を大きく左右する「照明」の計画について。