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物分かりのいい先輩という、自業自得のパラドックス


    「なりたい自分を思い描いて前に進もう」
    「嫌ならすぐ辞めればいい、逃げていい」
    「諦めなければ必ず花開く」


    SNSを開けば、今日もそんなポジティブな言葉たちが画面を埋め尽くしています。 それはきっと、本当に誰かを救うための、正しい言葉なのだと思います。

    でも、そんな眩しい言葉を目にするたび、私の心の奥底では「そんなに簡単に割り切れない」と、どうにも拭えない感情が湧き上がってきます。


    前へ前へ進む人たちの足取りを見ていると、もがいている自分がひどく不器用で要領の悪い存在に思えてしまう。

    他人の鮮やかな正解を突きつけられて、どこか置いてけぼりにされているような、そんな焦りを感じてしまうのです。

    ただの妬み嫉みです。
    素直に言葉を受け取れない、
    ひねくれた自覚はあります。


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    しかし、私がこうしたSNSの綺麗事に対して感情が揺らいでしまう一番の理由は、他人に対してではなく、私自身の中に「ある決定的な自己矛盾」が存在するからです。




    私はいままでの職場の後輩たちに対して、常々こう伝えています。

    「いろんな道があるから、この事務所に尽くそうなんて思わなくていい」
    「完璧に仕事できる人なんていないんだから、無理しなくていい」
    「自分のやりたいことや体調を最優先したらいい」

    私は性格的にもすでに感覚が狂ってしまっていて、壊れる寸前まで仕事と向き合ってしまいます。でも、君たちはそうしなくていい。好きなら止めないが、無理強いは絶対にしない。

    我ながら、現代のコンプライアンスに則った
    なんとも物分かりのいい先輩です。


    しかし、いざ後輩たちが自分を最優先し、面倒な仕事を避けたとき。 そのあぶれた仕事は、当然のようにすべて私のもとへ降りかかってきます。

    好きにやればいいと言ったのは自分だし、当然の報いだと頭では分かっています。 それなのに、文字通り好きにして、人に仕事を押し付けて逃げる人たちを見ると、「ハァ....…」とため息が出てしまいます。

    結局のところ、無責任な逃げてもいいという綺麗事のツケは、誰かが血を流して払っている。

    そして今、そのツケを払わされているのが自分だからこそ、自分から放たれるフワフワした正論に腹を立てているだけなのです。

    私は、ただその程度の人間でした。




    「会社に貢献する」とか「一緒に成長する」なんていうのは、今の時代には合わない化石みたいな考え方だと分かっています。

    じゃあ、なぜさっさと逃げないのか。
    理由はシンプルで、 仕事が面白いから。

    それと、就職活動を一切していなかった私を「就活0日」で雇ってくれて、1年目からどれだけクソみたいな図面を書いても決してクビにはせず、ボロカスに怒りながらもプロとして育ててくれているボスを、どうしても裏切れないからです。

    言ってしまえば、くだらない義理人情です。

    自分の中で筋を通したい。悪く言えば、今の環境から抜け出して、新しい世界に飛び込む勇気がないだけです。


    上も下も地獄。
    世の中は、本当にうまくできています。


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    だからこそ、誰かの綺麗事やノウハウに縋るのではなく、自分自身を見つめ直さなければならないのでしょう。

    それが一番シンプルで、一番大変な作業です。
    私も、全然できていません。

    できていたら、こんな妬み嫉みの記事なんて書かずに、黙って仕事しているはずですから。


    でも、こうやって行き場のない感情を「言葉」にして外部に吐き出すことが、意味不明なこの業界で正気を保ち、前を向くための手段なんだと思っています。


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    p.s.

    今週の金曜日(10/9)20時に、私がnoteを始めてからの9ヶ月間のすべてをまとめた集大成の記事を公開します。

    バズを一度も経験せず、日々の仕事でぐったりしながらも、この行き場のない感情をどうやって資産に変換してきたのか。私がもがきながら編み出した「読まれるための設計図」のすべてを、15000字で書き上げました。

    現在、最後の調整や写真選定を行っています。

    忙しい中でも発信をしたい、続けたいという方や、日々のモヤモヤを抱える方の足場になるような記事に仕上げていますので、金曜の夜、楽しみにお待ちいただけると嬉しいです!



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    aulora

     
     
    建築を通し、世界の解像度が少し上がる 一級建築士|設計事務所勤務 全国47都道府県・海外8カ国を巡り、建築を通して出会った景色や気づきを綴ります。 名建築の空間や差し込む光、その土地の歴史。設計業界の実情や、仕事と人生についての思考も。 世界を少しだけ美しく整えるための備忘録

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