
古田紹欽氏著〝仙厓〟を読みました【読書感想文】
『仙厓』
著 者: 古田紹欽
出版社: 出光美術館
仙厓義梵について書かれた本です。出光美術館のコレクションである仙厓の禅味溢れる書画など73点が掲載されています。
本書は、昭和41年(1966年)に出光美術館選書として刊行されたものが絶版となるのを機に、再版されたものだそうです。

仙厓は江戸時代の高僧ですが、禅の思想を広く大衆に伝えるため、数多くの書や画を残しました。人に頼まれると断れない性質だったらしく、請われるままに描き与えたこともあり、いまもたくさんの作品が残されているのです。有難いことです。
その画風はふうわりと柔らかく、温かみと面白みを兼ね備えたもので、一見したところ今日で言うところの「ヘタウマ」「ゆるカワ」のような印象を持ちますが、そこには禅の思想がちゃんと表現されています。

本書の中では、同じ禅宗の高僧である白隠慧鶴や一休宗純の書画との比較もされていますが、仙厓のものは飛びぬけて愉快です。
偉そうぶるところがなく、大衆に小難しい理屈を説くのでもなく、いつも飄々とされていた仙厓和尚は、当時の人たちから「仙厓さん」と気安く呼ばれるほど、とても親しまれていたそうです。しかし、その仙厓さん、実は並大抵でない学問教養を身につけておられたようです。詩文についても、傑出した才能があったのだとか。
画についても、「ウマヘタ」「ゆるカワ」的な画で人気の仙厓さんですが、ほんとうはとても上手だったみたいです。仙厓さんの画風が変わったのは、文人画家の浦上春琴から、その実力を褒められると同時に、画の技術だけを評価され、僧としての徳は語り継がれなくても良いのかと問われたからだと言われています。

また仙厓さんは、朝廷にも名が知れるほど徳の高い禅僧だったのですが、出世とか栄達などというものには興味がなく、請われても固辞し続けました。そもそも「出世」とは、仏教では世の欲塵から離れることを言うそうです。一般的には社会的な地位を高めたり、名を広めたりすることとされていますが、そうではないのです。「出世」を世を出ることと理解するか、世に出ることと解釈するかによって、その意味が真逆になってしまいますね。

いまでは禅の思想が海外でも共感を得、支持されていますが、そのこともあって、仙厓さんの展覧会も、欧米各地で何度も開催されているそうです。
自分も仙厓さんの書画の、もっと奥深いところを観られるようにならなければと、思うきょうこのごろです。