
はじめて会う月#シロクマ文芸部
月を見ると、ぴかぴかの満月を見ると
ときどき、鮮烈に、思い出す。
月光が、月明かりがあんなに明るいってことを
初めて知った波照間の夜。
最南端の岬を目指して自転車を走らせると、誰にも会わなくて不安になるくらいだった。
東京にいつか出て芸能人になりたいんだって、こんがり焼けた肌に真っ直ぐな瞳で語っていた島の男の子。
東京に居たら大の苦手なあの虫も、拡大されて島で会うと、歩いててもぶんぶん飛んでても、
平気だったのは島に居た時だけの魔法。
宿の皆で、外のテーブルでご飯を食べて三線を弾いて歌って、そのまま海岸まで夜の散歩道。
街灯なんてもちろんひとつもない。
見上げると
月明かりだけの夜がこんなに明るいなんて、
はじめて知ったあの夜。
びっくりして感動して、
一生忘れられない、あの夜の月。
きっともう
会えない夜。
#シロクマ文芸部
“月を見る”から始まる物語に、参加をさせていただきました。