メインコンテンツへスキップ
見出し画像

…白の余白 鍵


    「自分にしかわからないはずなのに、心当たりがない」


    画像


    引き出しに、

    鍵があった。


    小さな鍵。


    いつからそこにあるのか、

    何を開けるものなのか。


    考えてみても、

    心当たりがない。


    不思議だった。


    こんなものなら、

    誰かに聞くこともできない。


    きっと、

    自分にしかわからないはずなのに。


    自分だけが、

    わからない。


    鍵を手のひらに乗せる。


    冷たい。


    けれど、その冷たさだけが

    どこか遠い記憶につながる

    唯一の糸口のような気がした。


    もしかしたら、

    忘れているのは

    鍵ではなく、


    この鍵を持っていた頃の

    自分なのかもしれない。


    何を開けたかったのか。


    何を閉じ込めたかったのか。


    あるいは、

    何かを失くしたあとに

    鍵だけが残ったのか。


    答えは、

    引き出しの奥にもなかった。


    小さな金属の冷たさを確かめ、

    それでも僕は、

    鍵を捨てなかった。

    ​理由はわからない。

    ​

    ただ、

    そう、なんとなく、

    心当たりのないものほど、

    自分の一番深い場所に

    眠っているような気がした。


    引き出しを閉じる。


    カチャリ。


    今度は、

    鍵ではなく、


    時間が閉じたような音がした。




    見つけてくれてありがとうございました

    画像

    ※作品note

    ​鍵の向こうにあるもの、あるいはその場所に沈んでいるものは、具体的な「形のある何か」ではないのかも。

    ​言葉にしてしまった途端に消えてしまうような、名前のつかない感情や記憶。

    あるいは、傷つかないように自分自身の手でそっと沈めておいた、過去の時間のひと欠片。

    ​触れようとすると指をすり抜けてしまうからこそ、冷たい鍵の感触だけが、そこにある確かな「遠い記憶」「冷たい欠片」として残っているのかもしれない。

    触れられないからこそ、僕たちはそこに愛おしさや切なさを覚えるのかもしれない。



    #日記 #エッセイ #詩 #ポエム #色 #青 #TOKIO #バリバリ #青の余白 #baribari #ショートストーリー #note

     
     
    気づくことにとけていく むかしむかし、あるところに そんな思いをつづり、そっと置いておこうと思います そして、また見つける時に任せようかなと、 https://note.com/baribari_k2 そこにあった思い出 時間は流れ去るものではなく、積み重なるから

    あなたへのおすすめ