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「note版 ペイフォワード」|Bar %  ― 完全ノンフィクション ―

    数日前、フォローさせていただいているナナメさんから、一通のメッセージをいただきました。

    「note版ペイ・フォワード プロジェクトが、私に回ってきまして、ぜひ店長様をご紹介させていただきたいのですが、いかがでしょうか?」

    ペイ・フォワードとは、誰かから受け取った嬉しさや優しさを、その人へ返すのではなく、別の誰かへ渡していく「恩送り」のこと。

    この企画では、紹介のバトンを受け取った人が、自分の好きな三人のクリエイターを紹介し、次へつないでいきます。

    正直に言えば、自分がこうした企画に参加するとは、思ってもいませんでした。

    けれど、ナナメさんからのメッセージを読みながら、三人の方のお名前が自然と頭に浮かんできました。

    普段から記事を見かけると、つい開いてしまう方。
    書かれている題材も、文章の調子もそれぞれ違いますが、読み終えたあとには、また次の文章も読んでみたいと思わせてくださる方々です。

    その三人をご紹介できるのであれば、このバトンを受け取ってみたい。
    そう思い、ありがたくお受けすることにしました。

    ナナメさんが普段から私の記事を丁寧に読んでくださっていることは、これまでにいただいたコメントからも伝わっていました。

    その方が、わざわざ事前に連絡をくださり、こちらの記事で紹介してくださいました。

    「BARのバイブル」とまで書いていただきました。

    さすがに少し照れましたが、お酒のことだけでなく、お店との関わり方や、そこで生まれる人とのご縁まで感じ取ってくださっていたことが、何より嬉しく思いました。

    ナナメさん、本当にありがとうございます。

    それでは、私が普段どのようなところに惹かれ、何を感じながら読ませていただいているのか。

    ナナメさんから受け取ったバトンを、三人の方へつないでいきたいと思います。


    一人目 無口さん

    最初にご紹介するのは、無口さんです。

    仕事や生活の中で実際に起きたこと、そのときに感じた違和感や迷いを、ご自身の言葉で綴っていらっしゃいます。

    無口さんの記事は、日記のように自然に始まります。

    けれど、出来事をそのまま書いて終えるのではなく、何が引っかかったのか、どこに問題があるのかを、一つずつ考えていく。その思考の流れに、私はいつも引き込まれます。

    「この仕事は、何を完成させるためにあるのか」では、部分的な作業は教えてもらっていても、仕事の全体像が見えないという戸惑いから、

    「そもそも、この業務は何をするためにあるのだろう」
    というところまで戻って考えます。また、

    「『この間言いましたよね?』で、仕事は進まない」では、言ったか、聞いていないかではなく、必要なことが相手に伝わり、仕事が前へ進んでいるかを見つめます。

    私は長く人を教える立場にいましたが、どちらの記事からも、手順だけでなく仕事の目的を伝えること、伝えたつもりで終わらせないことの大切さを、あらためて考えさせられました。

    日々の記録を読んでいるはずが、いつの間にか良質なビジネス書の一節を読んでいるような感覚になります。

    記事を閉じたあと、私は自分の職場で交わした言葉を思い返します。

    伝えたつもりになっていなかったか。
    目的を伝えず、手順だけを話していなかったか。

    無口さんの文章から、いつも自分の仕事を振り返るきっかけをいただいています。


    二人目 サケキオ(オサケノキオク)さん

    続いてご紹介するのは、サケキオ(オサケノキオク)さんです。

    ウイスキー、ワイン、カクテル、葉巻、そしてバーや蒸溜所を巡った記憶を、すべて実話として綴っていらっしゃいます。

    ウイスキープロフェッショナル、シガーエキスパートの資格をお持ちで、その知識は確かなものです。

    けれど、私が惹かれているのは、知識の豊富さだけではありません。

    一本のボトルから、そのときにいた店や一緒に飲んだ人、交わした言葉までがよみがえる。お酒の説明にとどまらず、その一杯があった時間や空間まで残されているところに、大きな魅力を感じています。

    「[番外編]ウイスキーのテイスティング」も、専門的な内容でありながら、少しも堅苦しくありません。

    テイスティングでは、まず酒の特徴や製法といった「大前提を間違えないこと」。
    そのうえで、表現は自由であり、自分が感じたものを言葉にする勇気を持つこと。

    正確な知識と自由な表現は、どちらか一方を選ぶものではない。その両方があることで、一杯のウイスキーから見える世界が広がっていくことを教えていただきました。

    私自身、長くバーの現場に携わってきましたし、現役です。

    それでも、カウンターの向こう側でお酒を愛してきた方の文章を読むと、自分には見えていなかった景色に出会うことが多々あります。

    サケキオさんの記事を読み終える頃には、知識が一つ増えるだけでは済みません。

    たいてい、何か一杯飲みたくなっています。

    これは、なかなか困ったことです。
    そして、その一杯について誰かと話したくなったなら。

    バーに行けばよいのです。


    三人目 山下静希さん

    三人目にご紹介するのは、山下静希さんです。

    日常や食の話から、経済、ビジネス、精神医学、社会、歴史、エンターテインメント、そして創作まで、実に幅広い題材で文章を書いていらっしゃいます。

    山下さんが大切にされているのは、物事を一歩引いたところから俯瞰して見ること。

    日々のニュースやビジネスモデルの裏側にある構造を読み解き、そこへご自身の経験や知識を重ね、自分なりの形に再構築していく。

    その視点は、社会や経済だけでなく、映画、アニメ、アイドル、料理にも向けられます。

    また、双極性障害と長く向き合ってこられた経験を、ご自身だけのものにせず、同じ病気を抱える方や、そのご家族が生きるための情報として届けていらっしゃいます。

    経験したからこそ見えるものを、誰かを支える言葉へ変えていく。その姿勢にも、深い敬意を感じています。

    エッセイ「備長炭の焼き鳥」では、昭和の商店街で母親が買ってきてくれた焼き鳥の記憶から、備長炭で焼き上げる職人の技、そして気取らずそこにあるものの美しさへと話が進みます。

    焼き鳥の香りや食感を追っていたはずが、最後には、力や知識をひけらかさず、本当の実力を胸の奥にそっと隠しておく「余白のある大人」の姿へたどり着く。その運びに、私は感動すら覚えました。一方、

    「今日も終わらぬ日本の戦争」では、終戦後も平和条約が締結されていない日露関係と、その歴史的背景を正面から見つめています。

    食の話と、国際情勢の話。

    まったく異なる題材でありながら、表面だけをなぞらず、その奥にあるものを見ようとする視線は変わりません。

    私は山下さんの記事を読み、次の文章も読みたいと思い、フォローさせていただきました。

    何について書かれていても、数行読むうちに文章へ引き込まれ、読み終えたあとには、それまでとは少し違う角度から物事を見ています。

    食の話を読んでいたと思えば、次は経済、その次は精神医学、社会、歴史、創作へ。

    私はまた、次の記事を開いてしまいます。

    山下さんの文章を読んでいると、こちらまで、こんなふうに言いたくなります。

    「だからね、次に何が始まるか分からない文章というのは、面白いんですよ。」



    おわりに

    あらためまして、このような機会をくださり、そして私の記事を丁寧にご紹介くださったナナメさんに、心より御礼申し上げます。

    突然のことで少し戸惑い緊張もありましたが、ナナメさんからいただいたメッセージがなければ、こうして三人の方について、あらためて記事を読み返し、その魅力を自分の言葉でお伝えすることもなかったと思います。

    そして、突然のお願いにもかかわらず、快くご紹介をお許しくださった無口さん、サケキオさん、山下静希さん。

    本当にありがとうございました。

    今回触れた記事は、それぞれの方が書かれているものの、ほんの一部にすぎません。

    本当は、ほかにもご紹介したい記事や、お伝えしたい魅力がまだまだあります。書き始めれば、この記事がどこまでも長くなってしまいそうでしたので、今回はこのあたりで筆を置くことにしました。

    私の文章だけではお伝えしきれなかったものを、ぜひ皆様ご自身で、それぞれの記事を開いて感じていただけましたら嬉しく思います。

    また、今回お名前を挙げることができなかった方の中にも、私が日頃から楽しみに読ませていただき、学びや気づき、そして心が動く時間をいただいているクリエイターの方が、たくさんいらっしゃいます。

    そして、私の拙い文章を読んでくださる皆様。

    記事をマガジンに加えてくださった方、ご自身の記事の中でご紹介くださった方、コメントや「スキ」を届けてくださった方。その一つひとつに、いつも励まされています。

    この場を借りて、あらためて深く御礼申し上げます。

    最後になりましたが、noteの中で受け取った嬉しさを、別の誰かへつないでいく「note版ペイ・フォワード プロジェクト」を立ち上げられたLaLaLaさんに、心より敬意を表します。


    今回、三人の方をご紹介する文章を書きながら、誰かの記事を読むことは、その方が見てきた景色を少し分けていただくことなのだと、あらためて感じました。

    そして、その魅力を自分の言葉で伝えようとしたことで、私自身がこれまで、どれほど多くのものを受け取っていたのかにも気づかされました。

    ナナメさんから受け取ったバトンが、無口さん、サケキオさん、山下静希さんへ。

    そして、その先にある新しい出会いへと、つながっていくことを願っています。


    最後に、Bar %の坂城なら、こんなふうに言うのかもしれません。

    坂城は、カウンターに並ぶ三つの椅子へ目を向け、少しだけ笑った。
    「たまには、完全なノンフィクションもいいですね」



     
     
    ホテルバーテンダー・マネージャーを経て、 現在は飲食店(レストラン・バー)の店長を務めています。 日々の現場で思うこと、人間関係の機微、そして頭の中に広がる世界。 形式にこだわらず、その時々の「熱量」を言葉や形にして発信していきます。

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