
「仕事を覚えるのが遅い」と思うのは、誰の基準だろう。
✍️ 松村健太|BCC株式会社
「自分は仕事を覚えるのが遅いんです」
仕事をしていると、そんな言葉を聞くことがあります。
そのたびに、私は少し気になることがあります。
何を基準に、仕事を覚えるのが遅いと思っているのだろう。
同期と比べて遅いのか。先輩と比べて遅いのか。それとも、自分が思っていたほど仕事ができるようになっていないのか。
もちろん、仕事を覚えるスピードには個人差があります。実際に改善が必要なこともあるでしょう。
ただ、自分は仕事を覚えるのが遅いと感じている人の中には、自分への期待値が高すぎる人もいるのではないかと思っています。
今回は、そんなことについて書いてみます。
自分が思っているほど、簡単に成長できるものではない
例えば、22歳で同じ会社に入社した二人がいたとします。
入社した日は同じでも、それまでの22年間で経験してきたことは違います。
学生時代の経験、アルバイト、人との関わり方、得意なことや苦手なこと。
それらが、たまたま今の仕事にうまく結びつく人もいるでしょう。
そういう人は、周囲から見れば仕事を覚えるのが早く見えるかもしれません。
一方で、なかなか仕事を覚えられないと感じる人もいます。
ただ、それは能力の差だけではなく、これまでの経験や仕事との相性も関係していると思います。
そもそも、同じ日に入社したからといって、同じスピードで成長するとは限りません。
それなのに、周囲の人ができていることを見て、自分も同じようにできるはずだと思ってしまう。
私は、そこに少し無理があるように感じます。
自分が思っているほど、人は一段飛びで成長できるものではないと思うのです。
自分への期待値が高すぎると、成長が見えなくなる
私は、自分への期待値をどう設定するかが大切だと思っています。
例えば、昨日まで10文字しか書けなかった人が、今日は11文字書けるようになった。
昨日100件だった電話が、今日は101件できた。
それだけでも、昨日よりできることが増えています。
ところが、自分は100文字書けるはずだ、150件電話できるはずだと思っていたらどうでしょう。
実際には成長していても、自分が設定した期待値に届かないことで、できなかったと感じてしまいます。
成長していないのではなく、自分が設定した期待値に届いていないだけかもしれません。
もちろん、高い目標を持つことは大切です。
仕事には求められる水準がありますし、成果を出すことも必要です。
ただ、目指す水準と、今の自分が次に改善することは、分けて考えたほうがいいと思います。
最終的に100文字書けるようになりたいのであれば、まず11文字、次に12文字と増やしていけばいい。
最初から100文字書けないことを理由に、自分はダメだと思う必要はありません。
私は、そう考えています。

小さな成長は、思っている以上に大きい
私は、成長というのはあるとき大きく伸びるものだと思ってます
昨日より1件多くできたことが、次の日にはさらに大きな成果につながるかもしれません。
なぜなら、その1件を増やすために考えたことや工夫したことは、その日だけで終わるものではないからです。
例えば、電話を1件多くかけられるようになった理由が、準備の仕方を変えたことだったとします。
その工夫は、翌日以降も使えます。
さらに、その工夫によって時間に余裕ができれば、別のことにも取り組めるようになるでしょう。
そうして、少しずつできることが増えていく。
今日の1件の成長が、将来の10件、20件につながることもあると思います。
もちろん、毎日順調に上がるわけではありません。
昨日よりできない日もあるでしょう。
それでも、工夫や経験が積み重なっていけば、以前は難しかったことが、いつの間にか当たり前にできるようになっている。
私は、そういう成長の仕方もあると思っています。
だからこそ、目の前の小さな改善を、あまり軽く考えないほうがいいのではないでしょうか。

憧れの人と同じようになる必要はない
自分への期待値が高くなる理由の一つに、憧れの存在があると思います。
仕事ができる先輩や、成果を出している同僚を見て、自分もあの人のようになりたいと思う。
それ自体は悪いことではありません。
ただ、私は仕事において、できる限り憧れの存在を持たないようにしています。
もちろん、すごいなと思う人はたくさんいます。
その人の良いところは積極的に参考にします。
でも、その人のようになりたいとは、あまり思いません。
性格も違えば、経験も違うからです。
例えば、営業でも、商品知識や提案力で成果を出す人もいれば、人間関係を築くことで成果を出す人もいます。
私自身、営業を始めた頃は先輩のように上手に話せなかったので、相手の話を聞くことから始めました。
そうしているうちに、自分なりの商談の進め方が少しずつ見えてきました。
他人の良いところは取り入れる。でも、その人になる必要はない。
私は、自分がどうすれば成果を出せるのかを考えるほうが、面白いと思っています。
憧れの人と同じようにできないことを、自分の成長が遅い理由にする必要もないはずです。
仕事が遅いなら、何を改善すればいいのか
私も以前、自分は仕事が遅いと思ったことがあります。
ただ、そのときに考えたのは、どうすれば少し早くできるだろうということでした。
時間がかかっている部分があるなら、そこを改善する。
覚えられないことがあるなら、覚え方を変えてみる。
うまくできないことがあるなら、別の方法を試してみる。
私にとっては、それだけのことでした。
だから、自分は仕事を覚えるのが遅いと悩み続けることに、少し不思議さを感じることもあります。
もちろん、簡単に気持ちを切り替えられない人がいることもわかっています。
ただ、遅いと感じているのであれば、何が遅いのかを具体的に考えてみる。
知識を覚えることなのか、作業の手順なのか、判断するまでの時間なのか。
そこがわかれば、改善できることも見つかります。
そして、改善方法がわからなければ、周囲の人に聞いてみればいい。
自分に目を向けることは、一人で何でも解決することではありません。
自分の課題を理解したうえで、他人の良いところを取り入れることも大切だと思います。
自分への期待値を、少しだけ調整してみる
仕事を覚えるのが早い人もいれば、時間がかかる人もいます。
そして、同じ人でも、得意な仕事と苦手な仕事があるでしょう。
だから、誰かと同じスピードで成長できないことを、必要以上に気にすることはないと思っています。
もちろん、仕事ですから求められる成果や水準はあります。
そこに向かって努力することは必要です。
ただ、その途中で自分への期待値を高くしすぎて、できていることまで見えなくなってしまうのは、もったいないと思います。
昨日できなかったことが、今日は少しできるようになった。
先週わからなかったことが、今週は理解できるようになった。
そういう変化を、自分で認識することも大切です。
そして、次に何を改善するかを考える。
私は、それを繰り返していけばいいと思っています。
自分には、まだ試していないやり方がある。まだできるようになることがある。
そう考えると、自分の可能性は結構あるものです。
他人のようになろうとするより、自分がこれからどうなれるのかを考える。
私は、そのほうがずっと楽しいと思っています。
執筆:松村 健太
BCC株式会社 IT営業アウトソーシングカンパニー カンパニー長
営業組織の運営をはじめ、マーケティングや採用、広報など幅広い業務に携わる。営業や組織づくり、マネジメントについて、現場で感じたことを発信しています。
公式サイトはこちら →