
月を見る ~ショートショート~ #シロクマ文芸部
月を見る季節になると思い出すこんな話。
「月には、うさぎがいるんだよ」
そう言うと、隣にいた男が笑った。
「いるわけないだろ。馬鹿なの?」
「なんで?」
「NASAがそんなこと言ってないだろ」
「じゃあ、あんた月に行ったの?」
「行ってないけど、科学的に考えれば分かる」
「ふーん」
私はまた月を見上げた。
「じゃあ、かぐや姫は?」
「いるわけない」
「なんで?」
「NASAが、いるなんて言ってない」
「月の裏側に、小さな町があるかもしれない」
「ない」
「地面の下に、誰も知らない湖があるかもしれない」
「ないない。そんな話、どこにも出てないだろ」
男は、全部知っているような顔で言った。
私は少し考えてから聞いた。
「ねえ。あんた、本当に月を見てる?」
「見てるだろ。今」
「そうかな」
男が眉をひそめる。
「私には、うさぎが見える」
「だから、いるわけないって」
「子どものころ、おばあちゃんがそう教えてくれたから。月を見ると、今でも思い出すんだよね」
男は黙った。
「科学者なら、クレーターを見るのかもしれない。写真家なら、光と影を見るかもしれない。恋人を亡くした人なら、一緒に見た夜を思い出すかもしれない」
「……」
「子どもなら、うさぎを探す。研究者なら地質を見る。詩を書く人なら、寂しさを見るかもしれない」
男は月を見上げた。
「でも、月は月だろ」
「うん。月はひとつ」
私は少し笑った。
「でも、月に何を見るかで、人の言葉って変わるんじゃない?」
男は何も言わなかった。
さっきまで、あんなに断言していたのに。
私はまた月を見た。
うさぎなんて、本当はいないのかもしれない。
かぐや姫だって、今ならたぶんいない。
NASAが撮った月も、本物だし、
おばあちゃんが教えてくれた月も、私にとっては本物。
人は、同じものを見ているつもりでも、
他人の知識と、自分の思い出と、
お気に入りの常識を通して世界を見ている。
だから、同じ月を見ても、出てくる言葉は違ってくる。
月は表情を変えない。
それでも、人の数だけ違う月が見える。
今夜、あなたの月には、何が見えてる?
ここまで読んでいただきありがとうございました。
今回は、私の好きなジャンル『寓話系ショート』になってしまいました😆
この記事は、
小牧幸助さん企画【シロクマ文芸部】参加用の記事になります。
今回のお題は、「月を見る」
過去参加作品はこちらから
今回も参加させていただきました。
いつもは、こんな感じで、
Gemini(AI)の出すお題で即興小説を書いたり、短い寓話っぽいのを書いたりもしています。(最近、お休みが続いていますが💦)
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