
彼女の部屋
私は彼女の部屋に入るたび、何とも言えない懐かしさを感じる。
薄暗い部屋には彼女の好む小物たちが静かに並び、壁には彼女が描いた絵がいくつか飾られていた。まるで彼女の心の中そのものが形になったような場所だった。
窓際には古びた机と一脚の椅子。それに向かうように彼女はいつも座っていた。
窓から差し込む夕日の光が彼女の髪を柔らかく照らし、彼女は静かにノートに何かを書き続けていた。私はその後ろ姿を見ているだけで満たされた気持ちになる。
彼女がペンを止め、振り返る瞬間を待つ。それが私にとっての至福の時間だった。
「今日はどんな一日だった?」
彼女がいつも聞くその言葉に、私は穏やかな声で返事をする。大したことのない日常の出来事を話すだけなのに、彼女は楽しそうに笑いながら聞いてくれる。その笑顔を見るたび私は思う。
いつかこの瞬間が永遠に続けばいいのに、と。
だが、現実は非情だ。
私は彼女と過ごせる時間が限られていることを知っている。
彼女の存在が私の人生を照らす唯一の光であると分かっていながら、どうしても彼女を引き止めることはできない。
ある日、私は部屋に入った。だが彼女の姿はなかった。
机の上には開かれたノートが一冊、そしてペンが無造作に置かれている。
私はノートに目を向けた。彼女の文字がぎっしりと綴られている。
「私がいなくなっても、この部屋で私を思い出してくれる?」
その言葉を見た瞬間、胸が締め付けられるような感覚に襲われた。
なぜ彼女はこんなことを書いたのだろう?
いや、なぜそんな言葉がここにあるのだろう?
混乱とともに私は周囲を見回した。
しかし、部屋には何の異変もない。
ただ彼女だけがいない。
それが何よりも異常だった。
私は気づく。彼女がここにいたのは幻だったのではないか?
この部屋にいるときだけ私は彼女と対話をしているような気がしていたが実際には……。
私は独りだった。
ずっと、最初から。
彼女の記憶だけを胸に、この部屋に通い続けていただけなのだ。
彼女が生きていた頃の声、笑顔、それらすべてが私の頭の中に刻み込まれていた。
私はその記憶に浸ることで彼女がいない現実から目を背けているのだ。
ノートを閉じ、私は静かに椅子に座った。
そこに彼女がいたのだと錯覚するために。
そしてまた、彼女と会話を始める。もう何度目のことだろう。
けれど、こうすることでしか彼女を近くに感じられない。
「今日もいい一日だったよ、君がいたから」
そう呟きながら、私は彼女の残した幻影と生きる日々を続けるのだった。
終わり
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探偵の仕事をしていると
— 浮気_独身偽装_失踪@ブルーフィールド (@yokohama_BF) December 18, 2024
独身偽装で傷つく人たちの多さに気づきます
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