
憂鬱の向こう側
灰色の雲が低く垂れこめ、ぽつぽつと雨粒が落ちてくる。
駅前の小さなカフェのテラス席で僕はコーヒーを片手にその様子を眺めていた。雨の日のコーヒーは晴れた日よりも苦みが際立つように感じる。
「また降ってきたね」
向かいの席で佳奈が微笑んだ。
「帰り、濡れるよ?」
「別にいい、どうせすぐ乾くし」
彼女の言葉に僕は小さくため息をつく。
佳奈はいつもそうだ。
どれだけ雨が降ろうとも、どれだけ風が吹こうと決して悲観的にはならない。彼女が笑うと太陽が雲の切れ間から顔を出すかのように周囲が明るくなる。
「なあ、どうしていつもそんなに笑っていられるんだ?」
思わず聞いてしまった。
僕は正直雨の日が嫌いだ。濡れるし、空は暗いし、気分まで沈んでしまう。
「んー……だって、空が泣いてるなら私まで泣いたら可哀そうでしょ?」
佳奈はコーヒーカップを手に取り雨の向こうを見つめる。
「空が泣いても、誰かが笑っていればバランスが取れると思うんだよね。だから私は笑うの」
僕はなんとも言えない気持ちになった。
彼女がそう思うようになったのはきっと過去に何かあったからかもしれないし、そうでないかもしれない。
でもそれを僕が無理に聞き出すことはできない。
雨脚が少しずつ強まる。
行き交う人々が慌てて傘を開くなか佳奈は相変わらず穏やかに微笑んでいた。
「……じゃあさ、もし僕が泣いてたら?」
ふと、そんなことを聞いてみた。
佳奈は驚いたように目を瞬かせたあと、すぐにふんわりと笑った。
「そのときは、…………」
急に強くなった雨音にかき消され小さな声は聞こえなかった。
この雨が止む頃、僕も彼女のように笑えるだろうか。
そんなことを考えながら
カップのコーヒーを最後まで飲み干した。
終わり
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夕暮れ時は浮気時
— 浮気_独身偽装_失踪@ブルーフィールド (@yokohama_BF) March 10, 2025
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