
水曜日は映画館へ
【おサボり者】 スギヤマ(シ)
【おサボり場】 映画館とHARUMI FLAG
【本日の御用】水曜日なので安くなってる映画館へ
水曜日は不動産業界の定休日が多い。だから休みの日は、昼間の映画館によく潜り込んでいる。ありがたいことに、水曜日は料金が安くなる映画館も少なくない。
映画のお供といえば、ポップコーンとコーラ、あるいはビールといきたいところだが、私はポップコーンは食べない。映画に集中したいというストイックな理由からではなく、単に50歳の胃には重いし、何より歯に挟まるからだ。
コーラも血糖値を上げたくないので控えている。ついでにビールも飲まない。本当は喉を鳴らして飲みたいのだが、昼から飲んでしまうと、私の体力ではそこで一日が終わってしまう。
こうして、我慢してでも年齢に逆らわない選択をする方が良い結果になることが多いです(悟り?)
というわけで、平日の昼間にブラックコーヒーだけを片手に、スクリーンを見上げるおじさんが完成する。少し地味すぎるかもしれないが、自分では案外スタイリッシュなんじゃないかと思っている節もあり、そんな自分を結構気に入っている(笑)。
『ラスト・サバイバー』
最近観たのは『ラスト・サバイバー』という映画だ。パンデミックで人類が激減した世界を描いている。
私はキャンプはしないくせに、サバイバルものがわりと好きなのだが、完全に一人きりというわけではなく、ある程度の人が生き残っている設定なので、妙にリアルだった。
主人公は廃空港を拠点に犬と暮らし、時に小型飛行機を飛ばし、川へ釣りに出かける。外に出ればやられるかもしれない物騒な世界なのに、なぜかゆっくりとした時間が流れていたのも良かった。音楽のせいかもしれないな。
生き残るだけなら、雨風をしのぎ、最低限の食べ物を確保できればいい。それでも主人公は、犬と過ごし、ほぼ毎日空を飛び、釣りにも行く。生き残ることだけを考えれば必要のないことに、あえてリスクや時間と手間をかけている。
誰かから見れば「そんなことをしている場合か」と言われそうな、一見無駄なことが、単なるサバイバルを「日々の暮らし」にしている気がした。
「朝、目覚めのコーヒーを飲むために早起きする」とか、「ビールをおいしく飲むために一つ前の駅から歩く」とか。
傍から見れば合理性のないこだわりが、意外と大事だったりしません?
世の中には、なくても生きてはいけるけれど、ないと毎日がつまらなくなるものがたくさんある。
だから、雨風がしのげて、食べ物があって、あとは合理的ではなくても、自分なりのこだわりを持っていれば、人間はそれなりに幸せでいられるんじゃないか。
そんなことを思える映画だった。
たぶん、監督はそんなメッセージを込めていないと思うけど(笑)。
もし、これが東京だったら
映画館を出たあと、また仕事の癖なのか、余計なシミュレーションをしてしまった。
もし、あのパンデミックが広大なアメリカではなく、この東京で起きたらどうなるのだろう。
ふと、先日立ち寄ったHARUMI FLAG(晴海フラッグ)を思い出した。東京オリンピックの選手村跡地につくられた、最近いろいろな意味でニュースにも登場する、マンション群だ。

きれいに手入れされた植栽の向こうに、大きなマンションが何棟も並んでいる。東京湾に面していて景色もいい。街として、きれいにつくられているのは間違いない。
私が訪れたのは平日の昼間だったこともあってか、人通りはそれほど多くなかった。
見慣れない送迎車から外国人が降りてくるのを見て、「白タク? 民泊?」などと勝手に勘繰ってしまう。もちろん、それだけで何かが分かるわけではない。ただ実際、最近は違法民泊や白タクの問題もニュースになっている。
そんなこともあってなのか、きれいに整った巨大なマンションの中のなんだか物悲しさと映画の世界が少しだけ重なってしまった。

もしパンデミックによって、東京の人口が今の1%から10%くらいになったら、こういったマンションでさえ、電気や水道などのインフラを維持するのは難しい。エレベーターだって動かなくなるだろうし、あの巨大な建物を修繕、管理する人もいなくなる。みんな低層階に集まるでしょうね。
住まいや暮らしの価値基準なんて、状況が変われば、あっさりひっくり返るのは当たり前だけど、そんな場合であろうが、自分を頼ってくれる犬と一緒にいたい(飼ってはいないけれど)とか、毎朝のコーヒーだけは落ち着いて飲みたいとか、好きな音楽を大きな音で聴きたいとか。
それくらいができれば、あとは我慢できるのかもしれない。
歩くのすら苦手な50歳が、毎日数十階分の階段を上り下りするなど、絶対に無理だがこういうマンションを自由に住む権利があって、そんな世界に自分も生存してるとすればどうだろうか。
もしかしたら、毎日ゼーゼー言いながら最上階まで階段を上り、そこから得られる圧倒的な眺望を、わざわざ選びに行くのかもしれない。
映画の主人公が危険を冒してまで空を飛んだように、そういう合理性のない無駄な行動こそが、荒廃した街で「暮らす」理由になる気もする。
ビールすら我慢している50歳のおじさんは、一時的な欲望を満たすより、年齢には逆らわない方が結果的に幸せだと、すでに気づいているのですが、何も目的のない世界であれば多少の我慢と引き換えにできる幸せに意味があるでしょうね。
コーヒーや音楽まで手放したいとは思わないけど、エレベーターがなくても死なないですからね。
水曜日の昼下がりに映画を一本観ただけなのに、ずいぶん大げさなことを考えてしまった。
おサボりのはずが、頭の中はあまり休めていない。
〖本日のおサボり効果〗★★★★☆