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【響きの国】七十二候──鴻雁来──稲刈りの終わる頃、雁が来る


    十月。


    稲刈りを終えた田んぼには、短く刈られた稲株が並び、秋の風が吹き抜けていきます。


    夕暮れが近づく頃、空の向こうから鳥の鳴き声が聞こえ、見上げると、何羽もの鳥が列をつくって渡っていきます。


    雁です。


    七十二候では、鴻雁来(こうがんきたる)。


    北の国から雁が日本へ渡ってくる頃を迎えました。


    日本に飛来する代表的な雁の一つ、マガンは、シベリアなど北方の土地で子を育て、秋になると群れをつくって南へ向かいます。


    北海道などで羽を休めながら日本の越冬地へやって来た雁たちは、沼や湖を寝ぐらにし、日中は周囲の田んぼで落ち穂などを食べて過ごします。


    人が春から大切に育ててきた稲を収穫し終える頃、その田んぼが、今度は雁たちの食べ物を探す場所になるのです。


    『万葉集』には、こんな歌が残されています。


    秋の田の 我が刈りばかの 過ぎぬれば

    雁が音聞こゆ 冬かたまけて


    稲刈りを終えた頃、雁の鳴く声が聞こえてくる。もう冬が近づいているのだな、という歌です。


    千年以上も前の人たちも、田んぼの仕事を終え、空から聞こえる雁の声に季節の移り変わりを感じていたのでしょう。


    九月の七十二候「玄鳥去(つばめさる)」では、日本で子育てを終えた燕たちが南へ旅立ちました。


    そして十月になると、北の国で子育てを終えた雁たちがやって来ます。


    燕が去り、雁が来る。


    季節が変わるたび、同じ空を違う鳥たちが渡っていきます。


    稲刈りが終わり、家々の食卓に新米が並ぶ頃、遠くから旅をしてきた雁たちも、田んぼに降り立ちます。


    人も雁も、同じ土地の実りに支えられながら、それぞれの冬を迎えようとしています。



    観音龍詠唱「鴻雁来──渡リ来ル羽」

    ネノネノネ

    オンネノネヨ


    北ノ空ヨリ

    雁ノ声


    幾山越エ

    幾海渡リ


    群レ成ス羽ハ

    秋ノ空ヲ行ク


    燕ハ去リ

    雁ハ来タル


    刈田ニ残ル

    稲ノ恵ミ


    人ノ糧トナリ

    鳥ノ糧トナル


    遠キ道ヲ渡リシモノヨ

    此ノ地ニ憩エ


    実リヲ育テシ人ノ手ニ

    安ラギアレ


    オンヒーリャヒーリャ


    空ヲ渡ルモノ

    地ニ生キルモノ


    共ニ恵ミヲ受ケ

    冬ヲ迎エヨ


    ヒビケソワカ

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    響きの国シリーズ👇️

    観音龍詠唱👇️




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    二十四節気、季節の行事、神社やお寺、昔の言葉。そこに残る響きから、日本人が大切にしてきた心を読み解いています。響きの国、曼荼羅シリーズ、物語を通して、忘れかけた感覚をもう一度思い出すために。

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